リオン
空に浮かぶ真ん丸い月を見上げる事が好きだった。
澄んだ空に浮かぶ綺麗な月と、きらきらと輝く星を見上げる事が好きだった。
だけど、いつからだろうな、空が淀んで星が見えなくなったのは。
いつからだろう?
ちっとも月が綺麗に見えなくなったのは。
月には生き残る為に移住した人間が住みつき、地球にはロボットと、月に移住できなかった人間と、改造人間を作る研究員と、改造人間が残された。
ロボットと戦って、地球に平和を取り戻す事が改造人間の戦う理由らしいんだけど、俺から言わせてみれば、そんな事はどうだって良い。
地球上からロボットが消えた後には改造人間が残る。
人間は改造人間をも滅ぼそうとする。
そうやってロボットを徹底的に排除した後は何をする?
人間がより良く暮らす為にロボットを作るんだろう。
何十年、何百年……それとも数年か、地球上には数え切れないほどの機械が生産される事になるのだろう。
生きる為にはなくてはならないほど、身近な存在になるだろう。
そうなった後は?
もっと高度なロボットを作る人間が出る筈だ。
で、結果的には再びロボットが出来上がる。
長い時間をかけて同じ事を繰り返すだけの馬鹿が月にはわんさかと暮らしてるんだから、月が綺麗に見える訳がないんだよ。
けど、俺は戦うんだ。
ロボットを地球上から排除する為に戦う改造人間達となんら変わりない。
ただ、ちょっとだけ目的が違う。
綺麗だった月を取り戻す為……月から人間を排除するためには、地球を平和にする事が1番の近道だから。
とは言っても、毎日毎日月から何人もの若者達がやってくるから、月の人口はそんなに多くはないと思う。
月から若者がなにをしに地球に来るのか?
そんなの、改造人間になるために決まってるじゃないか。
自分から進んで来るのか、それとも無理矢理か……なんだって良い。
地球に置き去りにされた人間が月に移住するには、相当な金額が必要になる。その金を工面する為だけに施設に売られる子供を大勢見てきた身として、月から来る若者なんか皆箱入りにしか見えない。
まぁ、あっちにはあっちの事情があるんだろうが、知った事じゃないし。
「うわぁああああ!!な、なんだよこれ!なんなんだよこれぇ!」
あぁ、またか。
地球には、自分が改造人間の素材である事を知らされないまま改造される人間もいる。なんの覚悟もなく、ある日目覚めたら突然改造人間にされていた……どれ程の恐怖だろう?全く想像もできない。
酷い事に、それだけじゃ終わらなくて、パニックに陥って暴れた改造人間は「欠陥品」扱いされて即廃棄。
クソだ。
許されるのなら……そんな方法があるのなら、俺はロボットとして人間を滅ぼしたいと思っている。
そうなったら、地球を改造人間の楽園にでもしようかな?
そうすると月が薄汚いままだけど、綺麗な地球を見せつけているとか考え直せば気分は良いかもね。
でもなぁ……改造人間を残す意味はあるのだろうか?
元々は月で育った箱入りが多いんだから、結局の所はクソでしかないんじゃないか?
地球にいた子達は……助けたいんだけどさ、それをどう見分ければ良いんだって話。
「大人しくしろ!」
暴れている改造人間1人どうにも出来ないくせに、研究員様、か。
本当にクソ。
「触るなっ!来るな!あぁあああぁああぁあ」
あの子は、もう駄目だな。
欠陥品扱いにされた事も勿論だけど、精神も壊れて……
ドン!ドン!
ん?
部屋の外からそんな声がして振り返ると、防弾ガラスの向こう側に1人の改造人間が立っていて、何度も何度もガラスを叩いていた。
「どこから来たんだ?」
隣にいた研究員の1人が怪訝そうな表情で改造人間を眺めている。このままだとあの子まで廃棄処分か?
「少し様子を見ようじゃないか」
どうなるのか、どうするのか、少し興味がある。
「ですが……」
廃棄処分にする時は即決の癖に、それ以外の所ではやけに消極的なんだな。
奥の部屋に移動すると慌ててついてきた研究員。ドアが完全に閉まった所で改造人間を室内に招く為のドアを開けた。
「入って良いよ」
マイクを使って声をかけてから数分後にソロソロと入ってきた改造人間は、疲れもせずに暴れ続けていた改造人間に近付いていくと何度も何度も肩を揺らした。
「タイキしっかりしろ!タイキ!」
暴れていた子の名前はタイキというらしい。
名前を知っているという事は知り合いか?いや、単なる知り合いだけなら廃棄される危険を冒してまでここには来ないだろうし……だとしたら兄弟か、友達?
「触るなぁあああ!」
思いっきり腕を振り上げた反動で投げ飛ばされた改造人間は、クルッと回転して壁に足をついて意図も簡単に着地すると、懲りずにタイキの肩を揺らしに向かった。
「大丈夫、俺も改造人間だから。これからも一緒だ」
そう言いながら自分の耳の後ろをタイキに見せている改造人間。そこには改造人間を動けなくする為の制御装置がある。
「なんで……ジュタまで?なんで……なんでっ?」
今度はタイキが改造人間の肩を揺らし始めた。
そうか、あの子はジュタと言うのか。
「前よりも激しく暴れられる体になっただけ。それだけじゃねーか」
なんて前向きで清々しい解釈なんだろう……。
「冗談じゃねーよ……こんな現実、俺は認めない!」
タイキはキョロキョロと室内を見渡し、ガラス越しに俺と目があうとギッと睨んできた。
ここで飛び掛ってきても、俺はガラス越しなのだから無傷だろうし、壁に設置されているトラップのスイッチを押せば電流が流れてタイキのロボット部分がショートする。そうなった時、廃棄が決定している改造人間を研究員達が修理すると思う?
絶対にしない。
あの子達は、ここで終わりかな?
今にも飛び掛ってきそうなタイキの腕を掴んでいるジュタは、タイキと同じような目で俺を睨んでいるけど冷静だった。
「タイキ、頼むから落ち着いてくれ」
2人は向かい合って少しばかり見つめあった後、その場に座り込んだ。
なにか喋っているのだろうけど、ここまで声は聞こえてこない。でも、口の動きを見る限り名前を呼び、大丈夫だと言い聞かせているような感じ。それでタイキも小さく頷き、名前を呼んでいる。
トントンとジュタがタイキの背中をあやすように叩き始めると、タイキは完全に顔を両手で覆って隠してしまった。
泣いているのだろうか?
無理もない……。
すっかりと勢いの消えた2人は座り込んだままで、俺に向けて来る視線はキツイけど襲い掛かってくるような素振りは見せない。
なんとか、大丈夫そうだね。
残った問題は、タイキの破棄を決定してしまった俺の隣にいる研究員の存在か。まぁ、こっちは俺がなんとかするから安心してよ。
「2人共CFクラスだ。さっさと行け」
マイクを通して2人に声をかけると、廃棄だと思っていたらしい2人は同時にキョトンとした表情を浮かべてしまった。それがまた可愛らしくて、こうやって見てると本当にただの人間なんだなぁって……ジュタの言っていた通り、前よりも激しく暴れられる体になっただけって気がするよ。
現実は、ロボットと戦うだけの道具に過ぎない。
ロボットに勝っても、破棄されるだけの未来が用意されているだけ。
残酷過ぎる。
そんな残酷な事を平気でやってのける人間様は、どれだけ立派なんだ?
こんなガラスとトラップに守られてなきゃなんにも出来ない研究員様は、どれほど偉いんだ?
反吐が出る。
研究員である自分自身にも嫌気がする。
「あの2体は普通破棄でしょ」
研究員は、2人が出て行くのを見送った後になって文句を言う。それも俺に直接ではなくて、そこら辺の片付けを始めながら、ぼやくようにブツブツと。
この施設内にいる研究員の多くは、文句があってもその場ではなにも言わず、上層部に直接通報するという形をとる。しかも匿名で。だから、こうしてブツブツでも本音を言う研究員は珍しい。
「ねぇキミ。あの子達はちゃんと大人しくCFクラスに向かった。違う?それの何処に破棄する理由があるのさ」
少し話しをしようじゃないか。
キミの意見を聞かせてくれないか?
ちょっとでも言う事を聞かなかったら破棄する方針をどう思う?
ちょっとでも気に入らなければ破棄するやり方をどう思う?
「歯向かってくる固体は危険。破棄は当然だと思います」
研究員は片付けていた手を止め、俺の目を見てそう答えてくれた。
確かに、生身である俺達は改造人間に攻撃されたらひとたまりもないから、反抗的な固体はその場で処分するという方法も、まぁ間違ってはないんだと思う。だけど、そういう方針であるが故に反抗されているという悪循環になってないか?
それに、なんの説明もなく改造人間にされたら誰だって混乱するだろう。少し取り乱して両手を振り回しただけで歯向かっていると判断する考えが恐ろしいよ。
それなら保護施設や孤児院に、ここは改造人間素材育成施設である。と、説明する義務を負わせるべきだ。その上で自分から改造人間になりたいと名乗り出た子だけを改造するようにすれば良い。
違う?
子供の未来を奪い、改造し、そして戦わせているくせに、その改造人間達への態度はなんだ?何故そこまで非道になれる?
はぁ……本当に、こんな施設消えてなくなってしまえば良いのに。
あ、そうだ。
「ねぇ、頼みたい事があるんだけど」
実に簡単で、単純な事を見落としていたよ。
「この流れで頼み事ですか?」
まぁね、少し険悪だった所で頼み事は不自然だったのかも知れないね。だけど、この場にいるキミにしか頼めない事なんだ。
「細かい事は気にしない。ね、俺を改造人間にしてくれない?」
簡単だろ?
だってキミはタイキをたったの10時間で改造人間にして見せた腕を持っているじゃないか。その腕にかかれば、同時に2体の改造なんて屁でもない筈だよ。
「なにを言って……」
送られてくる子達は容赦なく改造するのに、どうして俺には躊躇するんだい?
「改造人間をもっと知りたいんだよ」
そしてロボットの事も。
人工頭脳を持ったロボットが今なにを考えているのか、なにを思って改造人間と戦っているのか。
人間を実験材料として使いたいのならこの施設が狙われていない理由は?
空を飛んで月に向かわない理由は?
「馬鹿馬鹿しいです!」
そうかな?
「改造人間の研究員が、ロボットの事を知りたいと思ってなにが可笑しい?」
改造人間になりたい……ロボットになりたいと思う事のなにがそんなに可笑しい?
真っ先に月に逃げて行った偉い人間に不信感を抱く事は間違ってる?
改造人間の材料である子達に、詳しい説明もしない施設のやり方に嫌悪感を抱く事は?
自分の意にそぐわないってだけで改造人間を簡単に破棄処分、前線に送った後は修理もしない研究員のやり方に怒りが湧き出して来る事は?
「……本気ですか?」
そうだね。
もういっそ改造人間と言わずに完全なロボットにして欲しいってくらいには真面目だ。
凄腕の研究員に改造される事が決まってから1週間後の事。
終に、その時がやって来た。
手術室には凄腕研究員と俺、そして今日改造人間にされる予定の子が1人。次の手術は24時間後に予定されているから、それまでここには俺達3人しかいない。
2人同時の手術はあまり経験がないらしいけど、たっぷりと時間があるんだから最悪1人ずつの改造でも間に合う。
「本当に……良いんですか?知ってるでしょ?改造人間の扱いが……いかに酷いのか」
あぁ、自覚してたんだ。それを知れて少しだけ安心したよ。
施設の方針さえ変われば、まだ捨てたものじゃないかもね。じゃあ施設は潰すんじゃなくて占拠する?
とは言っても改造された時点で俺も改造人間という道具の1つになるんだから、研究員とトラップに怯える日々を過ごさなきゃならない。
本番は、階級を上げて前線に出てからだ。
戦いのセンスが良ければ飛び級もあるけど、今まで研究員として過ごしていた俺に戦いのセンスがあるとは思えない。
せいぜいテストに落ちないよう努力する程度の事しか出来ないか。
まぁ、前線に出た後の事を考えるには丁度良い時間になりそうだ。
「良いよ。始めようか」
手術台の上に寝転がると、隣の台の上では不安そうな顔をした子が俺の方を見ていて、かなり小さな声で……いや、実際に声は出ていなかったのかも知れないけど、確かに口が“助けて”と動いた。
この子はどうやら無理矢理ここに送られてきたようだ。
助けてあげたいのは山々だよ?でも、無理なんだよ……この台の上に上がった時点で、キミは改造人間だ。もちろん、俺もね。
「目が覚めたら同級生だよ、よろしくね。大丈夫、あそこにいる人の腕は一流だから、失敗なんてありえない」
何処かに不備があっても、それをどうにか出来るまでは手術を止めないんだ。絶対に材料を無駄にしないって目標を掲げてる熱心な研究員だからね。
そんな研究員だから、俺の改造を頼んだんだ。
「怖いよ……」
か細い声で訴えかけてくる子は、終には泣き出してしまった。
「始めます」
そんな事などお構いなく始まる手術。
麻酔が効いて意識が徐々に遠くなる中で、俺はどうにか励ましの言葉はないものかと探して、ポンと浮かんだ言葉をそのまま口にした。
「今よりも……激しく暴れられる体に……なるだけ、だよ……」
スゥっと心地良い眠気に包まれて意識が奥深くに潜り込む。それでも体を切り刻まれている感触?皮膚が引っ張られている感じがある。
痛みは全くないけど、嫌な感覚があって、時々ズルリとなにかが体から取り外されるような……骨に直接なにか打ち込まれるような、ガンガンとした衝撃もある。
これ、途中で麻酔切れないよね?
あー駄目だ駄目だ、妙な事を考えたら本当になる確率って結構高いし、もっと他の事を考えなきゃ……あれ?結構意識ハッキリしてるっぽいけど、これ、本当に麻酔……いやいやだから駄目だって!そうだ、こういう空いた時間にこれからの事を考えるべきだよ。
えっと……。
なんだっけ。
なんだ、まだ意識はボンヤリしてるじゃないか。このまま、このままの状態を維持させよう。
手術が終わった後は傷口が回復する程の時間は眠ったままになるから、今こうして意識が戻りつつあるのは、もしかしたら術後だからって事も考えられるかも?
だとしたら、今感じている嫌な感触が妙だ。
痛くないから大丈夫と割り切って乗り越えるしかないが、麻酔が切れ……ない!切れないよー麻酔なんか全然切れないからねー。
あぁ、もう……意識すればする程麻酔の事が頭から離れないよ。
もっと良い事を考えようじゃないか。
えっと……。
そう、俺は今改造人間になろうとしている所。
もしかしたらもうなっているのかも?
とにかく、目が覚めたらCFクラスで、数字の名前が付けられる。
何番かな?
タイキの名前は確か……NO,1523だっけ。凄いよねー単純に考えたら1523人もの子が改造人間にされたって事だもん。
記念すべきNO,1は誰だったんだろう?
まぁ……誰だかは知らないけど、とんでもない失敗手術だったって事は月にいる人間でも知っているレベルの有名な話し。
世紀の大イベントとして、5人の研究員が5人の子を使って手術をした。
ロボットと戦える救世主の誕生!とか言ってさ、ネットテレビで手術の様子は生放送されたんだ。
放送まで後何日、とか大々的に盛り上げてね。
とは言っても流石に術中の研究員の顔がメインだったし、材料の子達が見えないように手術台には囲いがされてたけど……それでも充分に伝わった筈だ。
あの、酷い有様が。
今でも手術の成功率は100%ではないのに、初めての実験的な手術が成功する訳がなく、5人の子は誰1人として改造人間にはなれずに肉の塊にされた……生きながらにして、少しずつ。
途中からは麻酔まで切れちゃって、そこで生放送は終了。
予定されていた放送終了の時間が来るまで施設案内のPVが繰り返し、繰り返し放送されるという異常な事になった。
放送が終わった後に殺到した問い合わせの内容は、材料となった5人の身を案ずるものではなく、改造人間が完成したのかどうかの確認が多かった。
そこで施設の偉いさんはネット中継で堂々と嘘をついた。
1体は成功した。しかし目覚めるには時間がかかるので数ヶ月待って欲しい。ってね。
目覚めるのに時間がかかるのは事実ではあるが、成功していないものを成功したと発表してしまった訳だから、そこから数日間次から次へと材料の子が無駄に殺され続けた。
こうして始めて改造人間の手術を成功させた研究員が現れる……それが、今俺の手術をしているこの研究員。その手術の成功率は驚愕の100%で、1人として材料を無駄にはしていない唯一の研究員でもある。
そうだったね、キミは凄腕の研究員だ。
安心したら、なんだか眠たくなってきたよ……。
不快な冷たさで目を開けると、そこは薄暗い部屋の中だった。
金属剥き出しの台の上に寝転がされている俺の周りには、同じように台の上で寝ている何人もの……目覚める前の改造人間達がいる。
上半身を起こして少し待ってみるが、特に誰もやってこないし、指示的なものも特にはない。
ここからどうすれば良いのか……元研究員だった俺には分かるけど、その前に確認したい事があって、部屋の中を歩き回って寝ている改造人間の顔を1人1人じっくりと確認した。
いた……この子だ。
同じ日に手術を受けた子。
目覚めたら同じクラスだって声をかけたんだから、一緒にクラス移動したいんだけど、まだ目覚めそうにないな……寝た振りでもして待たせてもらおうかな?
いや……監視カメラには動き回る俺の姿はしっかりハッキリ映ってる筈だから、二度寝したら不良品とされる可能性もある?
この子が目覚めるまで待たせてくれって訴えてみても「反抗した」なんて事にされたら嫌だしなぁ……。
「……なにをやってるんですか?」
しばらくウロウロしていると、部屋の隅にあるスピーカーから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
俺を改造してくれた凄腕研究員の声。
んー……呼び名が長い。こんな事なら名前を聞いとくべきだった。
あ、名前。
「ねぇ、キミ。俺の名前はなにになったのかな?後、キミの名前は?」
タイキが1523だったから……1530くらいかな?まぁ、どんな名前を付けられてもしっくりとはこないんだろうけどね。自己紹介する時がきたとしても本名を名乗りそうだよ。
「777、ですよ。俺の名前なんか知ってどうするんですか?」
思いの他スグに返ってきた言葉には、名乗りませんって明確な意思を感じさせる。
改造人間に名乗ってはいけないって決まりはなかったと思うんだけど?
「まぁ……教えたくないなら良いんだけど、777ってどういう事なのかな?」
NO,1777ならまだしも、何故3桁?数字戻ってるし、無断に縁起良さそうだし。
「この世に誕生した始めての改造人間がNO,17。そこから7の付く改造人間は特別なんです。貴方は、これ以上ないほどの特別な改造人間だから……」
特別、ねぇ……。
その特別扱いが何処まで通用するのかは分からないけど、多少の事では廃棄処分にならないって考えても良いのだろうか?
いいや、改造人間になったんだから、研究員に何も期待しない方が身のためだろう。目立つ行動は極力とらない……NO,777の時点で物凄い注目度だろうけど!
「……ここは……」
すぐ隣から物凄く小さな声がしたので隣を見ると、同級生の子が目を開けていた。
良かった、これで一緒に移動出来る。
「おはよ。具合はどう?あ、この子の名前は?」
天井に向かって声をかけるがさっきのような返事はなく、代わりに、
「NO,777、NO,1531、CFクラスに行け」
とかいう形式的で、硬い声が聞こえてきた。
ウィーンと開いたドアを抜けると、殆ど1本道で食堂に辿り付く。
ここを真っ直ぐ行けばS級クラスがあって、斜めに向かえばA。Bは向こう側の通路の右奥で、Cは向こう側の通路の左奥。食堂には分かりやすく看板が立っているから、始めて来る子でも迷子にならずにクラス移動が出来るようになっている。
Cクラスに向かい、そこから更にF~Sのクラスに分かれるんだけど、それも迷わないようにとちゃんと矢印が付いている。
こうして全く迷う事もなくCFクラスに到着した俺達は、早速体力テストを受ける事になった。
1531君は月育ちで、俺は地球育ち。たったそれだけだというのに、体力にはかなりの差が付いた。
月で育った子達は重力の関係でヒョロリとしている事が多くて、筋力が低いんだ。だから、ただの研究員だった俺でもCFクラスでは体力のある方という可笑しな事になった。
これなら、改造人間になるべきは地球にいる研究員達……なんて声に出したら廃棄かな。
まぁ、俺が体力で上位に立っていられるのも始めのうちだけなんだろうけどね。
テストに落ちないようにと結構必死に授業を受け、そこそこの成績を記録して進級したBBクラスに。ちょっと場違いな人物を見付けた。
タイキと、ジュタだ。
可笑しい……進級テストは1ヶ月に1回で、あの2人がCFクラスになったのは少なくとも1年は前の事になる筈だ。仮に1年としてテストが12回……元研究員だった俺でも難なくここまで進級出来たテスト内容が、この2人にとっては合格出来ないほどの難問だった?
そんな筈はない。
だったら何故BBクラスにいるんだ?BCクラスへのテストから急に難しくなるのだろうか?
もしかしたらBBクラスからは、ここまでの基礎的な授業内容からガラリと実践的な内容に……
は、ならなかった。
多少厳しくなった程度の、基礎体力をつける為の運動でしかないが……自分のロボットの部分を使わないと目標には至らない位の絶妙な難易度ではある。
タイキとジュタはロボットの部分を使いこなせていない?
クラス1位2位の実力保持者がそんな訳がないじゃないか。
まさか、わざとテストに落ちている?にしたって理由が分からない。
こんな施設なんかで暮らすより、外に出たいとは思わないのだろうか?
そりゃ前線に行く事にはなるんだけど、ここにいるよりは自由に動ける筈だ。
そこで俺はロボット側と話し合いをしようとしてる。
無謀かな?
いいや。ロボットには人工知能が付いてるんだ。それも人間よりももっと、もっと高い知能が。
落ち着いて話しがしたいと訴えたら、もしかしたら聞き届けてくれるかも知れない。
まぁ、無理なら無理で良いんだけど、ロボット側がなにを思って戦っているのか……それを知りたいんだ。
改造人間と同じで「戦え」と言われたから?
じゃあその「戦え」って言ったモノは誰?
知りたいな……会ってみたいな……出来る事なら、一緒に戦いたい。
「ふふ」
楽しみでしょうがないよ。
いや、そこに至るまでの作戦なんか特にないんだけどね。
前線に出るまでの時間で考えようって思ってたけど、予想以上に授業が大変で考え事をしてる余裕がない。唯一の自由時間は食事休憩の数時間だけ。後は睡眠時間だけど、疲れてるから寝付きが異常に良い。
そんな訳で貴重な考える時間が、BBクラスにいるタイキとジュタのお陰で1回分吹き飛んでしまった。しかもだよ?変な笑い声付きでさ。
じゃあこの食事休憩1回分の時間いっぱいタイキとジュタの事を考えようじゃないか。
えっと……。
んー……。
既に考え尽くした感があるね。
そうやって特になんの作戦も生み出せないまま進級テストの日が訪れ、俺はまたそこそこの成績で進級した。しかし、タイキとジュタはBAクラス内にはいなかった。
授業内容の方がキツかったあのテストに落ちるなんて、普通にしていたらありえないから、やっぱりわざと落ちてるんだな……。
なんの為に?
あぁ、それを本人に聞けば良かったかな?
まぁ、今更だし、そこまで興味もないし。
以前の2人になら話しを聞こうって思えたんだろうけど……あんなやる気なさそうなアウトローになってしまっているなんて、ちょっとショックだったよ。
前よりも激しく暴れられる体になっただけ……そう言っていた前向きな子は一体何処にいってしまったんだろう。
研究員からの仕打ちが酷いから?
だったら尚更進級して前線に出たいと思うんじゃないだろうか?
人間の為に戦いたくない?
それなら……納得出来るかな?
じゃあそういう事にしといて、あの2人を思うのは終わりにしよう。
必死になって授業に付いて行くだけしか出来ない時間は、長くて短く、アッと言う間に最後のテストを受ける事になってしまった。
テスト内容は、会いたい人の名前を書け。
この質問は、今まで受けたどのテストよりも難問だよ。
最後に俺を改造した凄腕研究員に挨拶したいけど、名前が分からないし……あ、それで名前を教えてくれなかったのか。
なんだよ、挨拶くらいさせてくれたって良いのに、随分とケチなんだな。
じゃあ、誰の名前を書こう?
地球出身だし、家族はとっくにいないし、親しくしていた人も特にいないし……第一人の名前なんかタイキとジュタくらいしか知らない。その2人だって改造人間だから、この紙に名前を書いた所で会わせてくれたいだろうし、会った所で言う事もないし。
んー、困ったな……。
該当者なしっと、これで良いか。
翌日、他の改造人間達が会いたい人との面会をしている時間、俺は1人前線に行く為の戦車のようなゴツイ車の中で待機する事になった。
訓練もなにもない、ただただ自由な時間。
しかも車の見張りは居眠り中の運転手と、暇そうにしている武器を持った兵士?が1人だけ。
逃げるなら今?
だけど前線に出てしまった方がロボットと交渉する切欠は多い?
いや、戦いが繰り広げられている場所じゃあ話し合いが出来るような雰囲気になんか絶対にならない。
なら、今?
今だよね。
座席から立っても運転手は居眠りを続けたままだから、外にいる兵士に気が付かれないように運転手を車から押し出した。
「なんだ!?」
流石に起きたみたいだけど、もう遅い。
エンジンをかけてゲートを目指し、そこで止まるように手を広げている人間に構わずアクセルを踏む。
ガシャガシャーン!
ゲートを突き破るように車は突き進み、後ろからは警報機の音が聞こえてくる。
やった、脱出成功!
後は捕まらないように遠くまで逃げるだけなんだけど、改造人間の脚力は、この車より早いよ?
絶対に捕まらない。
「あはははっ♪」
あぁ、浮かれてる場合じゃない。
問題はここからどうやってロボットに接触するか、だ。それと、住む場所と食料。
車の中には非常食が3日分×卒業生分あるからなんとかなるとして、住む場所……この車の中は快適だけど目立つしな……。
目立って良いのかも?
いやいや、ロボットに見付けさせるには良いけど、人間に見付かったらマズイ。何処まで行けば安全かは分からないけど、真っ直ぐ進むしかないか。
崩れかけたビルの間を抜け、ボロボロになった道路を進み、苔のような緑が見えてきた所でガソリンが切れた。
残った食料を持って車を降りてみても周りには崩れかけた建造物があるばかりで、特に面白いものはない。
「ロボットさんやー、いないのかなー?話しがしたいんだけどなー」
反応なし。
来る方向を間違ったかな?
でも、戻ってもどうしようもないから更に真っ直ぐ進みながら、あまりまとまらない考えを練る。
ロボットに遭遇した時に攻撃を受けないようにするにはどうすれば良いのか、こんな大事な事すら決まってないんだからどうしょうもない。それなのに全く恐怖感がないのも不思議な話しで、これだけ歩き続けているのにちっとも疲れないのも可笑しな話し。眠気すら出て来ないんだよ。
なんならスキップで進んじゃうよー♪
「ん?あれはなんだろう?」
歪な形ばかりだったビルの形からして、かなり不自然なソレはかなり綺麗な円形状の建物だった。しかもかなり大きい。
周りにある建物の状態と比較しても、コレはかなり新しい。
施設から遠く離れた場所に、こんな巨大な建造物を作るのは人間には難しいだろう。
そうすると、ロボットが建てた可能性は高い!
今こそ言うべきだ!
「ロボットさんやー、いないのかなー?話しがしたいんだけどなー」
さあ、どうだ?
返事はないけど建物の中からは物音が聞こえてきて、突然上から視線を感じた。
見上げてみれば建物の上になにか……いる?
「改造人間か……」
遥か頭上にあるなにかが発したにしては妙に近くから聞こえてくる声は、ロボットの声らしくて妙な金属っぽさを感じる。
やった、当たりだ!
目的があれば、肯定がどうあろうともなんとかなるもんだね!
「聞きたいんだ。ロボットは何故人間と戦うのか」
他にも沢山聞きたいし、喋りたいし、意見を聞きたい。
あぁ、でもどれからどう話せば良いんだろう?
「おしゃべりの前に、改造の時間だ」
え?
なに?
今、改造って言った?
建物の上にいたモノが落ちてくるように隣に立った瞬間、そいつは俺の耳の後ろにある制御装置を起動させた。
担ぎ上げられた俺は、そのまま円形状の建物の中に案内されて……意識が、薄れて……。
あれ……意識が戻る?
俺はロボットによって改造されるんじゃなかったっけ?それとも事後なのかな?どちらにしても、今の所は殺されてはないらしい。
なんだ?
近くになんの気配も感じられないから思い切って目を開けると、大きなレンズの付いた天井が俺を見下ろしていた。
この部屋自体が1体のロボットの中?
変な動きをすれば一瞬で殺されそうだけど、都合が良いのか悪いのか俺の制御装置は解除されてはいな……
ん?
「あれ?」
両手が、動く。
手だけじゃなくて、足も、首も、全身が自由だ。
意識を失っていた間に解除されて……
「えぇ!?」
何気なく耳の後ろに手をやって覚えた違和感に慌てて起き上がって、今度はゆっくりと確かめるように耳の後ろを探ってみるが、やっぱりそこにはなかった。
ない?
いやいや、可笑しいからね?あれがなかったら俺がこうして動いてる事もありえないんだけど?
どういう事?
「聞きたい事がある……」
巨大なレンズのある天井……に設置されていたスピーカーから、外で聞いたあの金属っぽい声がした。
だけど、聞きたい事があるのは寧ろ俺の方だ。
俺の制御装置をどうしたのさ!?どうなってるんだ!?
いやいや、落ち着け……まずは深呼吸だ。
折角向こうから話しかけてきてくれてるんだから、大人しく話しを聞こうじゃないか。その後からなら少しでも俺の質問に答えてくれるかも知れない……待てよ、話しが終わった瞬間攻撃を受ける可能性だってあるか……。
だったら、
「俺に分かる事なら答えるよ。それと……俺の制御装置はどうしたの?」
答えるのと同時に質問をぶつけよう。
「弱点を設置する意味がないので外した。質問だ、お前は何故ここへ来た?」
制御装置の事を知っていたとは。
これまでに倒した改造人間を分解なりなんなりしてデータを取ったのだろうか?
しかし……ここはロボット側の本拠地じゃないのか?そんな所へ改造人間を招く理由はなんだ?話を聞く為なんだろうけど、だったら制御装置を外す意味は?
ロボットと改造人間は敵同士だよ?俺が急に暴れ出すとか、そんな可能性は考えなかったのか?
まぁ、この部屋の中で可笑しな行動をしようものならあちらこちらから攻撃されるんだろうし、俺に施された改造は制御装置を外す以外にも色々あるんだろうし……。
「ロボットと話をしてみたかったんだ……で、人間を実験材料にした理由は?」
まさか、こんな話し合いになるとは思ってもみなかったけどね。
「人間を実験材料に?した覚えはない。私にそれは必要がない。人間を材料にして得られる結果に、意味もない。話しをした後どうするつもりだ?帰られるとは思っていないのだろう?」
人間を実験材料に使ってないって、どう言う事だ?
ロボットなのに人間を使ってなんのデータを取るんだろう?って昔から疑問には思ってたけど、まさか、本当に?
いやいや、人口は確実に減ったんだから実験材料にしてなくてもなんらかの理由で殺したんだよな?そうでなければ戦う理由というか……切欠が分からない。
少なくとも戦争が起きた後の世代は皆ロボットが人間を実験材料に選んだから戦いが始まったって教えられてる。
教科書にそう書かれてあるんだから、疑う事もなくそうだと覚えたし、テストにもそう答えて合格をもらってるんだ。
「じゃあ、人口が減った理由は?実験材料にしたからじゃないならなに?俺は脱走してここに来たんだから、帰られたとしても帰りたくないかな」
ロボットと話しをした後はあの施設を壊す。って事しか考えてなかったから、俺は随分と楽観的だったんだなって、今更ね。
それで実際にここまで来たんだから凄くない?
「実験材料にした覚えはない。“新型ウイルス”に蝕まれた人間が死んだだけ。帰るつもりがないのなら、どうするつもりでいる?」
新型ウイルス?初耳だ。
人口が減った理由と、戦いが始まった理由を“ロボットが実験材料に人間を選んだから”と教えられてきた俺にとっては信じられない話だし、新型ウイルスが流行った事すら知らないんだから信じようもない。
人口が減った原因、今まで教えられてきた“人間を実験材料”を信じるのか、ロボットが言う“ウイルス”を信じるのか。どちらを選ぼう?
いいや、嘘かも分からないような教えを鵜呑みにするのは止めだ。切欠がどうあったとしても戦争は始まってる訳だし、今更真実を解いた所で終わる訳じゃない。
それよりも、俺の目的はなんだったのか思い出せ。
「俺は改造人間を作ってるあの施設を壊す事が目的」
そこに至るまでの途中経過はまだ決まってないけど、まずは仲間集めかな?
前線に行って何人かスカウトしても良いし、施設に忍び込んで破棄寸前の子達を貰って来ても良いかもね。
あぁ、そうすると制御装置の外し方を教えてもらわなきゃならないな……それとも、制御装置を外せる知識を持ったロボットを仲間にするか。
「お前も人間だろう?何故人間が不利になるような事をする?」
何故って……。
「人間だからって理由だけで、人間を好きにならなきゃいけない?」
綺麗な月を奪った連中で、改造人間の材料にするって理由で人間を売買するような連中で……改造人間達を物扱いするような連中。
中には良い人間もいるんだけど、極々少数だ。
「しばらくお前の様子を見るとしよう。3体の見張りを用意した、自由にしろ」
自由にしろと聞こえた直後に部屋の入り口が開き、俺の見張りだとかいう3体のロボットが入ってきた。
3体は無言のまま俺の腕を引っ張り、物凄い力で外に連れ出そうとしてくるけど、最後にもう1つだけ聞きたい事が残ってるから、天井のレンズに向かって声をかけた。
「俺はNO,777。アンタの名前は?」
自己紹介は基本でしょ?
「マザー」
ガシャーン。
名前だけの簡単な自己紹介が終わり、慌しく外に引っ張られるがまま歩いて行くと、そこは円形の建物の屋上部分で、屋上に出た瞬間扉は音を立てて閉じてしまった。
マザー……ロボット達の母親?司令官、かな?声だけだったけど直接ロボット側のトップと喋っちゃったよ!良く生きて帰されたな俺!
あ、そうじゃなかった。
しばらくは様子を見られるんだっけ?
「ね、君達は制御装置の外し方を知ってるのかな?」
3体のロボット達からの言葉はないけど、随分と得意げに両手を挙げている子が1体。
なんだろうか……凄く可愛い。
これからどうなるのかは良く分からないし不安もあるけど、なんとなく楽しい日々になりそうだよ。
本拠地として使えそうな建物を見つける為に地上を歩き回り、その序に“新型ウイルス”の証拠探しを始めて丸1日。
崩壊しそうなビルの中で見付けた雑誌や新聞の中に、気になる記事が載っていた。
「ロボットが仕掛けた生物兵器か!?だって……ウイルスってこれの事?」
見出しを声に出しながら3体のロボットの方を見るが、やっぱりなんの言葉も発しない。それでも首を傾げてたり、顎?部分に手を添えたり、腕を組んだりしているから答えは知れる。
生物兵器か……人間を実験材料にって話はここに由来しているのかも?それにしても、本当にウイルスが存在していたとはね。ロボットが仕掛けた生物兵器だったなら“新型の生物兵器を使って人口を減らした”って教科書に載っていただろう。だけどそうにはならなかった……もしかしたらウイルスの種類の特定に至っていたとか?
そうだとしたらワクチンの開発だってされた筈。
予防接種を受けた者だけが月への移住を許されたというなら、地球に多くの人間が残された事の説明にもなる。
でもな……改造人間が月に住む家族に面会したいって言えば前線に出る前日、月に行く事が許される。新型ウイルスに感染しているかも知れないのに、接触させて大丈夫なのか?あ、そうか。月では予防接種的な事が定期的に行われているのかも。
にしても、予防接種も受けてない改造人間達が大丈夫な理由は?
強化されてる部分以外は生身なんだから、ウイルスに感染したって可笑しくない筈だ。
けど、ジメジメとしている上に高温になる夏場を何度も乗り越えたウイルスが、感染力を保ったまま存在する事は可能だろうか?
根絶していると考えた方が自然だよね。
人口減少が新型ウイルスのせいだった……ちょっと信憑性が出てきたものの、ウイルスが流行っただろう時期が少しばかり昔過ぎる。
俺が5~6歳の頃に改造人間第1号となる手術は行なわれてるんだけど、ウイルスの事が書かれているこの新聞の日付は俺が生まれるよりも前だ。
人口減少をロボットのせいにして、そこで戦いを始めたとするなら、改造人間が作られる前はどうやって戦ってたんだ?
人類を月に移住させる事に力を入れていた?
まずは主要な人間を非難させてから戦いを始めた?
新聞を眺めながら色々と考え込んでいた頭を起こし、暇そうにしている3体を見ると、途端にピシッと整列するから、なんか一気に和んでしまった。
「本拠地は緑が多い所が良いね」
声をかけると3体が夫々頷いたり、両手を上げたり、拍手?するように手をガンガンと鳴らすから、更に更に和んで、終には笑ってしまった。
過去がどうだったとしても、俺が人間を好きになる事はないのだろうし、あの施設を壊したいと思う心は変わらないのだろう。だったらウイルスの事をこれ以上調べる必要はないのかも知れない。
過去を色々想像するより、これからの事だよ。
本拠地を見付けた後の事……仲間集め!
前線に行って改造人間をスカウトって言っても俺は戦線の場所を知らないから、施設に行って破棄寸前の子を誘拐するしかない。
正面は警備が厳しいから、狙うは破棄場。
破棄場は建物の裏側にあって、警備も手薄。部品取りされた後の子が多数を占めているものの、中には研究員に歯向かっただけで破棄にされる子もいる。そんな子は制御装置を起動され、体中の部品がリサイクル不可能になる程散々な目に遭わされた後、そのまま廃棄用のカプセルに詰め込まれる。
狙うは人間部分がしっかりと生きていて、尚且つ部品の損傷も少ない、そういう子。
歪んでしまった部品の交換や、制御装置の取り外しは安心して任せてくれて良いよ。俺の所には改造得意な子が、得意げに両手を上げて待機しているからね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます