First Round
第2話 First Round (1)
『――…あーっ、アーッ。まいくてすっ、まいくてスッ。ホンジツはウテンなリ。ぜんかいのヒキとおなじだとツマらないかラ、ちょっとセリフがちがうけど、それではみなさマ、おまちかねノ「クイズ」でス』
First Round Start.
『ソレ』の声は、あまりにも耳障りだった。
例えるなら、自分の爪で黒板をひっかいてしまったような、自分の目の前で最愛のペットを轢かれてしまったような、生まれて初めて自分の親に殺意が湧いてしまったような。
そんな自分自身が不快な出来事を想起させる、そして、それをわざわざ思い出させて楽しんでいるといった、不愉快な機械声だった。
『はじめましテ、わたくシさマのなまえハ「メイク×メイズ」ともうしまス。かわいらしク「メメ」さマとヨんでいただいてもかまいませんヨ?』
『ソレ』はなおもわざわざ逆撫でするように、中途半端に片言で話す。いや、話すというのはどちらかというと正しくない。
『ソレ』は人形だった。
人が手にはめて、指で口と手を動かす、いわゆるパペット人形だ。形としてはテルテル坊主に近いだろうか。
そのイメージに両手をつけ、シルクハットをかぶり、白い仮面と黒いマントを着せ、右手にマイクを持たせれば完成だ。
おそらく「オペラ座の怪人」の「ファントム」をイメージしているのだろうが、目もとに仮面をかぶっているのに口がパクパクと動き、ずらりと並ぶ歯が実にうっとうしい。マイクも金色で、三流劇場の司会役って感じだ。
ただ、肝心の『犯人』の姿は全く分からない。唯一ヒントとしては、黒のスーツを着ていることと、左手で『ソレ』を動かしていること。
映像でわかるのはそれくらいだ。
『さて、みなさマ。それぞれごジブンのげんじつをたしかめられテいることかとおもいまス。
ハッキリともうしあげまス。みなさマはそれぞれジブンじしんに「不都合ナ現実」を3つ、りせっとしたジョウタイでここにいまス。それがなにかはこちらではあえてもうしあげませんガ、おこころあたりのあるカタもおおいでしょウ』
『わたくシさマのノゾミはただ一つ、みなさマに「クイズ」をといていただきたイ。
「クイズ」はつねに2たくで、「〇」か「✕」のみです。わたくシさマが「クイズ」をだしてから、60びょうイナイに「〇」か「✕」かをえらんでくださイ』
『「クイズ」はぜんぶで9もんございますガ、そのうち3もん「クリア」できればぶじにそのかたはこの「メイズ」をヌけだすことができまス。ただし、「ミス」をしたばあイ「不都合ナ現実」がふたたびみなさマをおそいまス』
『ハナシがながくなりすぎるト、みなさマたいくつでしょうかラ、いじょうでルールせつめいをおわらせていただきまス。こまかいルールはまたのちほド。それではみなさマ、おまちかねノ「クイズ」でス』
『みなさマは「コロシ」をしたコトがある。「〇」か「✕」か?』
「「なっ!?」」
『さいしょの「クイズ」はさーびすれべルでス。まんガのようにあたまをひらめかせて、「〇」か「✕」かへとひっぱってくださイ』
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