Interval Round (3)


「おるるるるらあぁあああーーーーッ!! くぉるぇで、どぅおうだあああああああああああーーーーーーーーーーーッッッ!!!!」



ドンガラガッシャーーーーーンッ!!



 大広間に入ろうとしたオレ達は、大男の叫び声と何かが壊れる凄まじい音に衝撃を受けた。正直、もうすでに回れ右して帰りたくなる程にはビビってしまい、さっきの約束を反故にしたくなる。安易にうなずくなよなぁ、オレ。


「何あれ、頭おかしいんじゃない? あの人」

 そういうことは思っても口に出すもんじゃない、アリス。


「いえ残念ながら、あの方は全然まともな部類なんですわ」

 あの状態でまともってやばすぎるでしょう、チュウキチさん。


 その大男はとても体格がよく、縦にも横にも大きくてプロレスラーのようなガタイだ。顔も厳つく、般若のように怒り狂っている。角刈りの頭と黒地に金色の線が入ったジャージ姿は、任侠映画に出てくるその筋の人そのものにしか見えない。


 そしてその人は、、こちらとは反対方向にある扉をぶち破ろうとしていた。




「かぁ~~~~、やっぱしだめかぁ~~~~。お、ユキチくん、最後の少年少女たちを連れてきたか~。お帰りおかえり」

と、先ほどの恐ろしい顔とは打って変わって、朗らかに笑顔で話しかけてくる大男。


「ちょっと、ユキチはやめてくださいって。チュウキチっす、チュウキチ」

「はっはっは~、いやすまんすまん。で、こちらが?」

と尋ねられたので、先にアリスから、


「初めまして。私、アイドルをさせていただいてます、アリスと申します。よろしくお願いします♡」

豹変しすぎだろ、この子。思わずつられて、

「初めまして。高校2年生させていただいてます、カミヅキユウキと言います。ヨロシクお願いします」

変な自己紹介になってしまった……。


「オウ、二人ともよろしく!! 俺は鬼怒川キヌガワ 正義マサヨシってんだ。『正義』と書いてマサヨシと読むのさ、いい名だろ? ほれご覧よ」

と言って、見せてくれたのは警察手帳だった。


「これだけは肌身離さず持ち歩いてたから、ポケットの中に入ったままだったんだ。一応これでも仲間内からは、『仏の鬼正オニマサ』なんて呼ばれてるから、気兼ねなくそう呼んでくれ、はっはっは~」

オニマサさんは豪快に笑った。


「とにかく、あんまし無茶せんとって下さいよ? 力ずくじゃ、やっぱり脱出は無理ですって。おとなしゅうまた『メメ』とやらが出てくるのを待ちましょうや、オニマ」

「あぁん!? 俺に『犯罪者』の言うことを聞けってのか!? ふざけんな!!」

「ああもう、またや……」

オニマサさんはまた先ほどのように、まさしく鬼の形相になって怒り出す。




「ごめん二人とも。ボクはオニマサさん落ち着かせるんで、他の人たちに挨拶行ってもらえます?」

 チュウキチさんにそう言われたので、大広間の隅でめいめい好きに行動している人たちに話しかけることにした。しかし、確かにチュウキチさんの言うとおり、一筋縄ではいかなさそうな人たちだ。

 なんせみんな、オニマサさんが暴れているときも、それこそオレ達が大広間に入った時も、


 大丈夫なのか? こんな人たちばっかりで。


「ねえユウキ、ちょっと聞いて?」

「ん? どうした?」

「確か『メメ』は仲間全員で9名って言ってたわよね? そして、私たちで最後ってチュウキチさんは言ってたわ。

 でも、いま大広間にいるの、私たち含めてしかいないわよ?」

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