第7話: 王国での日常
小屋を出てから既に三時間が経過していた。
目的地に近付くにつれ、モンスターのレベルが下がっている気がする。王国の周辺は強いモンスターがいないという事だろうか?
RPGとかで言う、始まりの街の近くにポップするモンスターは弱いみたいな。
そのまま暫く進むと、
白い点は敵意のないモンスター以外の生物を指し示している。
目的地が近いのだろう。
「見えたな」
いつの間にか崖上で少し開けた場所に出ていた。眼前に目的地であろう王国が広がっているのが見える。話には聞いていたが、これはデカイな。街の中でも迷子になるんじゃないだろうか?
眼前に見えているのは見上げるだけで首が痛くなりそうな程の巨大な入り口だった。この大扉を開けるのに一体何人の労働力がいるのだろうか。考えただけで恐ろしい。
入り口の前には人々の列が一直線に並んでいた。恐らく入国審査のようなものをしているのだろう。
勝手が全く分からない為、取り敢えず最後尾に並んでおく。
他の人は皆馬車だったり、馬に乗ったりしている。
あれ、ボッチでしかも徒歩なのは見渡す限り俺だけじゃないか?
一人葛藤していると、若者が一人こちらに近付いてくる。
「旅の者か? その身なりだと商人というわけではないだろう?」
身なり?
ああ、そう言えば俺は今着ているこの一着しか持っていなかったな。俗に言う一張羅だ。
この世界に来た時から来ている黒いローブ姿をしていた。
「はい、旅の者です」
「ならこちらへ来い。その列は行商人の並ぶ列だ」
どうやら並ぶとこが違ったようだ。見た感じ今並んでたこの列しか見えなかったんだけどな。
行商人の入国審査は厳しいようで、全ての荷物を入念にチェックしているのを横目で見ながら通り過ぎる。俺は案内された建物の中に入り、そこでいくつか簡単な質問をされた。
まず身分証の提示を求められた。
先生から貰った首飾りを見せようとしたが、ハッと思いとどまり『ありません』と答えた。
なんとなくまだ使うのは早いと思ったからなんだけど。
衛兵らしきその若者は質問を続ける。
何処から来たのか? とか、ここへ来た目的は? とか。
俺はいつも通り当たり障りのないように答えた。
一通りの質問を終えた後、若者は懇切丁寧に教えてくれた。
「よし、行っていいぞ。まずは身分証を作ってもらう事だな。魔術師をしているならば、魔術師ギルドから発行して貰うといいだろう」
ギルドが発行してるのね。礼を言い、その場を後にする。
おっと、魔術師ギルドの場所を聞くのを忘れたぞ。
まぁ、時間が推してる訳でもないので、のんびりと探す事にするか。
さて、無事に街の中に入ることが出来た。とりあえず衛兵に言われた通り身分証を作るのが第一優先だな。
少し小腹がすいたのでミリーが作ってくれたキノコの串焼きをソッとストレージから取り出しかぶり付く。
まだ作り立てのように温かい。
ストレージの中の時間は入れた時点で止まっている。つまりは何時でも何処でも出来たてホヤホヤの料理を食べることが出来る。
賞味期限を考えなくていいのは有り難い。
え? そこじゃない?
うん、まぁ、冷めて味が落ちる心配がないのもいいね。
食べ歩きしながら暫く進んで行くと雑貨屋が見えて来る。折角なので少し覗いてみるか。
扉を開けると鈴がなり、恰幅のよい店主が元気よく挨拶する。
「いらっしゃい! 冒険者さん」
どうやらこの服装は冒険者に見えるようだ。
店内はそこそこ広く、他に三人の客がいるようだ。
そこには生活に必要な雑貨用品やアクセサリーなどの金品まで置いてある。
いくつかの値札を見ながら情報を整理して見よう。
以前、ミリーに教わったのだが、この世界には通貨として銅貨、銀貨、金貨の三枚しか存在しない。
それぞれ銅貨百枚で銀貨一枚。銀貨百枚で金貨一枚の価値になる。
割と覚えやすくて助かる。元いた世界のように複数のコインに札なんて物があったら、多少なりとも混乱していただろう。
そういえば、俺って今いくら持ってるんだ?
こっちへ来てからお金を使う機会が訪れなかった為、気にした事もなかった。
ストレージと暫く睨めっこする。
うーん⋯。どうみても金貨と思われるものが、数えるのも億劫になりそうな程あるな。
取り敢えず分かった事は、当面の間はお金に困る事はないだろうという事だ。
その後、雑貨屋で下着の類やタオル、衣服なんかをいくつか購入した。その最使ったお金は銅貨二十枚程度。
ここまでの感覚だが、どうやら銅貨一枚が元の世界の百円程度に相当しそうだった。
雑貨屋を後にした俺は、誰にも気付かれないように購入したものをストレージに放り込んでおく。
改めて街を見渡すが、人族しかいない。獣人族やエルフなんかと出会えるんじゃないかと少し期待したが、どうやら期待外れだったようだ。
道行く人を
いくつか確認した職種を挙げておく。
剣士
盗賊
聖職者
魔術師
狩人
精霊術師
直接戦闘には参加しなさそうだが錬金術師という職種も確認出来た。
身なりの良さそうな青髪の青年で、名をテオールと言う。実際に案内をしてくれるというのでお言葉に甘える事になった。
暫く進むといかにもという感じの魔術師ギルドが視界に入る。案内してくれた青年に礼を言いギルドの中へと入った。
中は若干薄暗い。通路の両側にはクリスタルだろうか。一定の間隔で並んでいる。様々な色合いのクリスタルがどこか幻想的な感じを醸し出していた。
真っ直ぐ進んでいくと受付と思われる所に辿り着く。
席にいたのら受付嬢だろうか。これまたお決まりといった感じで魔女っ子帽子を被っている。歳は二十代後半くらいだろう。
「あら、新顔さんですね。本日はどのようなご用件でしょうか?」
先程この街に到着したばかりの旅の者で、多少魔術が使えるので魔術師ギルドに身分証の発行してもらいに来た事を告げる。
受付嬢が『少々お待ち下さい』と頭を下げ、席を立つ。
暫くして何やらカードを手にして戻って来た。
「ではこちらのカードを手に取って下さい」
言われたままにカードを手に取る。すると僅かながらカードが光ったのだ。
まさかバックライトか? LED内蔵なのか? 人感センサーに反応した? 馬鹿な妄想はやめよう。
このカードは持ち主の魔力に呼応するようだ。
受付嬢に微笑ましい笑顔を向けられる。
「その様子ですと、ギルドカードは初めてですか?」
おっと、仕草が初々しく見えてしまったようだ。
「ええ、実はそうなんです。人里離れた場所に師匠と住んでたもので、世情に疎くて⋯」
「分からない事があれば何でも聞いて下さいね。今日から同じ魔術師仲間なのですから」
そんなに親切にされたら勘違いしてしまう。などと邪念は捨て、ここへ来た目的を取り敢えず果たす。
カードを再び渡すように言うので受付嬢に返す。
「ユウ様、職種は魔術師で種族は人族ですね」
おっと名前がバレたぞ!
驚いたが顔には出さずポーカーフェイスでやり過ごす。
「レベルは申告制となります。おいくつでしょうか?」
良かったレベルはバレてないのね。危ない危ない。さて、いくつにしようか⋯
弱くもなく強くもない辺りが無難だろう。
「14です」
少しだけ驚いた表情をされたが、受付嬢は後ろを向いて魔導具のような物にカードをセットし、何やら操作している。
少しの間待っているとカードが完成したのかこちらへ振り返り、ニコリとほほ笑む。
「身分証のギルドカードが出来ました。絶対に無くさないで下さいね。再発行には銅貨五十枚が必要になりますので。それと、これを持ちましてユウ様は正式に魔術師ギルドに加入されましたので、この魔術師ギルドで依頼を受ける事が可能となっております」
人々は仕事や任務の依頼を組合と呼ばれる所に持ち込む。組合は、どのギルドに依頼すべきか内容を吟味した上でそれぞれのギルドに仕事の依頼をするようだ。中には複数のギルドと合同で行うような依頼もあるそうで、恐らく討伐とかがそうなのだろう。
またの機会にすると受付嬢に告げ、魔術師ギルドを後にする。
よし、とりあえず第一目標の身分証はゲット出来た。
次は⋯宿でも探すか。当面の寝床の確保だな。
辺りをキョロキョロしながら、街を進んでいく。
そのまま進むとベッドの看板をぶら下げている建物に辿り着いた。
きっとここだろう。うん。扉を開けて中へ入った。
「いらっしゃいませぇ~」
若い女性の声が聞こえた。
今目の前にいるのは十歳くらいだろうか? 女の子がエプロンをつけてお盆を両手に抱えている。
「えっと、宿を探してるんだけど」
少女はニコリとほほ笑み俺の袖を引っ張り中へと案内する。
「お母さん~お客さんだよ~」
カウンターの所に人影が見えた。
これまたなかなか恰幅のいいおばちゃんが目に入ってきた。
「お、いらっしゃいー」
カウンターの前まで移動する。
少女は袖から手を放し店の奥へと行ってしまった。
「一名様だね、何泊止まる予定だい?」
「えっと、そうですね。とりあえず十日間でお願いします」
「はいよ、一泊五十銅貨だから十日で五百銅貨だよ」
五百銅貨って事は、五銀貨かな。
気付かれないようにストレージから銀貨を五枚取り出し、おばちゃんへ手渡す。
基本的に前払い制なのだそうだ。未払いで逃げられるなんてことがあるからだろうか?
おばちゃんの名前はホリーさんだ。その流れでホリーさんに部屋まで案内してもらう。
部屋の中は中々に広い。ビジネスホテル並みを予想していたのだが、その倍はありそうだな。
一人なら十分な広さだ。
ベッドに腰を掛ける。荷物は全てストレージに入れているので見た目は何も持っていないのだが、さすがにそれは怪しいので、後でカバンか何かを購入しておいた方がいいな。
そして先ほど購入した衣類をストレージから取り出し、クローゼットへと閉まう。
さっそく衣服を着替える。
着替えるのは何時ぶりだろう⋯いやこの世界に来て初めてか。
思えばここへ来てからずっと同じ服を着ている。しかし、不潔なわけでは断じてない。
しかし、元いた世界のイメージが強いので、いくら清潔とはいえどうしても慣れない自分がここにいる。
着替えはこまめにする事にしよう。
そうと決まれば、もう少し衣服を充実させたいね。
というわけで本日は買い出しデーに決まりだ。街の散策もまだまだやりたいしね。
宿を出て、再び彷徨い歩く。
元来た道とは逆方向へと進んで行くと、今度は剣と鎧が店先に置いてある建物が眼に映る。
武具屋だろうなぁ、きっと。
店の中に入ると、中は割と広い。右側に武器が左側に防具が陳列してあった。俺にはエスナ先生から貰った杖があるので武器に用はなかったが、一応どんなものか見ておこう。
そこには様々な職種の武器が並んでいる。
剣だけでも大きく分けて三種類あった。短剣や通常サイズ、両手剣のような大型の物まであった。
斧や弓矢に杖に本まである。
杖の所で立ち止まった。試しに一番高価そうなのを見てみる。
名前:アルザードスタッフ
説明:樹齢百年以上の大木から削りだされた魔道杖
特殊効果:魔術ダメージ補正(小)
ふむふむと頷き、もう少し詳しく杖を眺めていた。すると説明欄が追加されたではないか!
相場:銀貨八枚
おおおお! 相場が見えるようになったぞ。これは便利だ。悪徳商売に引っかからなくていいじゃないか。なんてことを考えながら、今度は防具の方を見てみる。
戦闘用の服が欲しいんだよね。いつまでも黒ローブ一着というのは流石にね。
うーん、あれだね、たくさんあってどれがいいのか分からない。とりあえず、見た目で判断してみようかな。
ガチガチの戦士系職業がつけていそうなフルプレートアーマーや踊り子が着てそうな危うい物まで様々だ。
そして俺は一着の服の前で立ち止まった。
名前:マジックフォルトダノム
説明:使用者の一定の魔力を蓄えることが出来る。蓄えた魔力で様々な効果がある。
特殊効果:物理ダメージカット(中)、魔術ダメージカット(中)、魔術ダメージアップ(中)
相場:金貨十枚
希少度:★★★☆☆☆
高っ!
あれ、相場と一緒に希少度が見えるようになっている。
MAX星六つに対して三ってことは、中間くらいのレア度なのだろう。
にしても高すぎじゃないか? 金貨十枚って宿屋に何年泊まれるんだよ⋯。
でも効果は中々のようだ。
見た目も気に入ってしまった為に俺は即買いすることにした。
「ま、毎度ありがとうございます!」
店主に大いに喜ばれてしまった。
改めて計算すると、金貨十枚ってことは、宿屋に六年泊まれる計算だ。元いた世界だと大凡一千万円か。
ちょっと奮発しすぎたかとも思ったので、次からは気を付けるかな。次からはね。
俺は気になっていたので、世界樹の杖を見てみた。
名前:世界樹の杖
説明:神樹と言われる世界樹から作られた魔導杖。
特殊効果:消費魔力補正(大)、魔術ダメージ補正(大)、
相場:金貨二百枚
希少度:★★★★☆☆
やはり凄い。でもなぜだろう。いくらでも買える気になってしまうのは。
良くないな。お金は大事に使わないとな。
武具屋を後にして俺は雑貨屋を見つけた。ここではカバンと衣服を何着か購入した。カバンは肩から下げるタイプだ。
怪しまれないように常時持ち歩くようにしよう。
服も試着室で着替える。
選んだ服は、行き交う人を参考に、ちょっと裕福な商人がコンセプトだ。
その格好のまま街の散策を続ける。
今俺の視界の先には、この街に来てからは初めての獣人族が映っていた。
どうやら奴隷のようだな。首に鎖を付けている。荷物持ちをさせられているのか。
主人はアイツだな。
名前:ステルツ・バイゼン
レベル:8
職種:なし(貴族)
スキル:なし
無職のボンボンのお坊ちゃまってところか。エスナ先生が言っていた通り、この街の獣人族はやはり全員奴隷なのだろうか。
そして暫く進むと何やらいい匂いが漂ってきた。
ついつい匂いに釣られ、匂いがする方へ足を運ぶ。
そこには出店が建ち並んでおり、どれも美味しそうな匂いがするのだが、流石に全部は食べられない。
一番近かった物に狙いを定める。ハンバーガーみたいな形をしているパンだろうか。
「お、あんちゃん商人さんかい? どうだ、うまそうだろ? うちのフラムは大陸一だぜ」
フラムって言うのか。
「おじさん、二つ下さい」
「毎度あり! 二つで銅貨五枚ね」
近くのベンチに腰掛けてフラムを食べた。
うん、旨い。これはいけるな。やはり見た目通りハンバーガーのような感じだ。中にはレタスのような野菜にくるまれた何かの肉が見える。肉はなんともジューシーで、齧り付くと肉汁が溢れ出てくる。これならいくらでもいけそうだな。
ペロリと平らげてしまった。残りの一つはストレージにしまっておく。今あまり食べると夜が食べられなくなるしね。
そうこうしていると、段々と空が暗くなり始めていた。迷子になっても困るので、俺は元来た道を戻り、宿屋まで辿り着いた。
宿屋は一階が受付兼食堂となっている。しかし、現在食事をとっている客はいない。
チャンスだな。
ホリーさんにご飯を注文する。メニューには写真がなく、名前だけでは分からなかった為、おすすめということで日替わりディナーを頼むことにした。
待つ事数分。
出てきたのはステーキセットだ。しかもかなり分厚い。何の肉かは不明だが美味しければ何でもいい。
一番驚いたのは米が出てきた事だ。こっちの世界でもあるんだなお米⋯。会いたかったぞ白米!
あとは、野菜だね。サラダが出てきた。ちょっと色がグロテスクだったけど、新鮮なのだろう。シャキシャキしていて美味しい。目さえ瞑ればまんま海鮮サラダだ。
もちろん言うまでもないけど、どれも美味しく頂きました。
ちょうど食べ終わった所に少女がお茶を持って来てくれた。礼を言って、名前を尋ねてみる。
もちろん名前は知っているけどコミュニケーションを取りたいしね。
「ありがとう、俺の名前はユウ。君の名前は?」
「わたしの名前はココナって言います!」
それだけ言い、照れくさいのか店の奥に引っ込んでしまった。なんともしぐさが可愛らしい。
俺は部屋へ戻り、することもないのでベッドに入った。街で寝間着も買っていたので、着替えておく。
明日はギルドの任務でも受けてみるか。そんな事を考えながらいつのまにか眠ってしまっていた。
夢の中で確かに聞こえた気がした。
「⋯願い⋯け⋯⋯。私の⋯界を⋯て⋯守⋯⋯」
木漏れ日に眩しさを感じ、目を開けると外はすっかり朝になっていた。うーん、何か声が聞こえたような気がしたんだけどな。夢だったのか?
よし、今日も張り切って行こう。
ベッドから降りて寝間着を着替える。とりあえず戦闘スタイルではなく商人スタイルだ。
一階に降りてココナちゃんに朝食を依頼する。「ラジャー!」と額に手を当てて店の奥へと消えていく。
暫く待って出てきた朝食をペロリと平らげ宿屋を出る。
今日はギルドの任務を受けてみようと思ったのだが、それは昼からにする。
先に街の散策の続きをする事にした。
この王国は全体としては丸型の作りになっているようだ。
俗に言うドーナツ形状だな。で、ドーナツの外円部分が俺達のような一般人? が利用する場所になっているようだ。ドーナツの中心部分には王宮が建っており王宮を中心に貴族街が広がっている。昨日は中心部まで行けなかったので今日行ってみる事にする。門前払されそうだが。
案の定門前払いされてしまった。三十分も掛けて歩いて来たっていうのに。貴族様にコネでもないとどうやら中に入る事すら出来ないようだ。
エスナ先生にもらった首飾りを見せれば入れたかもしれないが、まだ今はその時ではないだろう。
中に入るのはあきらめて反対側の街の散策をする事にする。
少し行くと、外から見ても異様な気配を醸し出している建屋が見えた。そこまで大きな建屋ではない。気になって中に入ってみる。
中には魔導具と呼ばれる不思議道具が所狭しと並んでいた。どうやら魔導具ショップらしい。店主に聞いてみたのだが、魔導具というのはそのほとんどがダンジョンから発掘された物らしい。
一部は作成された物もあるらしいが。
ダンジョンなんてあるんだね。
それにしても魔導具の効果というのもピンキリのようだ。単純に音が鳴ったり光ったりするだけの物もあれば、自身のステータスを上昇してくれる物まであった。
今見ているのは⋯
名前:ブリックリング
説明:即死のダメージを負った時に一度だけそのダメージを肩代わりしてくれる。
相場:金貨百枚
希少度:★★★★☆☆
すごい効果だな。しかも高い⋯。こんなの一般人が買えるのだろうか?
「それがお気に召したのかい?」
俺に声をかけてきたのは、妙齢の女性だった。
全身黒一色でローブを羽織っている。
一応金額を聞いてみた。
すると、金貨十枚だと言う。
あれ? 相場よりかなり安いぞ。拍子抜けしてしまった。
どうやら
実際金貨十枚といえば大金なんだが、今の俺は金銭感覚皆無だ。危ない危ない。だけど、一回だけ死を免れるなんて是非手に入れるべきだろう。大金を持っていても死んでしまっては意味がない。
俺はこのリングともう一つ水道の蛇口のような魔導具を購入した。
見た目の通り、魔力を込めるだけでこの蛇口から水が出てくるのだ。
俺としてはものすごくいい効果なのだが、どうも魔力効率が悪いようで、熟練の魔術師でも一分間も使用すれば魔力が空っぽになってしまうそうだ。
というのもあり、安かったのだ。といっても金貨十枚だったんだけどね。購入してから試したが、俺の場合は一分間使ってもほとんどMPが減ることはなかった。
よし、当たりだな。購入した魔導具をバッグに入れるフリをしてストレージに回収する。
店を出て、少し歩く。すると今度は重装備の団体さんが前をゾロゾロと歩いていた。
なんだろうと思い、近くにいる人に聞いてみた。
どうやらあの団体さんはこの王国の騎士団らしい。剣士ギルドとはまた違って、王国専属の騎士団なんてものがあるらしいが、どこかへ遠征にでも行くところだろうか?
討伐か何かだろうが、レベル帯を確認してみると二十後半から三十前半だった。
たしか戦闘職でいう上級者レベルだったはずだ。
目的が気にはなったが、団体さんとは進行方向が違うため、見送ることにする。
お勤め頑張って下さい。と心の中でエールを送ることも忘れない。
道中、いくつかのギルドを発見していた。興味はあるが今でなくても良いので同じく先送りすることにした。
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