第174話: 不死の王討伐2
都市だと勘違いしていたのは、マルガナという小規模な国だった。
マーレさんに聞いたのだが、今回の依頼は、このマルガナ国からの依頼だったようだ。
そういえば、依頼を受ける際にそんな事を言われた気もする。
そして、何より驚いたのは謎の少年から救った騎士は、なんと勇者だった。
この国のギルド本部を訪れた際、同じく勇者一行の聖職者ミーチェさんと盾騎士のゴエールさんと合流した。
今はギルド奥の一室を借りて、お互いが知っている情報を交換している。
俺がすぐに撤退を決断したように、勇者一行もまた相手の強さを知り、魔術師であるオーグさんが時間を稼ぎ、勇者を含めた3人は一度は洞窟の外に逃げたようだ。
しかし、勇者ギールだけは、残っているオーグさんを救うべく一人戻っていった。
あの場は一瞬しか居なかったので分からないが、勇者一人以外は見当たらなかった。
少なくとも生存反応は一つしかなかった。
「あいつが
おっと、ラノベとかで聞いた事がある名前が出て来たぞ。
え、でもそれどうやって勝つの?不死だよ?死なないんだよ?
(まさかこのタイミングで復活するなんて・・)
(セリア、何か知ってるのか?)
(はい、最期にこの地に降り立ったのは約2000年前だったと思います)
俺が知らなかっただけで、
(でもどうやって倒したんだ?)
(それは少し違います。倒したのではなく、封印したと言った方が正しいかもしれません)
(封印?)
(私も良くは知らないのですが、封印する方法があるらしいですよ)
(倒す事は出来ないのか?首を飛ばすとかさ)
この世界に来てかなりの歳月が経過したが、不死という存在には出会った事がない。
いまいち、実感が沸かないというか、イメージ出来ない。
殺した瞬間から、再生するのだろうか?
首が生えてくる?まさかね。
(不死の称号を持っているものは、粉微塵にされない限り、すぐに再生してしまうそうです)
(ならば、粉微塵にするだけなんじゃないのか)
(それが出来ないくらい強敵らしいですよ)
強敵か・・。
俺の脳裏に浮かぶのは、圧倒的な力を見せる魔王や力の底が見えない白の魔女だろうか。
その2人に頼めば倒せるんじゃないだろうか。
実際俺自身、一目奴を見た時になんとなくだが、強者と同じものを感じた。
だから、すぐに撤退を命じたんだけど。
それは間違っていなかったようだ。
でも、勝てないと感じたからではない。
あくまでも強いと感じたからだ。
本当に勝てない程の相手なのだろうか?
実際に対峙した2人が、
ここで疑問に思っていた事を告げてみる。
「そんなに凄い相手ならば、こちらも相応の戦力で挑むだけですよね、例えば、最強と呼び声の高い勇者レインとか白の魔女や絶界の魔女とか、今なら停戦協定を結んでる魔族たちに協力を仰いだらいいんじゃないですか?」
勇者レインは、魔族との停戦協定の折、反乱した自軍の猛者たちをたった一人でねじ伏せた強者だ。
聖女様の話だと、最強の勇者らしい。
白の魔女は、南の島国グラキール王国で出会った全てを無に帰すと言われている最強の魔女だ。
俺の発言に対して、場がシーンとなってしまった。
え、何か変なこと言った?
「コネと連絡手段があれば、そりゃ頼みたい所だけど・・」
「今名の上がった人物、どれも凄まじいな・・」
あ、そういう事ね・・
確かに俺が出会った中でトップクラスの実力を持つ人たちだ。
連絡手段は・・・絶界の魔女や魔王だったら取れない事はないんだけど・・。
それをこの場で言うのも偲ばれる。
「ゴホン。えー今、この国の上級冒険者以上を集めている所だ。揃えば、かなりの戦力となるだろう」
ギルドマスター名で、募集を出してくれているようだけど、上級冒険者か・・今まで強敵と呼ばれる存在と何度か対峙してきたが、正直レベル50以下の人が何人いようと圧倒的な力の前には数は全く意味をなさない。
一撃で薙ぎ払われて一掃されるのが関の山だ。
それならば、少数精鋭で攻めた方がまだ犠牲は少ない。
その後、実際に対峙した時の情報を共有する。
盾騎士スキル、シールドブーメランを放つも、相手を傷つける事は叶わず、盾だけが溶けたという。
何かの魔術だろうか?
仮に触れた物を強制的に溶かすのならば、物理攻撃は完全に無効化という事だろう。
まぁ、その辺は勇者が意識を取り戻したら詳細を聞けるだろう。
後、役立ちそうな情報としては、相手はロストマジックの使い手だと言う。
ロストマジックとは、現代には存在しないと言われている魔術だ。
失われてしまった魔術。
亡国の騎士の連中が使っていたのは、例外だと思う。
ならば、現代では失われた魔術、ロストマジックと呼ばれるものが使えても何もおかしくはない。
むしろ、教えて欲しいくらいだ。
奴が使った魔術は、事前にどんなものか知っておきたい。
この国の図書館ででも調べてみるか。
「君たちはパーティーを組んでいるようだが、人員が揃えば君たちも新たなパーティー編成を分けさせて貰うつもりだよ」
「それはお断りします」
俺たちのメンバーを分けると言いだしたので勿論速攻お断りした。
「連携云々あると思いますので、俺たちは別働隊扱いにして下さい」
ごめんね、そこだけは譲れない。
過保護かもしれないが、何かあった時の為に、仲間たちには自分の手の届く位置にいて欲しい。
と言っても実は俺の為でもあったりする。
何がって、心配で居ても立っても居られないんだよね。
戦いどころの話ではない。
反論に対して多少渋い顔をされたが、ギルドマスターは何とか了承してくれた。
作戦会議中に慌ただしく扉が開かれる。
「た、大変です!ギルマス!た、対象が、真っ直ぐこちらに向かって進軍を開始しました!」
対象とは
見失わないように、俺たちと入れ替わりにギルドから依頼された冒険者たちが監視の任に就いているようだ。
「しかも相手は一人じゃないんです」
「まじかよ!でも俺たちが見たのは
ゴエールが声を荒げた。
監視の情報によると、
進軍速度からすると、この国への到着までの猶予は残り3日との事だ。
俺たちへの伝令とほぼ同時に国全土へと、避難警報が流された。
どうやらグズグズしてはいられないようだ。
俺は、一旦会議の席から抜けて、皆の元へと戻った。
討伐会議では、動き出せる者から順に出立するようにと決定した。
勇者を含む本陣は、まだ勇者の意識が戻らない為、回復次第動き出す事となった。
マルガナ国を戦場にしない為、ここより200km程離れた、小高い丘で、
皆の待つ宿屋へと戻った俺は、早速作戦会議を行う。
「みんな、さっきの放送を聞いてたよな」
「攻めてくるんでしょ?待ってないで、こっちから攻め込もうよ!」
「そうですよ!先手必勝ですよ!」
「マスターいつでも行けます」
相変わらず頼もしい仲間たちだな。
「ああ、そのつもりだ。俺たちは別働隊として、基本自由に移動させて貰えるように許可を取ってある。攻めるぞ!」
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