Interval Round (2)
「いやぁ~、なかなかパンチの利いたお嬢さんやなぁ~」
「まあ確かに、腰の入った、よく効くパンチではありましたが」
顔面パンチを食らって伸びている男を介抱しながら、ユウキはその問い掛けに応えている。男の見た目は大学生くらい。赤みがかった茶髪のパーマはくしゃくしゃになり、派手なアロハシャツと白いスラックスは床に擦れて汚れてしまっていて、ブレザーでシンプルな学生服のユウキと対照的。
しかし、なかなか起き上がらないわね。ちょっとやりすぎたかしら。
「ま、でもこれもアイドルのパンツ拝見料としたら、まだまだ安いもんですけどねぇ。いや、むしろこれもまたご褒美……、痛てて」
「顔半分腫れた状態で、よくそんなこと口にできますね……」
……やっぱりもう一発くらい、ぶん殴ってもかまわないんじゃない?
「というか、アリスのこと知ってらっしゃるんですね」
「そりゃあもちろん! 今を時めく可愛い子たちは、随時目ざとくチェックしとりますんで。
と、自己紹介しときますね。ボク、フクザワチュウキチ言います。気安く『チュウくんッ♡』って呼んでください」
「「わかりましたフクザワさん」」
「お二人とも手厳しいッ!?」
Interval Round Start.
「せめて間を取って、『チュウキチさん』にしてくれません?」ということで、オレ達はチュウキチさんから、これまでの現状を歩きながら簡単に話してもらった。
まず、ここは廊下のように長い通路になっていて、最初のクイズが終わればみんなこの廊下に落ちてきていること。
この廊下の先に大広間があり、オレ達以外の人はみな、すでに合流して集まっているということ。
大広間にはいくつかディスプレイがあり、そこで最初の部屋のオレ達二人のやり取りや、「クリア」する瞬間をみんなで見ていたこと。
「せやから、一応お二人のことは、そのディスプレイを通じてもともと知ってたんです、すみません」
「あら、それってそんなに有名でない、地下アイドルな私に対する嫌味?」
「いえいえいえ! アリスちゃんのことは知ってましたよ、ええもちろんですとも! 新曲のCDは欠かさず買って、ライブを見に行ったこともあるほどですから!!」
「え~、ほんとに~? それはそれでヒくわ~」
「アリス、お前酷過ぎるだろ」
と、話を聞いているうちに、大きな扉の前に着いた。
「さて、お二人とも。大広間に入る前に、これだけは守って欲しいことがあります。心して聞いてください。
絶対に、全員とコミュニケーションを取ってください。
最初に挨拶して、一人ひとりお名前を聞くだけで結構ですんで」
「別にそれくらいのこと、もちろん守りますが、わざわざ念を押すようなことですか?」
と尋ねてみても、
「まあ、実際にお会いになればわかります」
チュウキチさんはそう答えるだけで、両開きの扉をグッと前に押し開いた。
そうして、大広間の光景を見て、思わず納得してしまった。
何故チュウキチさんがあんなことを言ったのか。
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