第311話: ヴァレナス
7大魔王達の生まれ故郷ヴァレナスでの出来事
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「こ、ここは何処よ⋯」
少女はキョロキョロと辺りに視線を送る。
鼻に付くような懐かしい匂いに荒廃した都市が広がっていた。
「なんだトリア、
すぐ近くの岩の上に座っていたのは、私と同じ7大魔王でもあるアーネストだった。
「え、アーちゃん? あれ、早々にリタイアしたアーちゃんじゃない。ん、てことはここは死後の世界ってこと? 超速再生はやっぱり不発に終わったってこと?」
トリアーデフが最後に発動した超速再生は、本人でさえ初めて使用する魔法だったこともあり、効果の程は未知数だった。
「さあな。俺にもよく分からんが確かなことは、あっちの世界で死んだら元のこの世界に戻って来ちまうってことだ」
曇り空を見ながら黄昏ていたのは、7大魔王のブレイン、技巧のセルバ。
「理論じゃ説明できないね。僕たちの起こした時空渡りの際に発生した時空の畝り。それを修復するためには、原因を作った僕たちが元来た道を戻る必要がある。つまりはーー」
「あーあーあー、難しい話はなしだよ。セルバがここにいるってことはアンタもやられたの?」
トリアは、ニヤニヤと笑みを浮かべる。
「何でそんなに嬉しそうなのさ。まぁでも異世界は広いね。この世界じゃ僕らは敵なしだったのにね」
「済んだことをグダグダ言ったってしかたねえぜ」
ここは彼等の故郷、ヴァレナスと呼ばれている世界。どう行った訳か、死んだと思った次の瞬間、彼等は故郷へと戻っていたのだ。
「全てが夢落ちだったって線は?」
「ないね。ちゃんと異世界を渡った証拠は、記憶以外にもいくつか残っているしね」
セルバが外套から取り出したのは、掌大の筒状をした何かだった。
その筒状の何かを手に取りアーネストが興味深そうに眺める。
「なんだこれは?」
「異世界で作った、いわゆる魔力を蓄える爆弾さ。あっちの世界で蓄えた魔力だよ。多少なりと残ってたよ。あ、気を付けてね。不安定になってるからいつ爆破しつもおかしくないから」
アーネストは慌ててそれを放り投げる。
キャッチしたのは、少年の出で立ちをした7大魔王が一人、金獅子のサモナだった。
「とんだ災難だったね」
「何カリカリしてんのさ。アンタらしくもない」
「異世界でやられたボクの仲間たちがいないんだ」
「それって、死んじゃったけど帰ってこないってこと?」
サモナは、無言の頷きで肯定した。
ビーストテイマーでもあるサモナは、モンスターを使役し戦うスタイルだった。
異世界ではそのことごとくをユウたちに排除されていた。一般的には使役しているとはいえ死んでしまえば生き返ることなどないのだが、自分が生き返って元の世界に戻って来た以上、もしかすればと期待していたセルバだった。
親にも近い相棒を失った悲しみをふつふつと感じていた。
「他のみんなは?」
この辺り一帯には他の7大魔王の姿は見えなかった。
「ユリシアの奴は死に戻り早々何処かへ行ったぞ。なんでも負けたことが悔しいそうだ。ラドルーチの野郎は、ほらそこにいるぞ」
アーネストの視界の先にあったのは禍々しくドス黒いオーラを放っていた巨大鎌だった。
「あーあれ、気にはなってたけどラーちゃんがいつも持ってた鎌だよねあれ」
「あれがラドルーチの正体らしいぞ。あれがイキナリ現れた時はビビったが、鎌に触ろうとしたら意識を持ってかれかけたからな」
「え、なにそれ怖い⋯」
妖艶な佇まいに逆に魅了さえされてしまいそうな大鎌だった。
「でもラーちゃんまでやられちゃったんだね。じゃ残りはエド?」
「あいつは心配ないだろ」
「そだね、負けて帰ってくる未来が見えないよね」
「あの世界の住人なんて絶滅させちゃえばいいんだ」
「セルバ、あの世界にまた戻れないのか?」
「無理だね。時空渡りには膨大なエネルギーの時間が必要なんだ。少なく見積もっても100年は必要だよ」
皆が一様に黙り込む。
そもそもが惑星の寿命が尽きる前に異世界に渡った彼等だったが、当然のことながら残された時間はそんなに残されていなかった。
「でさ、考えたんだけどさ。もう諦めてたんだけど、もしかしたらまだ間に合うかもしれないんだ」
セルバは異世界に滞在中に色々なことを学び、それを生かすことが出来ればこの状況を打破できるかもしれないと考えていたのだ。
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