Second Round -U- (2)


『みなさマ、たいへんおまたせいたしましタ』



 ディスプレイからメメの声が聞こえ、オレ達は会話をやめ画面の方に注目する。ただ、ユアラちゃんは何やらしゃがみこんで床と壁の境目を調べている。聞こえていないのだろうか。


『さテ、いまかラ「クイズ」をしゅつだいいたしますガ、そのまえニあるケンリをつたえわすれていたたメ、ごせつめいいたしまス』

そうメメは前置き、


『みなさマには3かいだケ、「クイズ」のカイトウを「がございます。 「パス」をごきぼうのカタは、ひだりてをあげテ、おおきなこえで「パス」とセンゲンしてください。へやからはごじゆうにでていただいてケッコウでス』

と説明した。


 「パス」が出来るっていうのは、戦略としてかなり重要だろう。でも、この方法だとキング君が「パス」を宣言できなくないか?

 オレはそう思ったのだが、


『そんな憐れんだ眼でこちらを見るな。心配せずとも、我は「パス」など宣言するつもりはない。無用な権利だ』

と、彼のパソコンの画面にはそう書かれていた。



『ごじぶんのイノチをハカリにかケ、それぞれごはんだんくださイ。それではみなさマ、おまちかねノ「クイズ」でス』








『「カネ」は「イノチ」よりおもい。「〇」か「✕」か?』








 メメがそう言った途端、天井が



ズズズズッ……!!



と近づいてきた。




『ではみなさマ、「〇」か「✕」か、「イノチ」をかけテ、どちらかをオしてくださイ』


 メメはそれだけ言うと、画面が60秒のカウントダウンに切り替わった。




「マズイな、この部屋の仕掛けもまだ解いてないし、逃げ場も全然ない」

 天井の剣の束が、群れを成してこちらに迫ってくる。


 ユアラちゃんは慌てることなく冷静で、

「ごふあんなら、「パス」をせんげんなさればいいとおもいますよ」

と言って、なんと寝転がりだした。


 とはいえ、ユアラちゃんが云うように、この「クイズ」は露骨に「パス」させようというわざとらしさがある。つまり裏を返せば、「パス」をせずとも「クリア」する方法があるはずなのだ。

 考えろ。考えろ。



「しかたのないひとですね。 ゆかのさかいめ、それがヒントです。かべのしたがわいちめんにこすったようなあとがありました。つまりこの『〇』とかかれたゆかをおすことで、かいとうするのですよ」

 ユアラちゃんはそう教えてくれた。成る程、そういうことなのか?


「いや、それだと情報が足りない。だいたい、『✕』の時はどうするんだい? 何より、どうやって床を押そうっていうんだ」

「『✕』をえらぶひとは、「パス」しかないのでは? あと、ゆかをおすというより、そのようなすがたになれということです。

 ギリギリまでゆかにせっすることで、けんをかわせるしくみだとおもいます。もくさんでは、いまむかってくるそくどでは、ささらないはずです」



 ユアラちゃんの云うとおりに、3人とも一緒になって床に伏せると、確かに壁の下のほうに、何やら擦れた痕は見える。これなら「クリア」かと思ったが、



カタタタッ


とキーボードが大きな音をたてて、見るとキング君が画面を指さす。そこにはこう書かれていた。



『貴様ら、先程より天井の降下速度が上がっていないか?』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る