第307話: 破壊神トリアーデフ編15
100を超える巨大な隕石が大地へ降り注ぐ。上空は雷鳴轟く雷の嵐。大地は既に原型を留めておらず平地を見つける方が困難と言える状況だった。
相手は少女の姿を纏った規格外の化け物。一振りで大地が焦土と化し、瞬き一つで一帯が爆ぜる。言葉を発すれば、100を超える魔導兵が出現したりと、まるで天災相手とでも戦っているかのような理不尽さだった。
一体どれ程の時間が経過したのか⋯
体感的には2.3日の間ぶっ通しで戦ってる感じなんだが⋯。数百本持持参した魔力回復ポーションも在庫の半数近い数を消費してしまっていた。対するトリアは無尽蔵の魔力を秘めているのか、あれだけ大魔術を連発しているってのに一向に疲弊する様子はない。
当初俺達の作戦は、相手を魔力枯渇に追いやる事だった。しかし、その目論見は外れ、逆に俺達が枯渇に追いやられそうになっていた。
一方のトリアは、まるで遊んでいるかのように俺達に合わせて攻撃を仕掛けてきている始末だ。
しかし、これまでの戦闘で分かった事がある。まずこいつは魔術の類も物理の類も限りなく効かない。限りなくと言うのは本来ならば無耐性でダメージ100%入る所がトリアには恐らく1%以下だ。
もしも圧倒的な魔防耐性が固有能力によるものだとしたら、魔術や物理での勝ち目は万に一つもない。つまり詰みだ。だが、それが何らかの魔術による魔防耐性UPによる効果だとすれば、あれを試してみる価値は十分にある。
仮にこれが、効果が望めるならば解除が成功した時のタイミングが最後で最大のチャンスかもしれない。幸いにもトリアは俺達の事を油断しまくっているからな。だが、問題は
(私は問題ないわよ)
(私もその作戦で問題ありません)
念話によりフランさんとイスに俺の考えを説明していた。作戦は至極簡単だ。
(俺が
もしも
「ねぇ、作戦会議は終わった? いつまで続けるのさ。いい加減私の下僕になる決心はついた?」
どう言う訳か、魔術の効かない俺を気に入ったのか仲間にしようと勧誘してくる。勿論答えはNoなのだが、諦める様子はない。だから殺されずに済んでいる気は否めないが、その余裕ぶった油断が命取りだと教えてやるよ。
作戦開始だ。転移で相手の背後に回る。
《
「今だ!」
俺の合図と共に2人が魔術の雨を降らす。
ここに来て隠していた技を行使する。
《魔封じの魔眼》
《停止の魔眼》
あれからかなり練習し、効果の程は3秒程度まで伸びていた。それでも短い感は否めないが、今は泣き言を言っても仕方がない。
《一閃突》
紫色に光輝くフランさんの高速の突きがトリアに命中した。一閃突は、突きによる外部的殺傷目的ではなく、相手の内部から破壊する気功的要素が多かった。
以前、7大魔王が一人アーネストを倒した際も同様の技を使用していた。
魔眼効果が解除され、ユウも攻撃へと転ずる。
《
全員が魔力が底をつくまで撃ち続けた。黒煙が立ち込め、トリアの姿を視認する事は出来ない。
「はぁ⋯やった⋯の?」
イス、それはフラグだぞ。だけど、そう願う気持ちは分かる。これで駄目なら⋯
空気が一変する。
魔術の連続使用による熱風が辺り一帯を立ち込めていたにも関わらず、一瞬にして周囲温度が10度程減少する。また、トリアの居た辺りから突風が吹き遊び、立ち込める黒煙を徐々に晴らしていく。その中から出て来たのはトリア⋯ではなく、テディベアの巨大熊のヌイグルミだった。
「いやあ〜今のは流石の私も一瞬だけこの手で殺した母親が見えた気がしたね」
テディベアの中からまるで着ぐるみのように出て来たのは、無傷のトリアだった。そのまま大地へと両手をついた。
《
一瞬、トリアの足元が光ったかと思いきや、すぐに異変が訪れる。
「か、身体が動かない⋯」
そんな馬鹿なと力を込めるが、普通に動かす事が出来た。魔術の類だから俺には効果を発揮しなかったのか。だけど他の2人がヤバいぞ。無防備な状態であいつの攻撃を受けようものなら命がいくつあっても足りやしない。
「そうだよ。この結界内の地に足を付けてる生物の動きを止めさせて貰ったわ。悪いけど、ここからは手加減なし、本気で殺しに行くから」
終始にこやかの表情だったトリアが冷徹なそれに変わった瞬間だった。
《
《魔俊敏》
今は動ける俺に意識を向ける必要がある。そのままトリアに向かい一直線に斬り込む⋯が⋯何かが宙を舞う。
横目でチラリと確認すると、すぐにそれがイスの首だと分かった。
(イスッ!!!!!!!)
心の中でイスの名を叫ぶ。同時に自分自身に強く言い聞かせる。今こいつをここで仕留めれば、俺にはイスを蘇生させる事が出来ると。
すぐに相手へ視線を戻すと、眼前に迫っていたのは、刃先しかない槍だった。後ほんの少しでも気付くのが遅ければ俺の首も飛んでいたかもしれない。
転移でトリアの背後に回り、聖剣を振り下ろす。
しかし、俺の攻撃は甲高い音を辺りに響かせるだけに留まった。見えない防壁がトリアの周りに展開していたのだ。気になるのは上空の数字だろうか。
《
「中々速いね。やっぱり見所があるのはキミだけかな」
「ふざけるなっ!」
嘲笑うトリアに2撃3撃と浴びせるが、防壁が破られる事はなかった。上空の数字が攻撃を浴びせるたびに少なくなっていく事から察するにどうやら耐久値を現しているのか。
「キミ魔法が効かないからね。物理魔法も駄目みたいだし、私魔法以外はてんで駄目なんだよね。と、言う訳でキャロちゃんお願いね」
ユウは背後から近付く気配に振り返るも、強烈な一撃を喰らい、そのまま、彼方へと飛ばされ、結界の端に激突し、やがて止まった。
グハッッ⋯
大量の血を吐き、立ち上がる事ができない。
すぐに
陽の光を遮る影が目の前に現れる。先程の攻撃の主が眼前に聳え立っていた。
「凶悪なクマだな」
テディベアは無表情のまま、凄まじい威力と速さの鉄拳を繰り出した。
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