第278話: vsセルバ(魔女サイド)

セイリュウ視点

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無残にも切り刻まれていた魔女達の亡骸・・・が散らばっていた。


クロが口を塞ぐ。


「ひどい・・」

「奴が言っていたのはやはりこういう事だったのか」


確かセルバは鼠を駆除したと言っていたな。


彼女達だって相当の実力があったはずだ。

こうも簡単にやられるとは考えにくい…


しかし、妙だな。


これだけバラバラになっていると言うのに死臭の類や血の跡が全くないのは何故だ?

よもやそれが魔女の性質と言う訳でもあるまい。

ならば対峙した相手が全て持っていったと考えるのが妥当か?

はたまた、これはフェイクでただの人形か?


セイリュウは魔女達の亡骸に鑑定アナライズを行使する。


「そう言う事か」


一人納得していたセイリュウにシュリが首を傾げる。


「あぁすまない。どうやらこれはーー」

「やるねー!」


辺りには2人以外誰もいないはずだが、第3者の声が聞こえてきた。


「ボクの作った偽人形を看破するとは!!」


突然そこに現れたのは、人形の魔女シャルワースと時の魔女クロムウェルだった。


「別に隠れていた訳じゃないぞ?そのなんだ。あれだ。これでも結構危なかったんだぞ?」


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少し遡る


セイリュウ達がセルバと闘っていた最中に、離れて援護していた魔女達の元へとセルバの刺客が放たれていた。


「あの二人ならきっと倒してくれるよね?」

「アニー。喋ってないで集中したらどうだ。魔術の威力減がお前の担当だぞ」

「分かってるよシルフィちゃん任せて!」

「アニーよ。魔女達の中でもシルフィをちゃん付けするのはお前くらいのもんじゃぞ」

「いいじゃない減るもんじゃないしさ?エスナちゃん」


暴風の魔女アニー・シャラザード

見た目はエスナにも負けず劣らずの少女なのだが、齢はシルフィードに次ぐとされていた。


魔女達は以下の作業を分担して行っていた。


物理攻撃の威力減

反射対策

魔術の威力減

対象者へのバフの解除

対象者へのデバフ

味方へのバフ

範囲結界の展開

索敵


「ミラーゼ!もっと防壁の強度を上げて!反射は絶対阻止よ!みんな根性見せなさい!!」


魔女達に指示を飛ばすのは、最年長のシルフィード。


そんな折、突然上空に見知らぬ影が現れる。


「大変みんな!上を見て!」


それは龍の姿をした巨大な影だった。


シルフィが叫ぶ。


「馬鹿なっ!索敵警戒と濃霧による認識阻害を無視して現れたって事!?」


竜は関係なしと言わんばかりにその巨大な口を広げ、灼熱の炎を放つ。


透明な結界が炎から魔女達を守る。


守護の魔女クリスティーナ・ランドット。

彼女は護りに特化した魔女。


「うぬぬ…なんて熱量…ごめん、そう長くは持たない」

「クリス耐えて頂戴!エスナ!アニー!ランデル!龍野郎を仕留めて!他の者はセイリュウ達の支援を継続して!」


一度着地し、飛び上ろうとする龍をエスナが足止めする。


重力グラビティ


アニーがその両の翼を斬り落とす。


双風刃ツインウィンドカッター


ランデルは空から一閃の雷を動けない龍に堕とす。


爆雷はくらい


3人の息の合ったコンビプレーに成龍は動かぬ肉塊へと変わる。


「大きさ的には成龍なのだが、にしてはあっけないな」


肉塊となった龍の中から何かが現れる。


「僕らの闘いを邪魔してたのはキミ達だね」

「な!何故お前がここにいる!」


セイリュウ達と闘っているはずのセルバだった。


「ああ、僕はただのコピーさ。本体じゃない」


《操糸・繭》


糸使いの魔女イサナがセルバを糸で包み身動きを封じる。


「この糸は鋼並みよ。そう簡単には切れないわ」


イサナもシャルワース同様に属性外魔術の特殊使いだった。

人形使いのシャルワース、糸使いのイサナ。

イサナは糸を操る以外の魔術は一切使用出来ない。

しかし、その糸を使い様々な物を創り出す事が出来た。


「な、何が・・・」


セルバを縛っていた糸から紫色の液体が糸を伝い術師の彼女の手元まで来ていた。

その液体に触れた瞬間、イサナは口から大量の血を吐き、その場に倒れた。


「イサナぁぁっ!!」


イサナが倒れた事により、捕縛していた糸が解除されてしまった。


中から出て来たのは、セルバではなく蜘蛛型の魔導兵だった。


再びランデルとクリスが魔術を行使するも、全くの無傷だった。


エスナが直ぐに状態回復リフレッシュ治癒ヒールを施す。


「なんじゃ、この毒は・・・」


エスナを含めたイサナに近付いた魔女数名が同様に毒に感染してしまった。


「この世界にはない毒さ。コソコソと動いてたキミ達にはお似合いの死に方だとおもうけどね。あとね、魔法?いやこっちの世界では魔術か。この子には効かないからね」


《毒散布》


蜘蛛型魔導兵の口から放出されたのは、エスナ達が感染したものと同種のものだった。


「このままでは・・」


シルフィはセイリュウ達のバックアップの魔女の加護を発動中だった。

離れた場所から2人に支援を飛ばせていたのは、まさにこれのお陰だった。

しかし、発動中は他の魔術は一切使えないという欠点があった。

一度解除すると、再び支援する2人を肉眼で捉えなければならない。

シルフィは決断を迫られていた。


このまま何もしなければ最悪魔女達は全滅。

態勢を立て直すために一旦離脱?

でも、もしその間に2人がやられてしまったら…



氷結世界フリージングワールド


氷の魔女シルが空間毎蜘蛛型魔導兵と周りの散布されていた毒毎凍らせる。


「魔術が効かなくたって、周りを全て凍らせればいいだけ。私の魔力が続く限りはコイツはここから出られない。今の内に逃げて」


返事の答えを決めかねていたシルフィにシャルワースが応える。


「ボクにいい案があるよ」


シャルワースの案は、得意の人形を使い、仲間全員の死体をでっち上げる事だった。


「そんなに短期間に出来るのか?」

「うんー、実はね、みんなの人形は既に作ってるんだ。本当はこんな事に使うつもりはなかったんだけどね。後はこれをグロテスクに作り替えるだけだよ」

「どれくらいで完成する?」

「うんー、5分頂戴!」

「分かった。頼むぞ。ムー手伝ってやってくれ。支援組は継続して続けてくれ。他の者は解毒の手段を探してくれ。後、私達はこれより拠点を変更する。場所はクロムに事前に伝えてある」

「シルフィ、第2拠点でいいんだよね」

「ああ、頼む」

「シルフィ様!イサナの意識がないよ!治癒も状態回復も効かないし…」

「私の解毒でも効果なし」

「毒消しポーションでもだめだったよ」


セルバが放ったのは、この世界には存在しない毒だった。

故にこの世界の誰も解毒する術を知らない。


「可能性があるとすれば、過去の大聖女様が使えたとされる最高レベルの治癒か…あれならばどんな傷も状態も回復させる事が出来ると言われている」

「今の時代にそんなの使える人物いるの?」


歴史上過去に治癒Lv5が使えた者は数百年前に存在した聖母サリエル様ただ一人と言われていた。


「モルトトの聖女様も治癒Lvは確か4だったよね」

「シルフィ様、ごめん。そろそろ魔力が尽きそう」


蜘蛛型魔導兵を氷漬けにしていたシルの限界だった。

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