A-✕-2

Fatal Round

第6話 Fatal Round (1)


 この世にもし運命なんてものがあったとして、それによって自分の人生が決まっているとか言われても、誰も信じないだろう?


 運命も偶然も奇跡も、存在しないからこそ「」なんて言葉で語られるのだから。


 つまり、この出会いは運命ではなく、必然だったのだ。










Fatal Round Start.






「ほんま皆さん、容赦なさすぎですわぁ~。」


 オニマサさんが「ありゃ、ユキチ君は?」と言い、そこでチュウキチさんが置いてかれていることに気付いたオレ達は、彼が追いつくまで廊下の途中で待つことにした。

 まぁ、多分本当にチュウキチさんがいないことに気付いてなかったのは、オニマサさんだけだろうけれども。何故ならオレの耳にも、遠くのチュウキチさんの嘆きが聞こえてたから。

 実際、アリスなんかは、


「どうせ一本道なんだし、あの程度でビビってるヘタレなんて、待たなくてもいいんじゃない?」

とかブツクサ言っていたし。


 そうこういってる内に追いついたチュウキチさんは、安堵の表情を浮かべながらも、そう愚痴ったのだった。





「さて、ボクらはなんとか『クリア』できましたけど、レイナ姉さんらのほうはどうやったんでしょうねぇ?」

「あの女のことだし、クイズの意味も分からず、泣き見てんじゃないかしら。」

「頼むから顔合わせても、また言い争わないでくれよ、アリス。」


 オレ達は大広間に残った2人の身を案じる。レイナさんはともかく、ウメコさんは大丈夫なんだろうか?


「つーか、『クイズ』って今回みんなおんなじなのか? どう考えても、あの問題はさっきの二部屋じゃなきゃ無理だろう。」

オニマサさんが首をかしげる。


 確かに、「クイズ」の内容はともかく、あの回答のしかたは大広間じゃ再現できないはず。別に、天井に剣とかもなかったしな。


「あともう一つの疑問は、本当に『メイジ』が大広間にいるのかってことだな。」

「ホンマですね。 あの人、消えてもうてから一度も見てないですけど、一応メメはチームの中に含めてましたよね。」

チュウキチさんがオニマサさんの発言に反応する。


「ま、でもボクらがいま気に揉んでもしゃあないですし、大広間着いてから考えましょう?」

そう言ってチュウキチさんはニカッと笑う。




 そんなやり取りを見ていたアリスが、不意にオレの袖を引っ張った。

「ん、どうした? アリス。」

「ちょっとこっち来て。」


 オレは言われた通り、皆から少し離れアリスの近くに寄る。

「ユウキ、あんた若干みんなに気を許してるみたいだけど、気を付けた方がいいわよ。」

「そうか? まぁでも今のところ、誰も不審な動きはないしな。 やっぱ『実行犯』って例のメイジさんなんじゃ?」

そう考えていたが、


「甘すぎるでしょ、危機感がないわ。」

と、一蹴された。


「少なくとも一人、警戒しとくべき奴がいるわ。」

「誰だよ、その一人って。」



よ。」



 チュウキチさんが? あんな人当り良くて色々損な役割を引き受けてる、残念なあの人が?

「それってただ、あの人にパンツ見られたから印象が悪いんじゃ?」

「流石にそれが理由じゃないわよ。 まぁ、あれはあれで許す気はないけど。」

「でもそれなら何故?」



 オレ達が喋っている内に、やっと大広間の扉についたようだ。オニマサさんが扉の取っ手に両手をかけ、ゆっくりと開く音に被せる様に、アリスはその根拠を話した。



「実は私のライブって、絶対になのよ。 なのに、アイツは『ライブを見に行ったこともあるほどですから』って言ったのよ?

 意味もなくそんなウソをく奴を、ユウキは信用できる?」

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