第143話: 大雪山連峰
名前「レティシア・オルガノ」
レベル51
種族:ハイエルフ
職種:精霊術師
スキル:
称号:雪女
あまりにも都合良すぎるため、半信半疑だったが、目の前の妖艶な美女は偽物ではなく、本物の雪女だった。
だって、称号が雪女になってるし。
疑いようがなく本物だ。
しかし、一番驚いたのは、彼女がハイエルフだってこと。
ハイエルフといえば、ただでさえ希少種のエルフの上位種族で、以前一度だけハイエルフの里を訪れたことがあったけど、元々の人口自体数百人だったはず。
ハイエルフの里自体も現存しているのは全部で3箇所しか存在しないと、里長をしていたテュナさんに教えてもらった。
「それで、何故私を探していたのですか?」
「なるほど、この時期にあの大雪山連峰を越えようと言うのね」
ふむふむと頷く雪女さん。
しかし、急に目付きが厳しくなった。
「無理ね。今が一番荒れる時期ってあなた知ってた?死にたいの?吹雪なめないでよね」
酷い言われようだ。
返答に困っていたら、言い過ぎだと思ったのか弁明を返してきた。
「あ、知ってるからこそ私を探してたのか」
そうだよ!
ここは気を取り直そう。
「雪女と呼ばれている所以は、噂通り吹雪を退ける力をお持ちなんですか?」
彼女に対しては、極力敬語で接しようと思った。
ハイエルフだからというわけではなく、目上の存在として接しないと駄目だと俺の第六感が囁いている。
この人は危険だと!敵に回したら駄目だと!
依然として雪女さんの目付きが怖い。
視線だけで射殺すなどと言うが、きっとこういう目付きのことを言うんだと思う。
終始睨まれ続けている。
俺何かした?
「そんなのある訳ないじゃない。私を神か何かと勘違いしてるんじゃない?」
「あなた、さっきから態度が大きくないですか?」
しまった!
忘れていた。
俺のことに関してのみ喧嘩っ早い姫様がいたのを失念していた。
やめてくれ、相手は仮にもハイエルフなんだ。
あれ、いやでも、精霊の方が身分というか偉いのかな?
いやいや、今ここでこの人を怒らすとマズい気がする。
恐る恐る雪女さんの方へ顔を向けると何故だか、驚いた表情をしている。
「貴女!ま、まさかとは思いますけど、せ、精霊様ですか?」
「そうですけど!何か?」
セリアの返しが怖い。
まさか、人族モードのセリアを見ただけで精霊と判別されるとは思わなかった。
急に雪女さんが跪いた。
「これは大変失礼致しました」
急変した彼女の対応にセリアがあたふたしている。
「え、えっと、顔を上げて下さい・・」
「今までのご無礼大変申し訳ありませんでした。まさか精霊様の
深々とお辞儀をする。
僕って俺のことだよな・・・
彼女の態度を見ていると、やはりハイエルフと言えど、精霊は珍しいようで、神のような存在なのだろうというのが伺える。
その後、彼女がなぜ雪女と呼ばれていたかについて語ってくれた。
本人的にはその呼ばれ方はあまり好きではないようで、何十年と呼ばれていなかった呼び名を俺たちが口にするものだから少しだけ苛立っていたという事らしい。
ルーの聞いていた噂通り、彼女には吹雪を止めることが出来るという。
本来ならばその力を使うことは禁じているらしいけど、他ならぬ精霊様の為ならばという事らしい。
雪女さんもといレティシアさんとは、明日の朝一大雪山連峰の登山入り口で待ち合わせをして、別れた。
なんというか、途中から精霊様、セリア様と連呼され流石のセリア自身も微妙に引いていた。
「何か調子を崩しちゃいましたね」
「ん?何の?」
「なんでもありません。それにしても、私たち精霊のことを崇拝とか敬う人がいることは、本当ならば嬉しいことなんですけどね」
「流石にあの崇拝振りは少しやり過ぎな感じだったな」
「はい、過去に何かあったのかもしれませんね。彼女はハイエルフです。ハイエルフは精霊に次ぐ長寿ですし、私の見立てでは彼女は約500歳くらいだと思います」
「ちょ、え?500歳?凄いな、それは・・」
「そうですか?神は寿命はありませんし、魔王も似たようなものです。私たち精霊も数千年あります。ハイエルフも例外を除けば長生きしても1500歳程度でしょうし、そんなに驚くことではないと思いますよ」
淡々と笑顔で語るセリアさん。
まず、比べる比較が間違ってると思うんだけど。
規格外たちと比べてどうするよ!
人族なんてたかだか数十年なんだし、それに比べたら500年なんて雲泥の差だよ。
取り敢えず、宿で皆と合流し無事に雪女さんと会えたことを伝えた。
「そういえばねぇ雪女さんのことを探している時に聞いたんだけどねぇ、雪山には雪小人族?っていう種族の集落があるみたいだよぉ」
「ほぼ年中吹雪いてる場所に集落があるのか、余程寒さに抵抗があるんだろうな」
「リトルスノウと呼ばれる妖精族のことだな」
いつの間にかクロウが腕を組んでルーの頭の上に当たり前のように座っていた。
ルーが嫌がっていないのを見るといつものことなのかもしれない。
精霊は、宿主に対してそれぞれお気にのポジションがあるのかもしれない。
セリアは俺の肩だしね。
「珍しい種族なの?」
「うん。世界中でそこにしか生息していないらしいよ。珍しい調度品を取り扱ってるらしいね」
何故だか、クロウが威張りながら応える。
「行ったことがあるのか?」
「昔ね、と言っても彼等にボクは見えてないから知らないんだけどね」
リトルスノウは、自らが持つ不思議な力を使って調度品を作るそうで、その調度品は全てにおいて高価な武具に匹敵するような能力が付与されている。その為、滅多に市場に出てこない、それは知られざる名品ということで高値で取引されている。
高値で取引されるもう一つの理由として、彼等は非常に気まぐれだった。
稼ごうという気がないので、調度品の製作は気が向いた時にする程度と噂されていた。
そして、何よりの理由は誰もそのリトルスノウの集落の場所を知らないのだ。
場所が分からなければ直に買い付けに行くことが出来ない。
「知っていますよ」
次の日の朝、レティシアさんと合流した俺たちは、リトルスノウの話をしていた。
「だから、リトルスノウの集落の場所を知ってますけど、道中立ち寄りますか?」
なんと、レティシアさんは知っていた。
願ってもいない提案に、どうせ道中ならと、全員一致で立ち寄ることに決定した。
皆は町で購入した厚手のコートを羽織っていた。
グリムベアーの毛皮と銘打ったコートで、どんな仕様かは不明だけど、自らの体温を保温してくれるので、まるで全身ホッカイロを装着しているような感じだった。
「やっぱり外は物凄い吹雪いてますねぇ」
ルーが天を見上げて呟く。
「私は吹雪いてても平気だよ!」
レティシアさんが先頭に立ち、何やら呪文を唱えている。
長い詠唱の後に、小さな白い玉が出現し、ふわふわと宙を舞っていた。
「雪の精霊よ」
レティシアさんは、精霊術師なので、自身の使役している精霊を呼び出したのだろう。
「凄い!私も精霊術師だけど、そんな精霊は見たことがないですよぉ!」
俺が知っている精霊術師の知識は、レベルが上がるごとに使役出来る精霊の種類と数が増えて行く。
同時に召喚できる精霊の数は、個人の能力に左右されるらしいが、精霊は本来レベルが上がり、その精霊の試練に合格すれば使役し、召喚することが出来る。
ルーの方が精霊術師としてのレベルは高いので、ルーが知らない精霊がいるのは本来ならばありえないのだけど、、
「特殊精霊と呼ばれる
何だか、条件とか開放とか、ほんとゲームのような話だな。
ルーは、レティシアさんの話を食い入るように聞いていた。
「開放条件は、申し訳ありませんが言えません」
がっかりと言わんばかりに肩を落とすルー。
クロウがポンポンと頭を叩いていた。
この雪の精霊の能力で吹雪を消してくれるようだ。
一介の精霊にそんな凄いことが出来るなんて、セリアやノアも知らなかったようだ。勿論クロウも。
「ユキ、久しぶりにお願い」
レティシアさんにユキと呼ばれた雪の精霊は無言のまま、段々と身体が光り出した。
暫く時間が掛かるとのことなので、少しの間待つことになった。
徐々にだけど、吹雪が弱くなってきた。
どうやら話は本当だったようだ。
別に疑っていた訳ではないけど、吹き荒れる吹雪を消すって、それだけ凄いことなのだ。
30分程が経過した時には、天候自体は変わらないが、吹雪自体はピッタリと止んでいた。
雪の精霊ぱねえ!
途中からユイとシュリがパチパチと拍手を送っていた。
それに気分を良くしたのか、吹雪を消す作業速度が上がった気がする。
無事に役目を終えたユキは、精霊界へと戻って行く。
「完了しました。では行きましょう」
大雪山越えは、最短ルートでも5日は必要だという。
今回は途中リトルスノウの集落に立ち寄るため、もう少し必要かもしれないとのこと。
積もり積もった雪をスノウブーツを履いた一行が進んで行く。
妹たちは、大雪に大いにはしゃいでいた。
実を言うと俺も気をぬくと一緒にはしゃいでしまいそうになっていた。
元の世界で大雪は何度か経験があったけど、男の子なんだし、こう大量の雪を見れば、かまくらだとか雪だるまを作りたいし、雪合戦だってしたくなるよね?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます