Choice Round

第4話 Choice Round (1)


 男は黙ったままだった。

 ただただ、今から起こることを覚悟していたかのように、口を閉ざしていた。

 それでも何故男は、暴れることなく静かにしているのか?

 それは、自分に降り懸かった『』が理由であった。

 そして男は心の中で呟いた。


――きっと、私は助からないだろう、と。


『さて、みなさマおまちかねですのデ、そろそろ「クイズ」ニいきますネ。 

 

 でハ、ごきげんよウ』








Choice Round Start.





「貴様、よくものこのことその面ぁだしてきやがったなぁ?」

オニマサさんは、そう画面の向こうのメメに向かってガンをつけた。

「だいたい、最初のクイズ、ありゃあ何だ? 警察官であるこの俺が、人殺しなんざしたことあるわけねぇだろうが? それが「ミス」ってどういうことだッ!!」


 確かに、それはオレも気になってた。時間も無かったし、アリスが自信満々だったから「〇」を選んだけれども、あの問題の意図がわからなかった。

『おやおヤ、では「オニマサ」さマは、いままでイチドも「コロシ」をしたことがなイとおっしゃルのですネ?』

「当ったり前だ!!」


『ふむふム、おもしろイ。いままでムシもコロサズ、キンもコロサズ、もちろんサカナやクサバナもコロサズにいきてきたカタは、わたくシさマみたことがありませんガ、そういうのでしたラしかたありませんネ。 

 「オニマサ」さマ、まさかウソではありませんよネ? クックク……』


 そういうことか。そういえば、殺したことはあるかとは言っていたが、とは言ってなかったな。

 このレベルの言葉のレトリックを、60秒以内に判断して行動できなきゃダメなんて、なかなか意地が悪い「クイズ」だ。


 オニマサさんもメメの言いたいことは分かったようで、物凄く真っ赤な顔で睨んではいるが、それ以上何も言わなかった。



『さてさテ、「クイズ」にうつるまえニ、さきほどの「クイズ」で「ミス」されました、「オニマサ」さマ、「キング」さマ、「メイジ」さマには、おひとツだけげんじつをおかえしさせていただきましタ。』

「えっ!? そうなんですか、オニマサさん?」

そう聞いたのはチュウキチさんだ。


 尋ねられたオニマサさんの方を見ると、今までの豪放磊落ごうほうらいらくな姿からは想像もつかないほど、肩を丸く小さくしている。

「すまん、みんな……。なかなか言い出せなくて。何より、こんなことが本当に起こるなんて思わなかったから、急に怖くなったんだ……」

オニマサさんはそう言いながら、自分の左手を顔の高さまで掲げて、




を、スポンッと抜いたのだった。




「「「「「「なッッ!!!!?????」」」」」」



 周りに座っているオレを含めた7人は、全員驚愕した。


「なにあんた、ホントはやくざだったのッ!? あの警察手帳はなんだったの!?」

一番もっともな部分に、レイナさんがすぐ反応した。


「いや、これだけは信じてくれ。俺は正真正銘警察官だ、それは間違いない! ただ、左小指が何故無いのかは、俺にもわからないんだよ……」



『まあまア、みなさマおちついテ。 あくまでわたくシさマがおかえししたのは、おひとツだけでス。つまり、そのリユウはりせっとされたままなのでス!』

まるで誇らしげに、メメは言い放った。



『とはいエ、ほかのカタもリユウがわからなけれバ、フアンになるのはわかりまス。というわけデ、「クイズ」を「クリア」されたカタに、りせっとされたげんじつが、おひとツだけシルされタかーどをおくばりいたしまス。てーぶるにヒキダシがありますのデ、おあけくださイ』

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