第308話: 破壊神トリアーデフ編16
ユウは巨大テディベアの攻撃を何とか避けつつ、トリアの
フランは涙を一雫零すも、すぐに気持ちを切り替える。
「大変申し訳ありませんユウ様。私ではあの者に有効打を与える事はできません。代わりにこの熊は私が引継ぎますので、ユウ様は7大魔王の討伐をお願いします」
フランさんは俺とは違い、冷静だった。昔からの仲間で同族でもあるイスが殺され、本来ならば取り乱してもおかしくはなはい状況にも関わらずだ。闘いに身を置く者として、半端者の俺とは違い、いついかなる時でも覚悟はできているのだろう。
「分かりました。でもトリアがどんな魔術を使うか予想できないから、常に意識はしておいて下さい」
フランは頷きでそれを返すと、己が敵の前へと転移する。
「あなたの相手は私がします。異論は認めません」
威圧的に発せられた言葉通り、鋭い眼光を相手に向けていた。それを表情に出すことはなかったが、内情は怒りで満ちていた。フランの身体が薄っすらと紫色に光輝く。次いで紫色の湯気のようなものが溢れ出した。瞬きの間にアイアンクローでテディベアを遥か彼方へと弾き飛ばし、自身もそれを追った。
この場に残ったのは、俺とトリアの二人だけとなった。
「キミとは殺りたくないんだけど、いい加減私のモノになる気はない?」
「悪いけど、人の命を何とも思ってないアンタじゃ願い下げだな」
「ふーん。残念ね。なら、もう必要ないから死んでいいよ」
《
数多の落雷が猛々しい轟音を鳴り響かせながらトリアへと降り注ぐ。
!?
あいつ、頭上の魔法陣で俺の攻撃を全て否してやがる。なら、これで挟み撃ちにしてやるよ。
《
ユウはトリアーデフとの闘いに備えて、覚えられるだけの
しかし、トリアはニコリと微笑むと、迫り来る
くそっ、あの結界は魔術にも効果があるのか⋯。だけど、今まで涼しい顔で受けていたトリアがここまで防御に徹するって事は、やっぱり受ける訳にはいかないって事だよな。
《召喚・千剣の雨》
一瞬の内にトリアの真上に出現したのは、数多の剣だった。剣が宙に浮いていたのだ。まるでそれぞれが意思を持っているかの如く、一斉に切っ先がユウの方へと向く。
トリアは振り上げた右手を振り下ろす。あれを一つ一つ躱すのは無理だな。障壁を展開し、耐えようと判断した時だった。
''⋯避けて⋯''
微かに聞こえたその言葉に、転移に切り替え回避する選択を取る。そうして転移先で見たものは、先程まで居た場所に突き刺さる数多の剣、所謂剣山と化した大地だった。芸術的なまでに大地に綺麗に突き刺さった剣は、それぞれが異なる色で発光していた。
「へぇ〜良く避けたね! 貫通付与してたから防ごうとしても無駄だったんだけどさ。ざーんねんっ」
ははっ⋯貫通か、危なかったな。いくら魔術は無効でもあれを喰らったら流石にひとたまりもないよな。さっきの声の主が気になるが、今はそんな事考えてる余裕はない。
まずはあの防護壁を壊してやる。
《
無尽蔵に作り出される無数の風の刃がトリアを襲う。
トリアの防護壁の耐久値が徐々に減っていく。
よし、このままゼロにしてやる。そう思ったのも束の間。背後から忍び寄る先程の数多の剣がユウを串刺しにすべく、差し迫っていた。
《
自身を中心に
大丈夫だ⋯あと少し⋯。
ガラスが砕け散るかの如く、
《闇王の誘い》
トリアは
視界が潰されたのか?
いや、これもトリアの何かしらの魔術なのか?
ヤバいヤバいヤバい!
気配察知が使えないうえに頼みの視界を奪われたら⋯
鈍い音と何かが腹部に突き刺さる。
剣の1本が腹部に突き刺さり、ユウは大量の血を流すも、すぐにそれを引き抜く。その反動で更に大量の血を流すも
この闇は反則だろ。
さっきから転移も障壁も使えないから察するに魔術阻害効果を持ってるらしい。早くこの闇の外に出ないと。
更に3本の剣が突き刺さる。痛みで気絶しそうになるも何とか堪えてひたすらに走る。真っ暗な中、何の気配も感じることができないのがこんなにも不安に感じることに今更ながら気が付かされた。今は前に進んでるのか? それとも後ろに進んでいるのか?
駄目だ⋯身体の感覚がない。自分が走っているのか止まっているのかさえも分からない。
右腕が切断された感覚に苛まれるが、何故だか痛みは感じなかった。
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