Second Round -A- (3)


「いやいやいやいや、さすがに勘弁してください! それだけはホンマ無理ですって!」

全力で首を振るチュウキチ。

「ま、そりゃそうよね。冗談よ、冗談」


 私はそう言いながら、今までで気になった要素を基に、改めて推理しようとする。

「なぁ嬢ちゃん、何か、そうしないといけない訳があるんじゃねえのかい?」

オニマサさんは不安そうな目でこちらを見る。

「えぇ、私の推理が正しければ、残念ながら一人は『ミス』しないと『クリア』できないはずなんです」


 チュウキチはほっとした顔をして、

「あぁ成る程、そういう意味やったんですか……。てっきり、アリスちゃんがボクのこと嫌いやから、ちょっと痛い目合えば良いとか思ってるんかと……」

「それは否定しないけどね」

「やっぱヒドイ!」

結局、私の発言に傷ついてしまったようだ。


 時間がない。画面の向こうでは、剣が着実にユウキ達に迫っていて、ついにユアラちゃんが左手を上げて「パス」したようだ。あちらのドアが開いている。

 こうなったら、ユウキがやってた事を、『見様見真似みようみまね』で、試すしかない。


 私は、目と耳を塞ぎ、意識的に周辺情報を遮断した。



――左右に分かれた部屋と、左右に傾いた天秤の絵。「イノチをかける」という言

   葉から、誰かは「✕」を選ばなければいけないはず。

――――いや、もっと深く考えなきゃ。全員が助かる最善はないかを。

――――――おそらく「オす」というのは多数決を取るってことでしょう。なら、

         私たち全員で右の部屋に行く?

――――――――「パス」をすればドアが開くなら、私が「パス」して二人を連れ

            て出るのが一番かしら。

――――――――――そもそも、「パス」した人間はどういう扱いになる?



「おい嬢ちゃん! 大丈夫か!?」


 肩を揺らされ、目を開けると、オニマサさんが心配そうに顔を覗き込んでいた。

「調子はバッチリです。二人とも、私を信じて下さい」

確信をもって、私は二人に考え出した結論を伝えた。




 チュウキチに指示を出して、まずこの「✕」の部屋に残ってもらい、私は「パス」を宣言した。

 ドアが開くとその先には、ユアラちゃんが立っている。

 私はオニマサさんの手を取って部屋を出る。

 出た途端ドアはひとりでに閉まり、廊下を反対の部屋に向かって急ぐ。

 その途中で彼女の手を取り、一緒に連れて行く。


「むりやりひっぱって、いったいなにかな!?」

「ごめん、時間がないの、ついてきて!!」


 そして、ユアラちゃんに右の部屋を開けてもらい、中にいる二人に向けて、私はこう言った。




「助けに来たわよ、ユウキ」

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