Second Round -A- (2)


『みなさマ、たいへんおまたせいたしましタ』



 ディスプレイからメメの声が聞こえ、私達は会話をやめ画面の方に注目する。何度見ても、悪趣味な人形だわ。


『さテ、いまかラ「クイズ」をしゅつだいいたしますガ、そのまえニあるケンリをつたえわすれていたたメ、ごせつめいいたしまス』

そうメメは前置き、


『みなさマには3かいだケ、「クイズ」のカイトウを「パス」するケンリがございます。「パス」をごきぼうのカタは、ひだりてをあげテ、おおきなこえで「パス」とセンゲンしてください。へやからはごじゆうにでていただいてケッコウでス』

と説明した。


 成る程、「パス」が今後戦略として必要になるわけか。

 それ以上に、私はクイズが全部で9問る意味に疑問を持った。何故なら、最初のルールだけだと、ミスが2回・クリアが3回の。これにパスを含めてもまで。

 メメはまだきっと、私たちにルールを隠しているはず。

 

「そんなん、今回は『パス』せなアカンってことちゃうんかい?」

チュウキチはそうぼやく。



『ごじぶんのイノチをハカリにかケ、それぞれごはんだんくださイ。それではみなさマ、おまちかねノ「クイズ」でス』








『「カネ」は「イノチ」よりおもい。「〇」か「✕」か?』








 メメがそう言った途端、天井が



ズズズズッ……!!



と近づいてきた。




『ではみなさマ、「〇」か「✕」か、「イノチ」をかけテ、どちらかをオしてくださイ』


 メメはそれだけ言うと、画面がに切り替わった。



 どうやら、ユウキ達は床に伏せて剣をやり過ごすつもりらしい。よく見ると、向こうの部屋の床に赤色で「〇」と大きく書かれている。

 つまり」と考えているわけか。


「答えはやっぱり『〇』なんかなぁ?」

チュウキチは疑問に思ってるらしい。

「綺麗事じゃ、やっぱりやってけねぇってことじゃねえのかい」

オニマサさんはそう答えた。


「いやね、一口ひとくちにお金って言っても、命の方がプライスレスでしょ。そう考えたら、『✕』ちゃいます?」

チュウキチが反論するので、私は、



「それは違うわ。

 今回の肝は、『カネはイノチよりおもい』と言い切ってること。物質であるお金に対して、命は重さという単位じゃ量れないわ。だからこそ、重さのある『カネ』のほうが重いってことよ」

と、自分の推理を伝える。



「んじゃ嬢ちゃん、今回は『パス』するしかないってことかい?」

オニマサさんは、私の推理を聞いてそう言った。


 そう、この推理の穴はそこにある。

 こんなただ「パス」をさせるためだけの問題を、メメはわざわざ出すのかしら?





「アリスちゃん、こっちの天井、さっきから全然近づいてへんねんけど」

チュウキチがふとそういうので見上げると、確かにもう音すら立てていない。

「んで、あっちはなんかどんどん迫ってるで。これ助けに行った方がええんちゃう?」


 画面の向こうでは、音は聞こえないけど、ユウキ達が伏せたまま、近づいてくる天井にどう対処するか話しているみたいだ。

 よく見ると、向こうのドアに何やら絵が描かれている。もっとはっきり見ようと近づくと、


「嬢ちゃん、ありゃあおそらく、天秤の絵だ」

オニマサさんが答えてくれた。

「ほれ、こっちにも描いてあるだろ」


 そういわれて振り向くと、確かにあちらに似ているが、左に傾いた天秤の絵が、こちらのドアの裏側に描かれていた。それを見て私は閃き、こう告げた。




「チュウキチ、あんた『ミス』しなさい」

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