第322話: 新世代の反乱2
地界へ降り立ち、私の身勝手な行動にこれまた強引についてきた護衛と共に私は、襲撃拠点となった第四拠点へと辿り着いた。
金品が手付かずに放置されていることを鑑みるに、やはりそういうことか。
「略奪が目的ではなく明らかに我等への敵意が見られるな」
「魔王様、まだ近くに敵兵がいるやも知れません。警戒を怠らないで下さい」
スザクは相変わらずと用心深い。
だから元老院となった後も最側近として私が頼んでいるのだがな。
私が反対を押し切ってまで地界へと赴いたのには理由がある。先程略奪が目的ではないと言ったが、一つだけ襲撃者に奪われたものがあった。
それは、クオーツに所属しているリステルシアだ。
どういう訳か、襲撃現場から彼女の遺体だけが見当たらなかった。わざわざ彼女の遺体だけ持ち去るとは思えない。恐らくは、生きたまま連れ去られたのだろう。理由は不明だが、彼女の容姿は優れていたことから、きっとそういうことなのだろう。
命のやり取りの結果、散っていったのならばまだしも拉致され嫌々ながら何かを強要されているのならば話は別だ。全力で救いに行く。
「サザナミ。リステルシアの後を追えるか?」
「はい、少し離れていますが彼女の残留魔力を感じます。正確な場所をつきとめますので少々お時間を頂きたい」
安堵の溜息を吐く。
取り敢えずは一安心だな。魔力を感じるということは、まだ生きているということ。
「本当に我等だけで救出に向かうのですか?」
この場には、私を含め元老院のスザク、補助魔術の得意なサザナミにクオーツのアルザスを入れた四人だった。
アルザスは、スーの後にクオーツの団長に就任した新世代の強者の一人だ。
「私が魔王様に指一本触れさせませんので、ご心配なくスザク殿」
「お前の実力は疑ってはいないが、サザナミは非戦闘員だ。それに相手の実力が不明なのは否めない」
「スザクよ。そう心配するな。もしもの場合に備えて保険は掛けているよ。それから、全員に言えることだが、私が危険と判断したらすぐに転移で離脱するとだけ約束して欲しい」
さて、心配するなとは言ったが、細心の注意を払って行動せんとな。
サザナミの誘導で、私たちは足を進める。常に気配察知を展開し、極力戦闘を避けて目的地へと向かう。
「あれが、そうか?」
視界の先にあったのは、いかにも即席で造られたと思われる駐屯所だった。大小二つのテントに見張りが数名。幸いなのは小規模な範囲だったことだろう。これならあの作戦が使えそうだな。
「間違いありません。弱々しいですが中央の青いテントの中から彼女の魔力を感じます」
気配察知から奴等の人数は八人。対するこちらは戦闘ができる者は三人。人数は圧倒的に不利だが、先制を打てる分こちらが有利だと考える。
「作戦はさっき話した通りだ。さぁ、リステを返してもらうぞ。サザナミ頼む」
サザナミは、頷き魔力を練る。
《
範囲内では喋り声はおろか、物音一つ聞こえなくなる防音魔術。魔界広しと言えど、この術の使い手はサザナミ一人だった。
スザクが先陣を切り、四方を警戒していた人族に斬り込む。それに乗じて反対方向からアルザスが攻め入った。
奇襲が成功したおかげか、多少の抵抗程度で外にいる連中を鎮圧することに成功した。音がしない為、テントの中の人物は知る由もないだろう。
これで残りは二つのテントの中にいる三人だけだ。一人だけいるテントの方はアルザスが担当し、私とスザクはリステと残り二人のいるテントへと向かう。
この時点でサザナミの無音障壁が解除された。
元々持続が出来ない魔術だったが、ここまで来ればもう不要だろう。
テントの中にはリステがいる為、流石に無闇に攻撃は仕掛けられない。
私のアイコンタクトでスザクがテントの天井を切り裂いた。テントの幕が降ろされ、中にいた人物が露わになる。
中央のベッドにリステが裸で縛られている。
それを取り囲むように二人の男が今まさに行為に及ぼうとしている状況だった。
突然のことに状況が飲み込めていなかった丸腰の男供を一瞬で真っ二つにする。
「ま、魔王⋯様? え、あ、えっと、何で魔王様がここにいるんすか」
私は辛うじて血で汚れていなかったシーツを掴み、リステに掛ける。流石に真っ裸では、スザクも目のやり場に困るだろうしな。
「無事で何よりだ、リステよ」
リステは涙をポロポロと零していた。
「ありがとうっす魔王様」
背後で大きな爆発が起こった。
爆風を利用し、アルザスが大きく跳躍する。
「すみません、奇襲に失敗しました」
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