Interval Round (4)


 ――――……結論から言うと、何故一人足りないのかは、全然わからなかった。


 と、言うよりも、ほとんどまともに話をしてくれなかったり、逆に一方的に捲し立てられたり、とにかくコミュニケーションが取れなかった。あまりにも会話にならず、アリスも最終的にブチ切れてしまった。せっかく猫をかぶっていたのも無駄になったな、黙ってりゃそこそこ可愛かったのに。


 大広間に残っていたのは、4人。

 中学生くらいの少年、20代(?)の若い女性、上品な感じのいいお婆さん、おそらく幼稚園児くらいの女の子といった、年齢も性別も様々な人たちであった。

 こう言うとなんだか普通だが、実際の会話は簡単にこんな感じだった……。



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~少年の場合~

 見た目はオレより幼く、少年っぽさがあり中学生くらい。灰色のパーカーにぶかぶかのジーンズを履いて、部屋の隅に三角座りしている。持ってきたものだろうか、パソコンをずっといじっている。


「やあ初めまして、カミヅキユウキって言います。よろしく」

お、なかなか感じよくいけたんじゃないか? オレ。


「………………」

「や、やあ初めまして、ユウキって呼んでくれていいよ?」


「………………………………」

「は、は、初めまして? よ、よろしく……」

「………………………………………………………………」


 少年はおもむろにカタカタカタッとキーボードを叩くと、画面をこちらに向けた。そこには、

『名は捨てた。「賢王キング」と呼べ。後は喋り掛けるな』

それだけ見せて、『キング』と名乗った少年はまたパソコンに向かったのだった。



~若い女性の場合~

「すまないが、次はアリスが声かけてくれ……。オレは心が折れそうだ……」

「なっさけないわね~。まあいいわ、そうしましょ」

 その女性はキング君の近くの壁際に立っていて、煙草を吸いながら遠くから大広間の中央にあるディスプレイを見ていた。見た目は20代から30代前半といった擦れた感じで、キャバ嬢みたいな盛った髪型に全身にはじゃらじゃらとアクセサリーをつけている。派手なピンクのシャツの大胆に空いた大きな胸元と、ショートパンツから覗く白いすらっとした素足が嫌でも目に付く。


「初めまして。私、アイドルをさせていただいてます、アリスと申します。よろしくお願いします♡」

お前はそれしかバリエーションがないのか?


「あ~あんたがアイドルとかやってるっていう小娘ね。ま、確かにバカな男どもを食い物にしてそうな、作りもんの嫌な声してるわ、あんた」

「ハァッ?」

お、おい、ちょっとアリスさん?


「ま、とりあえずこっちはこっちでさっさと脱出するから、そちらは逆ハーでも作って仲良しこよしすればいいんじゃない?」

「あ~あ~そ~ですか、やっぱし三十路みそじのおばさんは露骨にアピールしても誰もつれませんもんね~。そりゃあイライラして若い子に当たりたくもなりますよね~。タバコ吸っててもイライラするなんて、更年期障害じゃないです~?」


やばい、逃げ

「あぁん? 誰が三十路って? こちとらピチピチの20代だよ!! 頭空っぽすぎて、2と3の区別もつかないんじゃないの!?」

「はんッ、だいたいこっちが名乗ったのに名前すらいえないって、常識がなさすぎでしょ! それとも、もう痴呆が始まってんですか~? ね~ユウキ?」

……れそうにない、巻き込まれる。


「芸名しか言えないガキがエラそうに言ってんじゃないよ! キンジョウレイナだよ、レ・イ・ナ! オタサーの姫やってるようなアッパラパーなクソ〇ッチには覚えるのは大変かもしれないけどねッ!!」

「そっちこそ、頭ゆるゆるでガバガバなんじゃないのこの阿婆擦れあば〇れがッッ!!!」

「なんですって!? この……(以下省略)

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