第43話: 露店散策
新たな仲間にリンを迎えた俺達は、朝から装備を新調するべく、武具を取り扱っているエリアに足を運んでいた。
「リンの攻撃スタイルは、楯無の長刀でいいのか?」
「はい、今まで色々な型を試してきましたが、その型が私に合っていました。ですが、本当に私なんかの為に武器を買って頂いて良いのですか?」
「リンが強くなれば俺達のパーティも助かるしね」
某サイトのドットコムでもあれば簡単なんだが⋯
生憎とそんなものはない為、自力で探すしかない。
そうして道行く冒険者の口コミで、最も高価な長刀を売っている露店の前まで来ていた。
どれどれ⋯
名前:ギリアン・レイグ
説明:先端形状が突きに特化した長刀。殺傷力と耐久性に優れている。重量は重い。
特殊効果:貫通力向上(中)、殺傷力向上(中)
相場:金貨20枚
希少度:★★☆☆☆☆
やっぱし、この程度か。大した事はないな。
比較した上でストレージから、1本の刀を取り出してリンに手渡す。
そう、これは古都ツガール帝国でノアに貰った神器だ。
「こ、これは⋯!」
リンは、目を見開き驚いていた。
徐ろにその刀を手に取り、触り心地を確かめている。
そして、鞘を抜き、軽く素振りする。
「わ、私、こんなにシックリ来る刀は初めてです。手に馴染むというか、まるで体の一部のような感覚です」
そういえば、ノアが言ってた気もするな。良い武器は、持ち主を選ぶと。
魔刀フラムジャイルがリンを新たな持ち主として認めたって事か?
「使えそうなら、その刀はリンに上げるよ」
「え!?本当ですか!あ、でも⋯きっとすごく高価な物ですよね」
「神器と呼ばれている代物だから、高価なんじゃないかな。名は、魔刀フラムジャイル」
「神器!?だめです!そんな貴重な物貰えません!」
「さっきも言ったけど、リンが強くなれば俺も助かるんだ。旅をしている都合上、凶悪なモンスターと戦う事なんてザラだし、パーティーの戦力強化は必須なんだよ」
その後も何度か説得し、やっとの事で受け取ってくれた。
ユイの短剣も強化したかったが、今装備している物よりも良質なものは結局見当たらなかった。
俺の杖に至っては論外だ。
防具に関しては、露店数が半端なく多かった。値段は特に気にする事なく、性能と効果で、それぞれに選んでもらった。
その際、異様なオーラを発している鎧を発見した。
「いらっしゃい」
「その鎧を見せてもらっても?」
近くで見ると、鎧と言っても甲冑に覆われているわけではなく、何かの金属で編んだようなメッシュだった。
「コイツは、やめた方がいいぜダンナ。性能はピカイチなんだがよ、呪われてんだ。装備している者の魂を吸うようで、今までコイツを装備した何人かが意識不明になったらしい」
なら、そんな危ない物売らなければいいのに⋯
名前:デビルノクス
説明:魔族一の技師、オーウェンの最高傑作の一つ。
魔族専用の戦闘服。自動サイズ調整機能付、自身の潜在能力を極限まで高める。
特殊効果:敏捷性向上(極大)、防御力向上(極大)
相場:金貨500枚
希少度:★★★★☆☆
魔族専用とか書いてあるんですけど?
これちゃんと鑑定してるのか?
いや、してたらわざわざ売らないか。
そもそも魔族は人族の領域には滅多に現れない。ましてや武具を買いに来るなどありえない。
「これは、何処で手に入れたんですか?」
店主曰く、半年程前に、ここからずっと東へ行った先に何かの衝撃で荒廃してしまった土地があり、そこで拾った冒険者から安く買い取ったのだそうだ。
状況から察するに、魔族がその場所で何らかの戦闘行為を行い、鎧を置き忘れ?か、手放した、そんな所だろうか。
「買い取りたい。いくらですか?」
クロに着せるつもりなのだが、本当に呪われていなければいいのだけど。
防御力が上がるに越した事はない。
さて、装備の新調はこれくらいにしておこう。
お次は、魔導具だ。
便利な物があれば、買漁るつもりだった。
しかし、行商の街広しと言えど魔導具を取り扱っている露店は、何時間も探した結果、全部で2つしかなかった。
それだけに魔導具の希少さが伺える。
どう考えても使い道のない物や、現在所有している物の劣化版を覗くと、4つの魔導具が目に留まった。
1.無重力シール
説明:これを貼られた対象の重さを強制的に0にする。
価格:金貨50枚
2.マジックバック
説明:トータル10kgまでの物を無条件で収納出来る
価格:金貨30枚
3.豊作の水差し
説明:この水差しで水を与えられた植物は、一気に成長をとげる。
価格:金貨30枚
4.鉱石探知機
説明:この中に入れた同じ系統の鉱石を探す事が可能。
価格:金貨50枚
この大陸で最も品数が多い街と聞いて期待していたのだが、数が少ない上にあまり飛び抜けた性能の魔導具がない事に少しばかり落胆した。
取り敢えず、この4つを一括購入して店を後にする。
続いては、魔術書だな。
こちらに関してはかなり豊富にあったのだが、結局種類が被っていたり、劣化版、どうみても使用目的の分からない物を除き、購入したのは、8点だった。
1.6
説明:全属性(火、水、風、雷、闇、聖)に対する魔術耐性アップ
2.
説明:一定時間攻撃力を向上させる
3.
説明:一定時間魔術威力を向上させる
4.障壁
説明:魔術、物理攻撃を一定のダメージ分無効化する障壁を展開する。無効化量、サイズは術師の魔力量に依存する
5.時短
説明:魔術の詠唱時間を半分にする
6.延長
説明:魔術の効果時間を2倍にする
7.捕縛
説明:相手の動きを封じる
8.
説明:術師の周りに石の槍を生成し、攻撃に用いる事が可能
何度も言うが、普通ならばこれらを取得するのには何年もの歳月が必要なのだが、俺の場合は魔術書を開くだけで取得できる。
なので、使えるものは、片っ端から覚えておく。
宿に戻ってから早速購入した魔術書を読み解いていた。
”ブーストLv1を取得しました”
何だ?
取得してLvを振った途端に新たな魔術を取得したぞ?
ブースト
説明:向上系魔術全てを最大Lvまで取得している場合、ブーストを使用するだけで、全ての向上系魔術を付与する事が可能。対象魔術(アジリティ、バイタリティ、パワー、エレメンタルレジスト、マジック)
こいつは便利だな。
わざわざ全てを使用しなくても良いのは楽だ。
それにしても覚えるのはいいが、何を覚えているのかを覚えておく方が難しいなこれは。何処かで整理しないといざって時に使えない。
すでに取得魔術は30を超えている。
気が付けば時刻はすっかり深夜になってしまった。
俺はいつも考えていた事がある。
「そろそろ会いに行かないと殺されるかもしれないな⋯」
忘れていたわけではないのだが、なんというかチャンスが無かったのだ。
みんなが寝ているし、少しだけ行ってこようか。
俺がゴソゴソと身支度をしていると、リンが起きてしまった。
「何処かへ行かれるのですか?」
「ちょっと出てくるけど、すぐ戻るよ」
リンが若干頬を染める。
え、いや、そんなんじゃないから!
いくら夜だからって、いやでも夜に出て行く理由って確かに他にない気もするな。
俺は今、ある一室の中にいる。
目の前には、金髪碧眼の美少女が可愛い寝息をたてて寝ている。
そう、エルフ族のエレナだ。
俺は、エルフの里を出るときにエレナと約束していた。
「週一で顔を見せに来る事!」
そうそう、こんな感じの迫力で言われたっけな。
ってあれ⋯?
さっきまで寝ていたはずのエレナが起きている。
「ユウ様、私、約束しましたよね?」
深夜にも関わらず、|エレナ様(⋯)の小言をたっぷりこってりと朝まで聞かされてしまった。
もちろん、エレナと別れてからの道中の出来事や出逢いなども説明していたのだけども。
「忙しいのは分かります。理解してます。だけど、ちょっとだけでも良いので、顔を見せて下さいね」
俺がエレナから解放された時には、既に夜が明けて朝日が見えていた。
「おはようございますユウ様」
「おはよう」
結局一睡も出来なかったな。
自業自得かもしれないが、次回からはこまめに顔を出そうと決心する。
暫くして、ユイやクロが起きてきたので、朝食を食べた後、ある場所へと向かっていた。
「今日は何買うのー?」
「うん、馬車を買おうと思ってね」
「え、お馬さん飼うの!?」
「勘違いしてないか?飼うんじゃなくて、買うんだぞ。でも馬は買わないよ」
「どっちも一緒!」
違うと思うが、もうツッコまない。
これからの旅を続けて行くには、馬車が必要だと感じていたのだ。
街間の移動も1日2日程度ならば良いが、1週間なんてザラだしね。
サイズだけではなく、内装が凝ったものや、魔導具付なんて高級馬車まであった。
金に物を言わせる訳ではないが、一番高価な物を購入する。あくまでも、それが一番気に入ったからだという事を付け加えておく。
馬車は、畳8畳程度の広さだ。広さは申し分ない。
それに軽量可の為の魔導具付だ。
普通このサイズなら馬3匹は必要なのだが、2匹で十分だそうだ。
馬車はゲットしたので、次は牽引する馬探しだな。
気になっていた事を馬主に確認する。
「馬車を引く馬は、例えば使役しているモンスターでもいいんですか?」
「ああ、モンスターテイマーが一緒なら、馬車が引けるモンスターならなんでも大丈夫だ」
というのも、この街には馬車の行き来が山ほどあるのだが、時々モンスターが馬車を引いている姿を目撃していた。
もしやと思っての確認だったが、やっぱりそうだったか。
考えがある。
そう、馬車をモンスターに引かせようと思っている。
しかも高レベルモンスターにだ。
別に目立ちたい訳ではないが、強い=速い。と単純に考えている。
どうせなら、速い方が良い。
それに同じモンスターならば、雑魚モンスターの類はそれを見ただけで襲ってこないかもしれない。
この辺りの情報も道中の馬車の中でシュマさん達に教えてもらっていた。
実は昨日のうちに、この街にあるギルドでモンスターテイマーに就職していたのだ。
魔術師、錬金術師に加えて、モンスターテイマーで3職目なので、さすがにどうかと思ったのだが、普通に職業に就けたので大丈夫だろう。
「と言う訳で、馬車を引いてくれる馬型のモンスターを仲間にしにいくぞ!」
「おー!」
ユイもクロも乗り気だった。
商人が行き交う街だけあり、様々な情報が集まってくる。噂の類から、確定情報まで実に様々だ。
冒険者から今回の馬型モンスターの情報を仕入れていた。
ここから2日程行った先に古城があるそうだ。
そこに馬型のモンスターが出現するらしい。
レベル帯も20程度という事なので、丁度いいだろう。
早速走って目的地まで向かう事にした。
いつも走って移動していたので俺とユイ、クロは大丈夫だが、リンはどうだろうか。
心配して損した。
やはりレベルが高いだけあり、体力も相当なものだ。
馬車で2日の予定が、走って1日だった。
「みんな飛ばしすぎ⋯」
「お兄ちゃん、息上がってるよ~」
先に弱音を吐いたのは俺だった⋯。
俺以外は、リンも含めてみんな体育会系のようだ。
まったく、先が思いやられる。
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