第256話: vs金獅子のサモナ

「身体が動かない・・」


あの時とは違い、魔術は使えるようだが何故だか指一本動かせない。

まさに金縛り状態だ。

さっきの魔術が使えなくなった時のような何かに寄生されたか?

速攻で範囲探索エリアサーチで確認したが、その心配はないようだ。


全範囲重力エリアグラビティは効果はまだ発動している。サモナの奴もまだあそこでうずくまっている。


間違っても動揺して術を解かないようにしないとな。

自分自身を含め、再度辺りを範囲探索エリアサーチで注意深く確認する。


サモナを護るように数体のモンスターが周りを陣取っている。


ん?


なんだ?あそこに僅かなサイズのモンスターがいるな。

小指の爪程のサイズのそれは、体の割に大きな目をジッとこちらに向けていた。


雷撃ライトニングボルト


何のモーションを取らず無音且つ無詠唱で放たれた魔術が小さなモンスターを消し炭にする。


途端に金縛りから解放された。


やはり、アイツが原因だったのか。

ホッとした瞬間に背後から殺気を感じ、右側に大きく跳躍した。


また新しいモンスターか・・。

全く次から次へとキリがない。


あいつ、重力グラビティ網の中を普通に動いてるな。

格好からするに、魔術師か。

少しでも金縛りを解除するのが遅ければヤバかった。


黒いコートを羽織り、紫色の艶やかなフードを被っている。

手には、骸骨の錫杖だろうか。江の部分に髑髏が飾られている。全くもって趣味が悪い。


風でなびいた時にチラリとフードの中が垣間見えた。

どうやらアンデットみたいだな。

薄気味悪い髑髏の顔が一瞬視界に入る。


あと気になるのは骸骨魔術師の足元に常時紫の魔法陣が展開している事だろうか。


七破壊光線セブンスディザスライン


掲げた錫杖から7つの7色の球体が突如として出現した。

その煌びやかな球体は浮遊しながら骸骨魔術師の周りを周遊している。


見た事のない魔術だ。

どんな効果なのかは不明だが、生憎と魔術の類は効かないんでね。構わず攻めさせて貰う。


火撃ファイアーボルト


な、消えただと!?


3m級の火炎放射が骸骨魔術師を一飲みにするかと思いきや、俺の火撃ファイアーボルトを搔き消しやがった。

ならば、これならどうだ!


炎獄世界フレイムベルワールド


炎の柱が骸骨魔術師を包み込む。


しかし、次の瞬間、これすらも掻き消えてしまった。


ははっ、魔王にすら聞いた魔術なんだけどな。

だけど、これでハッキリしたぞ。

あの浮遊してる球体が魔術を阻害しているらしいな。


ストレージから聖剣アスカロンと以前購入していた短剣を取り出す。


あまり剣を振るうのは得意じゃないんだけど、こういう魔術の効かない相手対策としてコツコツ練習はしていたんだ。

フェンリルは的が大きかったから狙いやすかったんだが、相手は人型サイズ。

まぁ、泣き言を言っても始まらない。


こちらが武器を持ったのを警戒したのか、岩で生成された無数の槍を飛ばしてくる。


本来なら相当な速さなんだろうけど、瞬身アンリミットポテンシャルのおかげで、だいぶスローに見えるな。


危なげなくそれらを全て躱し、骸骨魔術師を縦一文字に両断した。


何かしてくるかと思ったが、斬り伏せると、そのまま霧散してしまった。


!?


後ろを振り向くと、サモナの姿が見えない。

すぐに指定把握でサモナの居場所を探るが、、やはり何処にもいない!

どこに行きやがったあの野郎!


考えられる理由としては、今までの経験上、別空間にいる場合しかいない。

俺の重力グラビティから逃れる為と考えるのが妥当だろうか。


「キミ、魔術だけじゃなくて、剣も使えるのかい?反則だね」


いつの間にか背後にサモナの姿があった。


「それに加えて魔術が効かないなんてね」

「制限なく様々なモンスターの呼べるお前に言われたくないな」

「それもそうか。まぁいいか。ああ、あの娘はどこに連れてったの?」

「敵であるお前に言うはずないだろ?俺も暇じゃないんでね、終わらせてもらうぞ」

「ふーん。まぁ、捜索の得意なしもべに頼めばいいか。それにしても僕の切り札達を次から次へと倒してくれちゃってさ。この世界を征服する為の貴重な戦力だったのにさ。正直ちょっとね、鬱陶しいんだよキミ」

「それはお互い様だな。素直に異世界へ帰るならこのまま黙って見過ごしてあげてもいいぞ」

「もう帰る場所などないさ。あ、そうだ。キミにピッタリの子がいるんだ」


ちっ、させるかよ!


氷結世界フリージングワールド


凍らせるよりも一瞬早く、そいつは出現した。


藍色の煌びやかな装甲に包まれた巨大な人型の物体だった。

体長は3m程だろうか。

俺の背丈程はある太い腕に太い脚。

ゴーレムと言うよりは、金属生命体?いや、ロボットと呼ぶ方が正しいかもしれない。

あっちの世界にはロボットがいるのだろうか。


「ガーディアンには、魔術の類は一切効かないよ。物理攻撃もね。オリハルコンの外装に包まれたガーディアンには傷一つつけられないだろうさ」


おいおい、まじかよ。

何て厄介な奴だ。


ガーディアンは俺を敵と認識したのか、ゆっくりと歩みを進め・・・そして消えた。


次の瞬間、右側からストレートアッパーを繰り出すガーディアンの姿が見えた。

すんでの所でそれを避け、後方へと退く。


「ああ、忘れていたよ。僕の召喚出来る魔物には上位ランクAから下位ランクDまでの強さの指標があってね。その中でどれにも分類されない5体の例外があるんだ。それらはSランクに分類される最強の僕さ。さっきの魔人アスモデウスもその1体でね。このガーディアンで2体目さ」


ははっ、つまりは強敵と言うわけだ。

なら苦戦したグリフォンや死にかけた超大型巨人よりもコイツは上って事か。

さて、どう戦ったものか・・。

以前も魔術が無効な奴と戦った事はある。

だけど、そのどれもが物理が有効だった。


あれを試してみるか。


失われた魔術ロストマジックの一つ、全てを貫く刃クリスタルブレイク


説明によれば、どんな物でも貫くとなっている。

だけど分類は魔術だ。

魔術無効の場合は、どうなるのか。


そうこうしていると、ガーディアンはその大きな口をガバッと開く。

口の中で光の粒子が収束していき、凄まじい轟音と共に光線を穿つ。


幅にして凡そ10mはありそうな程の光線が地面を削りながら真っ直ぐに此方へ向かってくる。

転移でそれを躱そうとするが、転移が発動しない。


くそっ!またかよ!


身体をよじりながらも何とか光線を躱すも左手が僅かに触れてしまい、まるで最初から無かったかのように肘から下が消失していた。

同時に凄まじい激痛が襲うが、痛みに苦しんでいる暇はない。


「言い忘れていたよ。その瞬時に移動するやつ、それ封印させてもらったから。逃げようったってそうは行かないよ」

「ご丁寧に説明どうも」


片腕じゃ何も出来ない。

すぐに治癒ヒールで損傷部を癒すと、攻めへと転じる。


全てを貫く刃クリスタルブレイク


一瞬にして生成された背丈程の長さのクリスタル。

陽の光を浴び乱反射しながら、一直線にガーディアンに向かい飛翔する。

ガーディアンの速さならば避けるのは容易かっただろう。

俺を含めた誰もが魔術無効に弾かれるかと思いきや、そのままガーディアンの装甲を貫通した。

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