Q-✕-2
Second Round -Right side-
第5話 Second Round -U- (1)
二つに分かれた分岐点。二つに裂かれた誓い。二つに一つだけの結果。
だからこそ、二択というのは恐ろしい。
Second Round Start.
ドアを開けた先は、とても殺伐としていた。
とにかく最初に目に入ってきたのは、天井から突き出ている、無数の刃物だ。イメージするなら、地獄の針山地獄を逆さにして、この部屋の天井に張り付けたような危うさだ。正直、怪しく光る刃を見るだけで、さっさとこの部屋を抜け出したくなる。
次に気になるのは、床に書かれた大きな『〇』のマークだ。外のドアと同じように、こちらも赤色のペンキで描かれている。この赤が血を連想させ、更に陰鬱な気持ちにさせる。
そして、やはり真正面にはディスプレイが、今回は壁に埋め込まれて設置してある。それ以外はほかに物などは見当たらず、非常に殺風景だった。
『クイズが始まる前に、貴様たち二人に、
キング君はドアを閉めると、そう書かれた画面をオレ達に見せてきた。
「弱点……? どういうことだい?」
「おそらく、ふつごうなげんじつというのがかんけいあるのでしょう」
意図が読めなかったオレに対して、ユアラちゃんは何でもない事のように、推測して見せた。
『その通り。そもそも、我がずっとパソコンを通じて会話をしているのには、二つの訳がある』
『我は元来、両耳が不自由であり、音は聞こえるが、ほとんど何を言っているのか聞き取ることができないのだ』
キング君は何でもないような顔をして、さらりと衝撃的な内容を見せてきた。
『だが、我が作り上げた、オリジナルの音声テキスト変換ソフトによって、リアルタイムで会話をすることができていた』
そういうと彼は『何か話せ』と促してくる。なのでオレはパソコンに向かって、
「東京特許許可局局長今日作曲千客万来」
『東京特許許可局局長共作曲千客万来』
と言ってみた。一文字変換違いか、惜しいな。
「なかなかいいせいかくしてますね。わざわざはやくちことばでもだいじょうぶか、はんだんするとは」
「いやでも、このスピードで出てくるなら、弱点というほどではないんじゃないかい?」
オレ達はこのパソコンの性能にそれぞれ感嘆したが、
『確かにここまでなら特に問題はないのだが、ここであの「不都合な現実」とやらが関わってくる。
我は、声を失った。正しく言うと、声を失っていたのだ』
キング君はそういうと、パーカーを外し、首元を晒した。そこには真一文字に切り裂かれたような生々しい傷跡が残っていた。見た感じ、最近できたものではなく、怪我をしてから少なくとも何年か経ったような傷だ。
『理由は割愛するが、とにかく現在我は声が出せない。そのため、回答の仕方によっては問題が生じるため、貴様たちに回答してもらいたい』
「それはかまいませんが、なぜこのタイミングで、ユアラたちふたりにだけはなしたのかな? ばらされてはこまるとおもったからいまなのでしょう?」
という、ユアラちゃんの疑問はもっともだ。
『それは、我が貴様たち二人のことを知っているからだ。カミヅキ、少し向こうを向いていろ』
キング君はそう言うと、ユアラちゃんと二人でこそこそとパソコン上で会話する。
「もうこちらをむいてよいですよ」
ユアラちゃんに呼ばれ、入れ替わりにキング君の所に向かう。そのパソコンの画面には、こう書かれていた。
『貴様は「上月竜王」の子供だな? あの恥さらしな大敗を喫してしまった』
「!? 何故知っている?」
思わず声を荒げてしまい、
『わざわざ筆談にした理由を考えろ。貴様が我のことを黙ってさえいれば、特段誰かに話すつもりなどない』
と、キング君に
『そして、誰にもばれないように会話することができる、これこそがもう一つの理由なのだ』
キング君は、不敵にそう笑って画面をもとに戻した。
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