第323話: 新世代の反乱3
やはり、強者は最後に残った一人だったか。
「魔王様、仮面の男は強いっす。私じゃ勝てませんでした」
そもそもがリステが捕まっていたのだ。簡単に奇襲だけでどうにかなるとは思ってはいないが、相手は一人。対するこちらは三人だ。負ける要素はないな。
「もはや伝説とまで言われていた魔族がこんなにたくさん潜んでいたとはな。正直驚いたぞ。で、何故お前たちはこの地に舞い戻って来たのだ?」
こやつ。我々を知っているのか。我等が地界から去って1000年近くが経過していると言うのに。エルフのような長命種でもなければとうの昔に忘れ去られていると思っていたのだがな。
「死に逝く者に答える道理はない」
アルザスが武器を構える。
「悪いけどキミの相手は僕だ。お二人は手出し無用です」
「ふむ。1vs1なら勝てる自信もあるが、三人が相手となると流石に厳しいか。それに魔王(・・)が現れたのだ。このことを早く報告しなければならないしな」
「馬鹿を言うな。逃げられると思っているのか」
突如として男がしていた指輪が淡く光出す。
それを見たスザクが転移し。アルザスが結界を展開するも⋯
不敵な笑みを浮かべたまま男はスザクの一撃を躱し、そのまま消え去った。
「くそっ逃げられたか。アルザス、あれは転移か?」
「魔術阻害結界はギリギリ間に合ってました。つまりは、魔術ではないですね。そもそも人族が転移を使えるなどと言う情報は聞いた事がありません」
「我等の地界の情報は全て1000年前のものだ。あまり鵜呑みにせん方がいい。それに目的であるリステを救出出来たのだ。落ち込むことはないぞ。作戦は成功だ」
リステを連れ、五人で魔界へと戻って私たちを待っていたのは、新世代たちを率いるリーダー、アヴィエルだった。その後方には数百人規模の武装した兵士の姿が見えた。
スザクが声を荒げる。
「お前たち、これはどういうことだ!」
「それは俺たちが聞きたい」
アヴィエルはアルザスに肩を担がれていたリステに視線を送った。
「リステよ。無事で何よりだ。お前を救出に地界へ行く所だったんだよ」
「そんなこと魔王様は命じていないぞ! そもそも地界へ渡るゲートを通るには、元老院の許可が必要だということを忘れたか!」
「そう吠えないで下さいよスザクさん。俺たちは大切な仲間が拐われたと聞き、いても経ってもいられずに救出に向かおうとしたんです。許可を待っていたら間に合わないかもしれない。ねえ、そうでしょ、魔王様」
「お前──」
魔王はスザクに目配せする。
「そうだな。緊急事態ならばやむを得ない。ご苦労だった。この通りリステは救出した。目的は達成したのだ解散するがいい」
アヴィエルは首を振った。
「いえ、その必要はありません」
一帯に緊張が走る。
その言葉を聞き、スザクが飛び出した。アヴィエルが僅かながら威圧を放っていたのだ。
しかし、飛び出したスザクの動きが不自然な形で止まる。
「なに⋯身体が動かん⋯」
「余計な真似はするなネリル」
アヴィエルの背後に小さな少年が佇んでいた。彼もアヴィエルと同じく新世代四天王と呼ばれている一人だ。
「元老院と言えど、この程度か。やっぱり僕たちの方が強いんじゃないかな。ねぇ、アヴィ様」
アルザスが前に歩き出す。
「おっと、アンタの相手はオイラだよ」
何もない所から突然現れたのは、同じく新世代四天王の一人、メリクだ。アルザスと同じく剣を獲物としており、一方的にライバル視していた。
その時だった。
広範囲に凄まじい威圧が放たれる。
それは、一瞬にして一帯の温度が数度下がったかのような。それは、一瞬にして一帯に超重力が掛かったかのようだった。
ある者は膝をつき、ある者は立てずに地に這いつくばる。
《魔王の威圧》
「あははっ流石は魔王様だ。やはり僕たちとは別格だねぇ」
ネリルが苦しそうにしながらも侮蔑な笑みを浮かべていた。
「魔王様。威圧を解除してくれないかな。衰弱しているリステが苦しそうだよ。折角救出したのに自らの手で殺す気ですか?」
ナターシャはチラリと横目でリステの様子を伺う。
そして、威圧を解除した。
「さて、俺たちはもう行きますよ」
「お前ら、地界に戦争でも仕掛ける気か」
ナターシャの横をアヴィエルが通り過ぎる。
「止めても無駄ですよ。元々地界は俺たち魔族の物なんです。旧世代のアナタたちが逃げるなんて愚かな選択をしなければね」
「⋯⋯」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます