第306話: 破壊神トリアーデフ編14
「待ちくたびれたわ」
まだあどけなさの残る見た目少女の彼女こそが、7大魔王の一人、トリアーデフ。7大魔王最強の魔術師と聞き及んでいる。
「で、私と一戦交えに来たって事は、あんた達がこの世界で一番強いのよね? 雑魚ばかりでほんっと退屈だったのよね」
目をキラキラさせながら、嬉しそうな表情を浮かべている。どうやら俺達を好敵手と見ているのだろう。
その余裕ぶった表情をすぐにやめさせてやるよ。
「悪いけど、一番じゃないわ。だけど、私達で十分よ」
イスの素っ気ない返答に途端にトリアの表情が一変する。先程までとは打って変わり、無表情となり、落胆した素振りを見せた。
「え? なにそれ。私を舐めてるの? ふうん」
トリアは、下から上へとその視線を走らせる。
「貴女。大した事ないのね。なーんだぁ、期待して損しちゃった。なら用はないの。死んでちょうだい」
一瞬にしてその場の空気が凍りつく。
文字通り、辺り一帯の空間が一瞬にして凍りついた。
くっ⋯微かな魔力の奔流を感じ、すぐに転移で退避していたから良かったものの、魔術の発動モーションが全く見えなかったんだがな。2人は⋯あぁ、イスもフランさんも転移でやり過ごしたみたいだな。
俺は常時魔術無効を発動させている為、魔術の類は効かないけど、なるべく相手にそれを悟られたくはない。いざという時の切札にする為だ。
「え、なぁんだ、結構動けるじゃん」
トリアはクイクイと手招きする。それはまるで、今度はそっちの番だよと挑発しているようだった。そんな見え透いた安い挑発行為、誰が乗るって⋯
「調子に乗らないでよね!」
そういえば、イスのやつがいたんだったな⋯
《
《火炎球》
イスとフランさんが攻撃を仕掛ける。
《
トリアが躱さないように動きを封じる。
しかし、トリアは動けない事とは関係なく、余裕の表情でその場から全く動くそぶりを見せなかった。御構い無しと2人は連続で魔術を行使する。
轟音と共に爆炎と土煙が舞い上がり、トリア自身の姿が視認出来ない状況の中、微かに聞き耳スキルが反応した。
「はぁ、がっかりね」
微かに聞こえた声がしたかと思えば、直後に全身に電撃が走った感覚に苛まれた。フランさんは膝をつき、上空にいたイスは、落下し何とか受け身の体制を取っていた。
何が起こった?
俺自身にダメージは見られない。なら、やはり魔術だろうか。トリアが何かしたのだろうか。ヤバい。身動きの取れない2人を狙われたら終わりだ。
ここは俺が⋯
!?
気が付けば、トリアがすぐ眼前で俺を下から覗き込むように見上げるような形で眺めていた。俺が魔術を行使するよりも早く、トリアが仕掛ける。
《
全方位から闇色の斬撃が俺を襲う。またしてもノーモーションで放たれた魔術に躱す時間はなかった。躱す気なんてないけどな!そっちから近付いてくれた事に感謝するぜ。
《
至近距離だった事もあり、衝撃と爆風が自身を襲う。が、そんな事は関係ない。何発も連続でお見舞いし、ダメ押しを入れる。
《
何十という雷がトリアを襲う。勿論この程度で倒せるとは思っていない少しでもダメージが通ってくれている事を願うだけだった。
一瞬だが、僅かばかりの殺気を感じ、大きく後ろへと跳躍する。
暫くして、爆炎の中から出て来たのは、ほぼ無傷のトリアだった。衣服が少しばかり焦げている程度だろうか。あれだけ浴びせたってのに、流石に泣けてくる。
「魔法は全然なっちゃいないけど、アンタ魔法効かないのね。それ特異体質? それともあーちゃんみたいに位置偽装でも使ってるの?」
トリアはそれを確かめるべく先程の
《
フランが油断しきっているトリアに不意打ちを仕掛ける。ユウ諸共炎の渦に飲み込まれる。当然ながら、ユウには効かないと承知の上だった。
「全く、雑魚に用はないんだけどな。キミもそう思うよね」
まるで俺に対して恋人にでも向ける笑みを浮かべるトリア。そのまま姿が掻き消えた。
直後、フランの悲鳴が上がる。
俺もすぐに炎の中から出ると、そこにはイスが血だらけで倒れており、フィストを装備したフランさんとトリアが至近距離で睨みあっていた。フランさんは、いつもと雰囲気が違う。全身から蒸気が発せられるような薄紫色の光を発していた。
「ユウ様、イスをお願いします」
2人の姿が消える。正確には高速での立ち回りだ。
勿論、今の俺にはハッキリと2人の攻防が見える。
戦っているのは、トリア本人ではなく最初の登場の時に乗っていた巨大テディベアだ。鈍足な見た目とは裏腹にフランさんの超高速の攻撃に対応している。寧ろ余裕で応戦している感じだった。
すぐにイスに
「ここで待っててくれ。終わらせてくるから」
「ねえ、私と遊ぼうよ」
声に反応し、振り返り様に
俺の攻撃は素手ではたき落とされ、ニコニコした表情で尚も近付いてくるトリア。
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