ガドル

 ここは月に作られた最後の楽園都市。

 地球では人が作り出した機械と、半分だけ機械にされた人間との戦いが10年以上も続いている,

 いわゆる改造人間というやつだ。

 改造人間は月に住む人々にとっては救世主として称えられているが、実際改造人間の材料は第2次成長期を終えたくらいの子供である場合が多い。

 ここ、月の物価は高い。それ故、生活に困った親達が自分の子供を泣く泣く材料として政府に売る……いや、喜んで差し出している親もいるし、誘拐した子供を自分の子供だと偽って売る凶悪犯罪も珍しい事ではない。

 政府は人材を集める事を目的にして物価を高くしている訳だから、売られて来る子供にはかなり良い値段が付けられる。

 そうして売られた子供は一旦地球に送られ、基礎テストを受けさせられる。

 適応すれば改造人間に、適応しなければ月へ送り返される事になる訳なのだが、戻された子供が家に帰れるケースは0%に近かった。

 子供が家に戻るという事は、政府から受け取った報酬を返還しなければならないと言う事……。

 大概の子供は親に見捨てられ、親達は少しばかりの金額を支払い、適応テストへ合格させる為の強制施設に子供を送る。

 施設が嫌で逃げ出す子供も少なくないが、行く所はおろか食べる物にも困り、自ら施設へ戻って行く。

 しかし、まれに路上生活に適応してしまう子供もいる。

 政府からも親からも邪険に扱われた子供達は皆死んだ魚のような目をしていて、ただ生きる為に犯罪を犯したり、体を売って金を稼ぐ……。

 そんな子供達を保護するのが俺の仕事だ。

 政府からの寄付金と、極々一部の金持ちからの寄付、子を改造人間にしたい親達からの授業料がもらえてるから経営はまずまずって所かな。

 俺は保護施設の“お父さん”をしている。

 一応民間施設なので、保護した子を無理矢理地球に送ったりはしていない。だが子供の面倒を一生見るって訳でもなくて、親が引き取りに来るか、自分の意志で地球に行くのか。そのどちらかの展開になるまで見守る事しか出来ないのが現状。

 他にもっと子供の選択肢を増やしてあげたいのに、それが出来ないでなにが“お父さん”だよ……。

 今はただ……子供達が夢について話してくれれば、夢を持ってくれれば良いな。と思うしかない。

 「ガドルさん、2丁目に例の子が目撃されています」

 急に名前を呼ばれ我に返った俺は、上着を手に施設を飛び出していた。

 “例の子”とは、保護しても結局逃げ出してしまう子の事で、きっと俺の施設の本質を見抜いてしまっているのだろう。

 でも、だからって見逃す訳にはいかない。

 「またお前か」

 路上で倍以上も歳の離れた男と歩いているその子を見つけた時、その子はもう稼いだ後で、次の約束をしている最中だった。男は俺の姿を見るなり逃げて行き、俺は俺で追わなかった。

 こんな時代、送り返された子供の人権そのものが危うい。

 そんな中、子供を買ったという理由だけで裁かれるなんて事はかなり珍しい。なので、逃げた男を捕まえた所で、逆に俺の方が暴行か名誉毀損かで起訴される可能性まである。

 子供を買った大人が逮捕される事例も中にはあるが、それは買った後で殺害した場合に限られている。

 「それはこっちの台詞だ。何度逃げ出したって無駄だからな」

 「……なにソレ告白?だったらアンタが俺を買えよ」

 荒んでいる。

 笑顔を見せてくれている筈なのに、その表情は荒んでいた。

 この子はどうして自分の体を売ったりするんだろう、そんな事してまで路上生活する意味は?

 改造人間にされるからに決まってるだろ……。

 「分かった、キミを買おう。施設に1日いるだけで2ゴールド。どうかな?」

 子供とは思えない程の笑みを見せていたこの子は、俺の言葉に目を丸くさせた。

 金額が2ゴールドで安い事は知っている。でも、住む所を提供すると言っているのだから断る理由がないだろう。

 「……地球に送ったりしないか?」

 「そうだな……キミが俺を絶望させなきゃいつまでも側に置くよ」

 我ながら悪趣味な勧誘だとは思った。

 でも、こうする他にこの子を救う手が思いつかなかったのも事実だ。

 「俺は……ルル。ウソじゃ……ないよな?1日2だからな?」

 「ハイハイ。俺はガドル。って、知ってるか」

 俺の朝はまだ日が昇らないうちから始まる。

 6人に増えた子供達と2人の従業員、俺を入れて9人分の食料調達、医療品の確認と、衣料品の確認、生活用品の確認、路上生活している子がいないかのパトロール。

 ここまでを朝食が始まるまでに行わなければならないからだ。

 朝食が終わったら昼食まで子供達の世話とパトロール、昼食後には1日1回欠かさず強制施設の視察をしに行く。

 夕食後には反省会を子供達、従業員のそれぞれと行い、もちろん車やバイクのメンテナンスも怠ってはいけない。

 そうそう夜のパトロールも忘れずに……毎日この繰り返し。

 たまに政府からお偉い人が来て視察していくし、民間施設だから市民が見学に来る事もあるし、著しく態度の悪い子供を抱えた強制施設から子供を引き取って欲しいと頼みに来る事も。

 ハァ――……考えただけで疲れる。

 「どーしたんだよ朝から。しっかりしろよな」

 急に背中を押され、バランスを崩してバイクにもたれ掛かる。

 こんな朝早くに誰か起きてきたようだが、この声は……

 「やぁルル、おはよう」

 「何処行くんだ?」

 挨拶無視かよ。

 「今から皆の食料調達の為市場に行くんだ」

 食料を持って一旦戻った後は薬屋行って、クリーニング出して、衣服の調達に広場まで行って……。

 そうそう、パトロールも。

 「俺も行って良い?」

 「駄目。ちゃんと部屋で大人しくしてるんだ」

 「えー、折角早起きしたのに暇じゃん」

 「暇なら本でも読んでなさい。いいな?大人しくしてろよ?」

 まだ誰も起きてないし、別に連れて行っても良いとは思うんだけど、子供の外出は昼間だけで監視付きにのみ許可する。って決めたのは施設を作った頃の俺自身だ。

 ルールを作った本人がルールを破る訳にはいかないよな。

 それに、1度許してしまえば次々と要求されて俺が舐められてしまう。

 礼儀作法とかそこまで完璧にする必要はないと思うが、せめて団体生活に対応出来るぐらいのマナーとモラルを持った人間に育ててあげたい。

 と言った所で子供達には通じないんだろうけど。

 「ガドルのケチ!」

 ルルは子供らしい言葉を叫ぶと、走って施設の中へ戻って行った。

 アレ?この子ってこんなに聞き分けの良い子だったっけ?

 そう考えた俺はスグに1人で納得した……“キミが俺を絶望させなきゃいつまでも側に置く”そう俺が言ったからだ。

 「早く帰って来いよ?」

 突然上空から聞こえた声に見上げると、窓から身を乗り出しているルルが俺に小さく手を振っていた。

 それに答えようと手を上げた途端、腕時計が示す時間に我に返る羽目になった。

 あぁ~!朝市の時間が終わってしまうっ!!

 「ガドルさん今日は遅かったなぁ~。残してますよ!」

 朝市の時間には間に合わなかった俺だったが、いつも仕入れている店が俺の分を残しておいてくれたお陰でなんとか確保は出来た。

 「サンキュー。また頼む」

 取り置きのお礼として金を余分に払うと、店主は申し訳なさそうな顔をした。

 余分に払うお金の口実なんてのは、実はどうだって良いんだ。

 本当なら毎朝こうして買い付けに来なくても、食料を配達してもらいたい所ではある。実際それで服屋と衣料品店は注文さえしておけば翌日には施設まで品物を届けてくれる。

 もちろん宅配となればその分送料として多めに支払いをする事になる訳だが、パトロールの時間が増やせるのなら送料なんて些細な出費。

 しかし、数件のお店では頑なに施設への配達を拒む所がある……この店主もそのうちの1人。

 理由?

 俺が預かっている子供の1人が、ここの子供だから。

 親が子供を迎えに来ないのは、政府へお金を返還出来ないからだ。だからこうして余分にお金を支払い続ければ、いつかは返還分の金額に届き、子供を迎えに来てくれるんじゃないか……。

 それで生活用品店からは出禁を受けてしまった。

 配達も断られ、お店にも行けないので、生活用品の確保は従業員に任せるしかない。そうだ、それで歯磨き粉に塩が入ってるやつは辛いから止めて欲しいって要望がちびっ子から出ていたんだっけ。

 朝の仕事を時間ギリギリでこなした俺は、今日のプランが書かれた資料を確認しながら朝食を取っていた。

 今日は政府のお偉い人が見学に来るし、市民の見学まで重なってるからいつもより気合を入れないとな……。

 俺がしっかりしないとって思うんだけど、どうしたって緊張してしまう。

 可愛い子供達を政府の奴が気に入って地球に送ってしまわないか……お偉いさんの機嫌を損ねて援助金を打ち切られてしまうのではないか……なんて。

 本当にしっかりしろよ俺。

 この施設は保育園じゃないんだぞ?

 今はまだ強制施設へ行く為の足掛かりでしかないんだから、政府の奴に気に入られて地球へ送られてもそれは名誉ある事。

 それに、援助金が打ち切られる事もない。

 ここから強制施設へ入った子供は……ほとんどが適正テストを合格し、改造人間にされてるんだから……。

 この施設は、政府の奴らに高く評価されている。

 俺が目指したのはこんなのじゃないんだ!

 だけど、分かってる。

 地球では今、機械と改造人間が地球を奪い合う戦争をしているんだという事実を。

 ここで負けてしまったら月にも機械達はやって来て、そのうち人間は絶滅するだろうという現実を。

 どうしようもない。

 「それじゃーガドル君、また来るよ」

 見学会は俺が心配していた事はなに1つ起こらないままに終わった。

 それに政府のお偉いさんは子供達ではなく俺を見ていたようだから、ある程度の事は誤魔化せたし……全く、後でルルと反省会だ。なんでボールをわざわざお偉いさんに向かって投げるかなぁ?ドッジボール中だったから“この人は参加者じゃないよー”との言葉で市民見学者の笑いは取れたからよかった(?)ものの……。

 本当はすぐにでもルルとの反省会を行いたかったが、パトロールを疎かにする訳にもいかず、結局反省会が出来たのは夜、消灯時間少し前だった。

 「で、なんでボールを投げたんだ?」

 ルルは何故俺が部屋まで来たのかが分かっていたようで、そう尋ねるとスグに反応を返してきた。

 「気に入らなかったからだ」

 と。

 「いくら気に入らないからって、いきなり攻撃するのは良くない。それは分かるな?」

 気に入らないってだけで攻撃出来るんなら、俺はもうとっくの昔に政府の奴らを殺している所だ。

 それだけじゃない、自分の母親でさえ……。

 「だって……あいつガドルの事ズット見てたんだもん」

 えぇっと?

 それっともしかしてヤキモチ?

 ハハハ……ルルをここに置く経緯が不純なだけに笑えない!

 「あの人は俺を見るのが仕事なんだよ。分かったな?今度あんな事したら……」

 俺はここまで言った後で迷った。“今度あんな事したら”どうするつもりなんだ?強制施設に送るぞ。とでも言えば良いのか?

 駄目だ、嘘でも冗談でもそんな言葉を口に出す訳にはいかない。

 ルルをここに呼ぶ口実だったとしても、ここにいる以上は俺の子供なんだ。その子供が1番怖がっている事を言葉に出すなんて最低だ。

 「今度あんな事したら、お尻ペンペンの刑だからな!」

 人差し指を立てて見せると、ルルは少し安心したように息を吐き、すぐに、

 「え~ヤだよ。格好悪い」

 と、膨れっ面を見せた。

 「格好悪いから罰になるんだ」

 “ヤダ”と何度も叩いて来るルルに“仕方ないだろ”と言いつつ、絶対に強制施設へ送らないと心に改めて誓った俺は、明日も早いのだと気持ちを引き締め自室に戻り、早々に眠りについた。

 次の日。

 いつもの時間にいつものように仕事をこなした俺は、1人遅れた昼食をとっていた。

 最近は路上生活をしている子供の姿は見ないし、ここの子供達も笑いながら過ごしてくれるようになっているし、衣料も薬も今は充実しているからしばらくは物資の注文に広場に出向く事もない。つまり、かなり平和な時間が続いている。

 でも、不謹慎な事に俺の心は荒んでいた。

 暇になるといらない事まで考え、思い出したくもないのに昔の事なんかを思い出したりするからだ。

 特に、1人で自室にいる時は……。

 5年も前になるんだな……と、物思いに耽っているとルルがやって来た。

 この時間は外出を許されている時間だというのにだ。

 「なぁガドル。俺の事……どう思ってんだ?」

 子供のものとは思えない表情のルルは俺の視界に入って来ると、自分の服の襟元を大きく開けて肌を見せ付けて来た。

 間違いなく俺は今試されているのだろう。

 「急にどうした?」

 だからって特別違った行動を見せるのは危険だと判断したので、至って普通に昼食を続ける。

 実際ルルは俺にとって可愛い子供だし、改造人間になんかさせたくない。

 自ら進んで施設に行くと言ったって手放したくない程。

 そう思うのが本当の親なのだと思うのに、なのに何故親達は自分の子を改造人間の材料として政府に売るんだろう。

 いや、金の為だってのは百も承知だ。

 「急なんかじゃない!ここに来てからズット待ってんのに……俺、魅力ないのか?ガドルにとって俺は施設にいる子供の1人なのかよ!」

 うん。その通りだよ。

 辛そうに顔を歪めたのも束の間、ルルは恥ずかしげもなくシャツを脱ぎ去り、ゆっくりと近付いて来た。

 その表情、仕草……こういう事はやり慣れてしまっているのだろう、こういう事でしか愛を確かめられないのだろう。

 でも、俺がこの愛に応える事は出来ない。

 応える気さえ全くない。

 あくまでも俺はその施設の“お父さん”であり、ルルは子供なのだ。それに俺はルルに対してある種特別な感情を抱いていた。

 「俺にはルルと同じ年頃の弟がいたんだ」

 そう言って上着を脱いでルルにかけてやると、この話に興味を持ったらしいルルは大人しく俺の顔を見つめた。

 「名をジュタ。5年前……改造人間にされたんだ。俺のせいで……」

 今思い出しても自分の不甲斐なさが情けなくなる。

 きっとジュタは今も俺を恨んでいるだろう……許される筈もない事を俺はしてしまったのだ。

 「ガドルのせい?まさか、自分の弟を施設に送ったのか!?」

 違う。

 否……もっと酷い事をしたんだ。

 「今から5年前、母が大金を持って月に移住してきた……この施設はその金で建てたんだ。ジュタを売った金だったと……後から知った……」

 もしあの時母の援助を断り、もっと早くジュタの事を問いただしていれば、もしかしたらジュタは改造人間にされずに済んだかも知れない。俺がこの施設を建てようとさえ思わなければ……。

 「改造人間になった弟の姿見たのか?」

 改造人間になった後の姿も、なる直前の姿も、俺は見ていない。

 「いや……訓練を終え前線に出る改造人間は1日だけ家族との面会をする。ジュタからの連絡は1度もない。けど、ジュタを知っている者から話しは色々聞けた」

 皆が口を揃えて言うのは、酷くやる気のない様子だった。

 「どんな?」

 「家族に会えなくするぞ。そう囃し立てられてもテストに業と落ちるのだそうだ。ジュタは俺達を恨んでいる。許してもらおうとは思わないがちゃんと会って謝りたい」

 怒り任せに殴られて命を失うのならそれもまた本望。

 だけどジュタはそれさえもしないのだろう。

 前線に出るその日が来ても俺や母には会いに来ないだろう。

 だから俺も改造人間になって、無理にでも会おうとしたんだ。

 でも、この施設の評価が高いからという理由で断られた。

 俺には質の良い材料を育てて欲しいのだと政府のお偉いさんは言ったんだ。

 「……俺が始めてここに連れて来られた時の事、覚えてる?」

 俺の上着を脱ぎ、自分の服を着直したルルはそう言って懐かしそうに目を閉じた。

 「覚えてるよ」

 ルルが始めてここに連れて来られた時、それはもう半年も前の事で、今回保護するので多分6回目くらいになる。

 「あの時ガドルは言ったんだ。自分から進んで施設に行くか、親が迎えに来るまではここにいて良いって」

 それはここに来る子供全員に言う台詞で、ルルにだけ言った訳じゃない。

 「それで思ったんだ。どっちにしろ改造人間になる他の道はないんだなって。だから逃げた。でも何度逃げてもガドルは俺が辛くなるといつも迎えに来てくれた。見つけて欲しい時いつも見つけてくれた……俺なんかの為に必死になって追いかけてくれた。嬉しかったんだ……俺、本当にガドルの事好きなんだ」

 部屋に入ってきた時の表情とは打って変わり、穏やかな笑みを浮かべたルルは近付いて来ると軽くキスだけして出て行った。

 ほのかに甘い香りがしたのは今日のおやつがケーキだったからか、それともルル自身の匂いだったのか……。

 しかし……変な話しをしてしまったな……。

 明日は気分転換に遠足と称して近くの公園にでも行こうか?

 折角今は平和なんだし、それ位なら急にプランを変更したって大丈夫だろう。後、ルルに限らず皆に“愛とはなにか”って教えるのも大事だな。体を求めたりする事だけが愛じゃない。それをちゃんと教えれば、もしかしたら体を売ろうとする子も減るんじゃないだろうか?

 金を稼ぐ方法なんて探せば幾らでもある筈だし、なんならこの施設の手伝いとして雇っても良いかも知れない。そのテストとして明日からルルには仕事を手伝ってもらおうかな?

 翌朝。

 俺はルルに施設の仕事を手伝って欲しいと提案をする事が出来なかった。

 何故ならルルは……深夜にここを抜け出し、単身強制施設へ行ってしまっていたからだ。なにかの間違いだろうと何度もルルの残した置手紙を読むが間違いなく……でも、納得出来る訳もなく、強制施設へバイクを走らせた。

 朝のシャトルが出発する準備を整えているその横には、改造人間の材料として売られた子供達が不安そうな表情を浮かべて並んでいる。そんな中、真っ直ぐシャトルを見つめている子がいた。物怖じする事無く堂々としているのは紛れもなくルルだ。

 「ルル!」

 思わず声をかけたが俺の方へ駆け寄って来たのはルルではなく、いつも見学に来るお偉いさん。

 「おはようございます。今朝貴方の施設にいた子が来ましてね、他の子達とは意欲が違いますよ。流石ですね」

 ニコニコしながら俺を高評価したお偉いさん。その後ろから俺達に気付いたルルがゆっくりと歩いて来た。

 「なんで……嫌だったんじゃなったのか?」

 「ガドルの変わりに、弟に会って来るよ。俺、誰よりも強くなってスグに前線に出られるように頑張る。そしたら、会いに来て良い?」

 笑顔でルルが言った後、シャトルの準備が整ったとのアナウンスが聞こえた。

 係りの者達が子供達をシャトルに忙しなく乗せていく。

 「何年かかっても良い、絶対会いに来てくれ……約束だ!」

 ルルが改造人間にされた事を知ったのは、それから僅か2日後の事だった。

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