第291話: 合流
ユウ視点
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死霊大陸へと向かうべく、港町ペリハーファを発ち半日が経過していた。
流石に
ここまでにMP回復ポーションを何本も消費していた。
幸いなのは自作のフルーツ味ポーションだよな。市販品なんて不味くて飲んでられない。余程の味音痴かそれこそ命に関わるような時くらいしか正直飲みたくない。
「どうやら見えてきたな」
来る者を拒む断崖絶壁の岩肌に、近付けさせまいとする海流のうねり。
もし、船で行っていれば知識が無ければ上陸なんて出来なかっただろう。
死霊大陸へと降り立つ。
まずは、皆を探さないとな。
「有効圏内に生物反応はなしか」
噂によれば、この世界の1/10程度の広さのある広大な大陸らしい。あてずっぽに探すのは得策じゃない。指定把握も取得して以降一度も顔を合わせていないリンやサーシャには使用出来ない。やはり、7大魔王リーダーの位置で確認する他ないか。
《指定把握》
いるな、距離は不明だが、真っ直ぐこの方角か。
いきなり鉢合わせして即死亡なんてのは御免被りたい。
まずは近くまで行ってみよう。それでリン達の反応があればそっちへ切り替えだな。
「さて、ここからは慎重に行くぞ」
自分で自分に言い聞かせる。
範囲探索(エリアサーチ》を頼りに前へと進む。変わり映えしない風景を暫く進んでいくと、戦闘の爪痕だろうか、岩肌が抉られ、巨大なクレーターが其処彼処に出来ている。
「これは、酷いな」
無残にも胴体を半分にされた亡骸が大地に散らばっていた。
この一見乱雑にも見えるが、規則的に並んだ散らばり用は⋯
一瞬で両断されたのか?
しかもこの範囲をか?
だとしたら、射程範囲は数kmか。ヤバイな。不謹慎かもしれないが、同時に安堵もしていた。
まだ2人は生きている。
すぐに連れてこの場を離れよう。
不安なのはリンの反応とエドアールの反応が重なっていた事だ。
サーシャは少し離れてるけど、まさかリンは戦っているのか?
そのまま、サーシャの元へと移動する。索敵を警戒していたのが仇となり、サーシャと一緒にいた大盾の人物に警戒されてしまった。
「そこにいるのは誰だ!」
完全に気配を殺し、無音で近付いたにも関わらずバレるとは、この人も相当な強者なのだろう。
「すみません、敵ではありません」
敵ではないアピールとして、両手を天に上げる。
「え、ユウ様?」
サーシャはありえない物でも見るかのように目を見開いている。
「久しぶりだな、サーシャ」
「ん、お前勇者⋯ではないな。冒険者か? 何故こんな場所に?」
あまり長居するつもりはないんだけどな。
手短にここへ来た経緯を説明する。
勇者連合が壊滅したと言う情報を聞いたが、仲間が生きてる可能性をかけ、救出に来たと。
少し省略してしまったのは否めないが、それが理由か何故だか胸ぐらを掴まれてしまった。
「このまま逃げ帰るだと? ふざけるなよ! 今奴を仕留めなければ、甚大な被害が出るんだぞ!」
「乱暴はやめて下さい!」
俺達の間にサーシャが割って入る。
逃げ帰る? 確かにそうかもしれない。
だけど、勇敢と無茶は違う。勝ち目のない戦いに意味はない。
「勝算はあるんですか? ある程度相手の強さが分かった今だからこそ、一度引いて態勢を立て直してから挑むべきだと思いますよ」
「誰が勝てるってんだよ」
「え?」
「あいつらは人族の最高峰だ! あいつらの他に奴と渡り合えるのは誰がいるんだよ!」
「人族だけで勝てるほど相手は楽じゃありませんよ」
一触即発の中、再度サーシャが間に入る。
「ユウ様聞いて下さい。リンがね、神様からの天恵を受けて勇者になったんですよ。今のリンに勇者レイン様、そしてリグ様がいればきっと、どんな強大な敵でさえ撃ち倒してくれます」
やはり勇者レインも闘っていたか。
確か、人族最強と言われていた勇者だ。
間近で彼の戦いを見た事があるけど、あれは凄まじかったな。
それと、リンが勇者になったのか。なるほど、だから
この威圧を実際に近くで感じてみて分かった事がある。
あんなの人の次元で勝てる相手じゃない。いくら人族最高峰の3人だとしても、無理だ。
俺がここまでエドアールの事を恐れるのは、神からのお告げがあったからだ。神というのは当然メルウェル様の事。
ここへ来る前の夜。エルフの里クーバハァで皆と一緒にベッドで寝ていた俺は、眠りに落ちた途端意識だけ神の社に飛んでいた。そこで告げられたメルウェル様のお告げは、7大魔王のリーダー、エドアールと戦うには、メンバーを揃え時を選ぶ必要があると言うものだった。
メルウェルから告げられたメンバーとは、ユウを含めた主要人物がいないと勝つ事はおろか勝負にならないと言うもの。時と言うのは、エドアール以外の他の7大魔王全員を倒す事。
ユウが教えられたのはここまでだ。
その理由として、エドアール本人すら知らされる事はなくまさに神のみぞ知る内容だった。
どう言った訳か、エドアールは自世界から異世界へと渡った際に、とある制約を受けていた。
それは、自分の仲間達が全員やられてしまうと、リーダーであるエドアール自身の力が大幅にダウンしてしまうと言うものだった。
「サーシャ、信じて欲しい。今は一旦退くんだ。じゃなければみんな殺されてしまう。奴に勝つには準備が必要なんだ」
俺を弾き飛ばそうと盾騎士が突き飛ばしに掛かる。
だが、その場からビクともしない俺を今度は武器を手に取り、強制排除の構えを取る。
「何処の誰かは知らないが、聖女様を呼び捨てにするわ、場を乱すわ、何様のつもりだ? これ以上何かするようならば実力で排除させてもらうぞ」
「ガルシャ様やめて下さい! この方は、冒険者のユウ様です。名前くらいは聞いた事があるはずですよ。単独で
「な、何⋯お前があの冒険者か」
品定めするように俺を一瞥すると、
「すまなかった。少し頭に血が上ってしまったようだ」
やけに物分かりがいいな。英雄と呼ばれるのは嫌だけど、こう言う時には役立つな。
「いえ、別に構いません。それよりも信じて欲しい。今のままだと絶対に勝てないんだ。今は逃げるしかない」
俺の真剣な表情に感化されたのか、先程まで頑なに拒んでいた盾騎士も諦めたように肩で大きく息を吐いた。
「分かった。だが、ヤツがそう簡単に見逃してくれるとは思えないがな」
「そこは任せて欲しい。全員まとめて転移するよ」
「お前さんも転移が使えるのか。そりゃ驚きだ」
お前さんも? この人も使えるのか?
その時だった、遠方で巨大な爆発が起こると、凄まじい衝撃波が俺達を襲った。
「後ろに回れ!!」
ガルシャは前へ出ると、大盾を構えて衝撃波を受け止める。
《
ガルシャの大盾が金色に光輝くと俺達3人を包み込む形で円形の薄いドームが形成された。
外は凄まじい突風が吹き荒れるも、そのドームの中はそよ風どころか砂埃すらも舞う事はなかった。
爆心地では、まるで核爆発でも起こったような巨大なクレーターが出来ており、まさに目の前にはキノコ雲が上がっていた。
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