第316話: 2代目魔王ナターシャ2
ギドの周りには、魔力渦以外に黒くて長い手のような物が複数地面から現れた。
近場の動くものを捉えようとウネウネとその場で揺れていた。
騒ぎを聞きつけた魔族の斥候隊もこの惨状を目の当たりにし、どうするべきか動きあぐねていた。
均衡を破ったのは、アランだ。
「いいか皆、本体のギドは狙うな。魔術も使うなよ。魔力枯渇を狙う。使える者は俺に続け!」
《
5人の斥候隊がアレンに続く。
そのまま何時間が経過したのだろうか。
魔力の渦も当初10個近くあったものが、残り2つにまで減っていた。当のギド本人は肩をダランと垂らし、まるで動く素振りはなかった。
誰もがそのまま終息すると思っていた。
しかし、最前列にいたアレンの後方から悲鳴が挙がる。
慌てて後ろを振り向くと、仲間たちが地面から生えた黒い腕に掴まれていたのだ。
すぐに助けに向かうも、どんどんと地面から黒い腕が現れ、近付くことが出来ない。
あの黒い腕、どう言ったわけか、物理攻撃も魔術での攻撃でさえ全く効いていない。実体がないかのようだ。
掴まれた者は、魔力と正気を吸われ、まるで干からびたミイラのような朽ち果てた姿に成り果てていた。
「どうせ近付けないなら⋯」
《
捕らえられている仲間たちに向かって次々に放つ。
放たれた仲間たちは後方の方へと飛ばされていく。
多少はダメージを負うだろうが、あのまま捕らえられたままよりは全然マシだろう。
しかし、ギド本体からこれ以上離されるわけにはいかない。出来ればギドは生きて捕らえたかったが、犠牲者をこれ以上出すわけにはいかない。
「作戦変更だ! ギド本人を狙う。魔術は駄目だ。物理攻撃で行く。ありったけの武器を用意しろ。
その後、途切れることなくギドへ武器の投擲、
最初は黒い腕が本体を守るべく抵抗していたが、数の暴力には争うことが出来なかった。
「隊長、対象の生命反応のロストを確認しました」
魔力の渦も黒い腕も綺麗さっぱりと消えていた。
ギド本人も既に原型を留めない程の肉塊へと成り果てていた。
「一体、コイツは何だったんだ⋯」
僅か4歳の少年に同族50人を超える犠牲者を出してしまったこの事件を受け、ギドは徹底的に調査された。両親のことや、生まれ故郷、その生い立ちまでも。
しかし、大部分が既にこの世界に存在していないことから分かった情報はあまりにも乏しかった。
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ナターシャは思案していた。この事態にどう行動するべきか。
私が判断を謝れば、折角繁栄を続けている魔族に大きな打撃を与えることになる。それだけは阻止しなければならない。
「ナターシャ様、どうなさいますか」
「もう一度確認しておくわ。確か、忌み子と呼ばれる所以は、産まれ出てきた際に膨大な魔力を有していたことの一点よね」
「そうです。本来赤子の状態からそのようなことはありえません。過去に一度だけ起きた事例もそれのみが調査の結果判明したことです」
あの時は、多大な犠牲を払い、根源を滅したのよね。
ならば、簡単じゃない。まだ目覚めていない今の内にその子を始末してしまえばいいだけじゃない。
「夜が明けたらでいいからその子を連れて来なさい。この魔王城へね。勿論ご両親もね」
その子の名前はアーギュスト・ノース。
後の3代目魔王となる人物だ。
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