Episode-3 組織‐VEIDO:ヴェイド(C)

       5




 NWC四人の銃弾がサンシードの動きを止め

 七瀬の斬撃が青白い剣閃を描いて斬る。

 銃弾と斬撃を加えられ、確かにその身を刻んでいる。

 だが、ダメージよりも回復する速度の方が速いようで、感覚、効いていないように思えてしまう。

「――ッ、

 ハアァッ!!」

 サンシードの攻撃がNWCの銃弾をすり抜け、七瀬を狙い、

 その攻撃を切り払った隙、カウンター。

 懐に入り込み、X字にサンシードの体を斬裂する――

「な……ッ!?」

 刃が、入らない。

 先ほどまでは切り裂けていたはずなのに、

 蔦の鎧に刃は入った。だが、振り切れない。

 七瀬の斬撃は受け止められ、

「ぐあっ!」

 手に握っていたブレードが奪われ、七瀬が弾き飛ばされ、

「ぐっ――あ、っ」

 そして七瀬の体を捕らえ、持ち上げる。

 蔦の鎧が広げられその中に口と思われる部位が露わとなった。

 タコの歯のような形状で、七瀬を喰らおうとカチカチとさせている。

 例えライブギアを纏っていたとしても、イービルにとってはやはり捕食対象でしか無い。人間よりかは多少捕食が難しい程度の認識なのだろう。

「くっ――!」

 すぐにブレードを取り出して自分を捕らえている蔓を斬らなければ――

「ぐっ、ううぅぁ――ッ!!」

 それをさせまいと、ギリギリッと七瀬の体をさらに強く握る。

 このままではどちらにしても七瀬が倒れる。

「七瀬!」

 そうなる前にすぐさま、杉下がセイライヴィムランチャーをマシンガンモードに変え、トリガーを引く。

 サンシードの蔦の鎧は弾丸に穿たれて爆ぜ、七瀬の体を捕らえていた蔓は焼き切られた。

「くっ……!」

 拘束から解かれて地面に落された。だが杉下は射撃を止めない。

 この場合、一人目である杉下の牽制射撃が動きを止め、

 二人目である緒川がそれに続く、

 三人目と四人目が弱点へセライヴィムランチャーで集中砲火する。

 四人で行うこのフォーメーションだが、今は七瀬の援護だ。

「七瀬ちゃん!」

 その四人目である、上条が七瀬の介抱に入る。

「大丈夫?」

「ありがとうございます、上条隊員」

 尚、サンシードに体に銃弾とエネルギー弾が炸裂し続けている。

 だが戦闘開始時とは違い、もはや引き下がることも無い。

 弾丸とエネルギー弾の雨に打たれても前進してくる。

「このイービル――ッ、固くなってる!?」

「いや、回復速度が速くなっていっているんだ」

 緒川の見解通りか、

 杉下の見解通りか、

 もはやどちらにしても関係のない事だ。

 〝攻撃が通らない〟という唯一つの事実があるのだ。

「何とかしてその回復力を断たないと――ッ」

 刹那、

 サンシードがそのコミュニケーションをする機会すら与えず一撃を入れてきた。

「――ッ!」

 とっさに躱す両者。

 コミュニケーションをとる暇がなければ作戦すらも立てられない。

 現状、今のフォーメーションではサンシードへ対抗するのは無理がある。

 撤退するしかない――

「グッ!」

「ちょっとッ――! 七瀬ちゃん!?」

 そんなこと、七瀬が許せるはずもなかった。

 立ち上がり、ブレードを足のアームから取り出して構える。

 一本はサンシードに奪われているーー奪われている事すなわち、その刃は当てられているという事だ。それを手に取れば反撃に入れる。

「皆は下がって!!」

「よし、カウントで外すぞ!」

 セライヴィムランチャーでサンシードの顔面を撃つ三守の号令。

 カウントは3。

「3――」

 攻撃の雨に当てられてもなお前進するサンシード。

「2――」

 三守へと迫るサンシードを足止めすべく他三人がセライヴィムマシンガンでサンシードの鎧に連射する。

「1――ッ!」

 サンシードが三守に触れられるギリギリになった。

 捕まるそのとっさに、三守はトリガーから指を離し、身を屈める。

 同時、他三人の連射も止まった。

 撃ち出された蔓の腕は三守の頭の上を通り過ぎて地を穿つ。

「ハァアアッ!!」

 七瀬はブレードを構えながら、蔓の上を飛び越え、

 それを迎え撃とうと種子の弾丸を無数に撃ち放つサンシード。

「ゼアッ!!」

 七瀬はブレードを一薙ぎし、光刃を一撃放つ。

 弾丸の雨はただ七瀬一点にのみ向けられている。

 必然、光刃は全ての弾丸を切り裂き、そしてそれを放つ器官をも斬る。

 サンシードの放つ弾丸は止み、痛みに悲鳴を上げる。

(見えた――ッ!)

 サンシードの鎧に突き立てられた、刃。

「――ッ!」

 そこにめがけて突っ込んでいく。

 刃に突き立てられた周辺の蔦を一閃して薙ぎ払い、突き立てられているブレードの柄を掴んで懐に入り込む。

「――ハァッ!!」

 突き立てられたブレードに、柄を通してエネルギーを流し込む。

 蒼い閃光が刃の周囲を飛び、

 それと同じ色の光が刃から発せられる――

 瞬間、

 爆発した。

 それは溜め込んだエネルギーを一気に解き放ったからだった。

 鎧の中に隠れる自らの身に光が爆裂したことで悲鳴を上げ大きく退くサンシード。

 ブレードは引き抜かれ――

「デァアッ!」

 さらに一撃、

 蒼い三日月の斬撃はサンシードの未だ鎧が回復できていないところを裂く。

 七瀬の攻撃が直撃した。

 ダメージは通ったが、その痛みでサンシードは悲鳴を上げながらあちらこちらへと太い蔓の鞭をぶん回す。

「なッ!?」

 図らずもか、それがサンシードからの反撃になった。

 咄嗟にその攻撃をかわす七瀬。

 サンシードの反撃は七瀬にだけではない。その周囲の木々、NWCの隊員四人にまで襲い掛かる。

「くっ!」

 肉や骨を砕く音は聞こえない。かわし切ったのだろう。が、

 周囲のギギギッと言う音を立てて、木々がなぎ倒される。

「クッ!」

 サンシードの攻撃でなくとも、危険な状況。

 各々、自らに襲い来る脅威を回避する。

 セライヴィムランチャーのエネルギー弾が倒れる木々を破壊し、

 七瀬の放つ斬撃が木々を両断し――

「――ッ!?」

 その中、サンシードの蔓の鞭が七瀬へと襲い来る。

 サンシードの攻撃への対抗する体勢をとらなければ――

 しかし体が追い付かない。

「チッ――」

 だが動かないわけには行かない。

 直撃だけは防がなければいけない――

 その時、

 蔓の鞭が空から堕ちる光刃によって切り裂かれた。

「――ッ!?」

 そして、地に降り立つ、銀色の戦装束を纏う少女が。

 ブレードの様な両腕のアームに、クリスタルがあてられた脚のアーム。

 全身に黒いラインが走り、胸には長い心臓を模したようなY字状の赤いランプ。

「そんな……」

 七瀬は、まるで自分自身の時間が奪い取られたかの様に呆然とする。

 NWCの隊員らも、当然同じリアクションだった。

 何故そこに現れたのか。

 ただ一人、三守だけは「なぜ、今?」と思っていた。

 何故なら、そこに現れたのは――


「ジェネクス……」


 七瀬は無意識にその名を口ずさんだ。



       6




「そんな――ッ!?」

 思わずモニターにかぶりついてしまう。

 突然、反応し、数秒後にそれは姿を現した。

 発せられる波形は先日と同じ。

「何で……ッ!? もう回復したのか?」

 と、モニターにつないでいるキーボードを操作し画面を切り替えて解析する。

 映し出された画面にはまるでソナーのように光の波紋が画面の中に映し出される。

 それは、発せられるエネルギーの大きさ。簡単に言えば、「力の強弱」。光の波紋が濃くなれば濃くなるほど、発せられるエネルギーは大きくなっている。

 昨日も同じ画面で解析してみたが、その時はまだ画面いっぱいにまで広がるようなものではなかった。

 つまり、

「昨日の戦いを経て、力を強めたのか……」




       7




 体が、光になじむ。昨日よりも力の使い方が分かる。

 昨日と同一の個体だろうか。だが弱らせたはずなのにどういうわけか強力になってしまっているようだ。

「ジェネクス……」

 それは、今自分が身に纏う光の名前。

 自分が呼ばれたのかと、後ろを振り向く。

(ライブギア……?)

 ジェネクスの名を呼んだ、麻里亜よりも一つほど年下に見える深い蒼色の髪色をした少女。青色のラインが走り、白と黒を基調色とした戦装束ライブギアを纏っている。

 どうやら自分が纏っているライブギアを見知っているようで、それが突然目の前に現れて呆気を取られている様であった。

 そんな状態となっている事など気にも留めず、イービルは臨戦態勢になる。

 自分の体が切り裂かれて痛みに悶えて、

 それが尚怒りを買ったのであろう。そして昨日の事を根に持っているためか、ライブギアのキャリアーとそのほかの戦闘員四人から麻里亜へと標的を映し――

「――ッ」

 刹那、麻里亜の身を砕こうとする鞭撃。

 身を裂く殺気を察知した麻里亜はその一撃を腕のアームで受け止める。

 重い一撃だが、耐えるのは易い威力。

「――クッ!」

 一撃を受け止めた刹那、そのガードしたアームにもう片方のアームを当てる。

 二つのアームが接触――

 瞬間、当てられたアームから光が放たれ、

「ハッ!」

 光を居合抜く。

 抜かれた光は光刃となってイービルへと向かい、

 その身を斬る。

 悲鳴を上げて軽く仰け反るイービル。

 その隙、麻里亜は駆ける。

 だがイービルの懐までは到底届かない。すぐさま迎え撃たれる。

 蔓を弾丸の速度で麻里亜の方に刺突してきた。

「――デアッ!」

 無論、そこまで読み切れていた。

 麻里亜は速度をそのままい足を前に突き出すスライディングで地面を滑り、イービルの足元を削り飛ばす。

 刺突された蔓は麻里亜の体の上を走り、地を突く。

 バチンッと言う火花を散らせて、

 大量の植物が焼き飛ぶ。

「……ッ?」

 その植物の中、イービルの足が見えた。

 地面に根を張る木。

 イービルとすれ違い、立ち上がる麻里亜。

(あそこからエネルギーを……?)

 その足にエネルギーの流れを感じる。

 強い回復力と成長速度。それらに合点が付いた。

(地面から引き抜ければ倒せる!)

 成長につれ、植物の性質が濃くなっているようだ。

 根から力を吸うのであればそれを断てば勝機がある。

 一人で出来るか――

「いつまでそこで呆けてるつもりだ!」

「――ッ!?」

 否、さすがに出来そうにない。

 もう一人、自分と同等の力を持つ者が必要だった。そしてちょうど、目の前にいるではないか。

「ライブギアを纏うなら、お前も戦え!」

 そんな、麻里亜の叱咤を受け上の空となっていた意識が引き戻されたようで、白と黒のライブギアを纏う少女はハッとする。

「こいつを地面から引きはがすぞ!」

「……ッ、

 うん……ッ!」

 頷き、構える。

 光を纏う二人の少女に挟み撃ちにされる形となりイービル。

 どちらを攻めればいいのかと迷っているようで唸り声をあげて麻里亜を見たり蒼い髪の少女を見回す。

「俺たちも彼女たちの援護だ!」

「「「了解!」」」

 戦闘員たちも隊長と思われる男の名で武器を構え、銃口をイービルに向け、

 トリガーを引く。

 青白いエネルギー弾が放たれ、イービルの蔦の鎧を穿つ。

 ダメージは無い。が、意識は確実にライブギアを纏う二人から四人へと散らされていた。

「「――ッ!」」

 それが隙。

 二人の攻撃ならば、崩せる。

「ハァァアッ!!」

「セァアアッ!」

 一跳びでイービルの懐までに跳び込む。

 麻里亜は腕のアームに光を溜め込み、

 蒼い髪の少女は、持つブレードに光を溜め込む。

 オレンジと青の光、

 それら二つがイービルの体を穿つ。

(……ッ!? 色が?)

 フルパワーで攻撃する際の光の色が変わった。

 いつもならば強い青白い光だったはずだが……。

 だがそれに意識を向けるわけには行かない。すぐにスイッチを切り替える。

 蔓に絡みつかれる前に穿った拳を引き抜き――

「デァアアッ!!」

 もう一方の腕のアームに光を溜め込み、さらに一撃拳を穿つ。

 完全に体勢を崩し――

「ハアッ!!」

 休む暇も与えず、蒼い髪の少女がブレードを振るう。

 青の光三閃――

 遅れてバツリッと言う音が三度聞こえる速さの斬撃。

 いつのまにやら鎧の蔦が切り裂かれ、身を切り裂かれ大量に液体をまき散らす。

 そしてようやく痛みと言う形でダメージを感じ取れたイービルは悲鳴を上げる。

 意識は完全に痛みのみに向けられている。

 今ならば防御を取られる心配もない。

 麻里亜はすぐに距離を取り、そして、

「――ッ!

 ハァァア――ッ」

 両腕のアームを目前でクロスし光を溜めこむ。

 溜め込み、

 極まり、

 クロスした腕を片方の腰に据える。

「ハッ――!」

 そして光と拳を居合抜き――

「ゼアァッ!」

 それをイービルの足元へと穿った。

 穿った拳から放たれたのはオレンジ色身を帯びた銀色の光線。

 空を焼き、そして蔦の鎧をも焼き、


 ――爆発した。


 爆炎は立たず、鎧から黒煙が立つ。

 足が破壊され、自身の力で立つことができなかったためか、ガクリと身がほんの少し傾いた。それは、鎧に体を支えられているからである。

 イービルの蔦の鎧はエネルギーの供給路が断たれ、次第に枯れていっていた。

「今なら倒せる!!」

「ああ!」

 麻里亜はもう一度同様の動作をして光をもう一度溜め込む。

 蒼い髪の少女は距離をとり、腕のアームからもう一本抜刀する。

 両手一本ずつ二本のブレードを持つ少女はそれらを重ね合わせ――

 すると、二本のブレードの刃の周りに青い光の閃光が走り、刀身から光が発せ、


 一本の大太刀となった。


「ハッ――」

 身を低く、

 そして大太刀の刀身を肩の方にまで引き寄せる。

 すると、両手両足のアームに填められたクリスタルと胸の菱形のランプが、

 淡い青色の光を発する、

 と、それらがクリスタルから飛び出し少女の前に整列しリングとなり、

 その中を光が道を作る。

 このままでは二つの必殺技を受ける事になる、が、鎧を枯らされたイービルにそれらを防ぐ手段は無い。

「ゼアアァッ!!」

 麻里亜――

 イービルに向けて空へ拳を穿ち、

 オレンジ色の光線を発射する

「ハアァッ!」

 蒼い髪の少女――

 大太刀で目前に展開された一つのリングと、光の道を薙いだ。

 するとリングを通る光の道が強い光を発し、

 その中を、白い稲妻が走る青色の光線が空を焼いて走った。

 オレンジの光線と青の光線がイービルの体の左右を穿つ、

 爆音が響き、二色の閃光が夜闇を照らし、

 森林の木々は衝撃波になぎ倒されそうになってしなっている。

 反っている側の木皮も吹き飛んでいる様に見える。

 逃げ道は無い。

 イービルは悲鳴を上げながら永遠の苦しみの中で身を焼かれ、死へと近づく。

 すると、イービルの体全体からパチパチッと火花が飛び散り、

 青白く光を発し始めてしばらく――そして、


 その身を塵にし、空の中へと溶けて行った。


 二人、イービルが消えた故ようやく息を抜くことが出来た。

 突き出した拳を戻し、

 大太刀は青色の光となって消滅。

 今度こそ、仕留められたと、確信した。

「…………」

「…………」

 お互い、しばらく見つめ合う。

 親近などではない。いつどちらがを持つかという張り詰めた空気を生み出す者だった。素直にありがとうと、握手を求める気にはなれない。

「そのライブギアを――」

「……?」

 その膠着した空気に一滴水を垂らしたのは蒼い髪の少女の方。

 震える手で握り拳を作り自分の心を抑えつけているのが見える。

「そのライブギアを、どこで?」

 その問いに黙り込む麻里亜。

 どう答えれば分からないのだ。いつの間にか手に持っていた、と答えるのも何が違う。その手に持つ一つ前の段階で、麻里亜は夢を見た。麻里亜にジェネクスを与えたのはその夢の中にいるなにかであったのは違いない。

 と、答えるべきかと考え、すぐ取りやめた。

「分からない……」

「え?」

「この光が何なのかも。何故私に来たのかも……」

「…………」

 麻里亜の答え。それを聞いてしばらく黙り込んだ少女は、握っていた拳を開く。それはまるで、剣を今まさに引き抜こうとしているかのように。

「なら、返せ……」

「…………?」

「返せ――ッ!」

 足のアームからブレードを抜き、構え、

「そのライブギアは詩音のだ!!」

「詩音……?」

 聞きなれない名前だった。まさかとは思うが、このライブギアには前任者がいたのかもしれない。

 奪い取ったと思われたのか。もちろんそれはありもしない事。だが事情も知らない彼女には、そんな事など分からない。目に見えて考えたことが全てだ。

 完全に臨戦態勢となり、一歩踏み出してしまったその時に始まりとなる。

「――ッ!」

 少女がスッと身を引き、今まさに跳ぼうとする。

 始まりは刹那に訪れる――

「止めろ七瀬!」

「――ッ!?」

 戦闘員たちの隊長が声を上げ、少女は制止する。

 一歩踏み出す前であったためかギリギリその声が意識の中に入り込むことが出来たようで、

「クッ……」

 だが、気持ちは収まっていないようで表情は尚しかめている。しかしもう襲ってくる事は無いだろう。

 ブレードは光となって消え、構えも解いた。

 戦闘員ら四人が七瀬と呼ばれた少女に集まる。もしまた襲い掛かろうものならばいつでも止めに入れる。

 その四人の中一人、隊長の男が七瀬よりも一歩前へでて、七瀬の方を振り向く。

「お前には彼女がイービルに見えるか?」

「でも――ッ!」

「悪を斬り、人を守る剣なんだろ。その身に纏うのは」

「……ッ」

 そうして隊長は麻里亜の方を見やる。

「だが、君にも説明してほしい」

「何を?」

「そのライブギアは、元々我々の物だった。入手の経緯ぐらい教えてもらってもいいんじゃないか?」

「…………」

 口にすることも難しい事を求められても、麻里亜には説明できない。

 もう一度考えてみるが説明する方法がやはり思い浮かばない。

 目を伏せ、深く呼吸し、背を向けて歩みを進める。

「おい、待て!」

 語る事が無いというのにそれでも尚呼び止められる。

 知りたいことを知りたいならば、教えておけばいい事がある。もしかしたら、見つけてくれるかもしれない。と、

「私自身が何者かだけは、教えられる……」

「何?」

「私の名は麻里亜……」

 振り返る。その背中にあるのは底の見えない夜闇。

 闇を背負う――


「姫野麻里亜だ」


To be continued...

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る