Opening Round (3)


『さあ! 今回の特集は、今ネット界隈で巷を騒がせている、「二次元から飛び出したアイドル」こと、アリスちゃんで~す!

 まずは! 彼女のプロフィールから紹介いたしましょう!

 アリスちゃんは、某動画投稿サイトでの動画アップによる活動を主とし、歌・ダンス・楽器演奏・アフレコ・PV・MADなどあらゆる動画を作成してはどの動画も100万再生を突破するという、超有名動画主なのです!

 また! アリスちゃんはマンガやアニメにも造詣が深く、自身のブログで頻繁にレビューを更新しては、通をもうならせる辛口・過激にして的確なコメントをするとファンの中では有名で、あっという間にアクセス数も月間トップに!

 さらに! あるコメントでファンの一人に「そんな偉そうなこと言うなら自分で作れ」ということを言われ、本当に自分ひとりで短編ながらアニメを作りあげてしまいました!

 しかも! そのアニメの恐ろしいところは、アニメの絵やストーリーだけでなく、キャラのそれぞれの声、OP・EDの作詞作曲、ボーカルにバンドまで自分でこなし、とどめにEDはキャラのダンスと同じ振付、衣装で自分も一緒に踊るという演出まで行いました!

 この一連の騒動により彼女は一躍有名になり、今やアリスちゃんの才能にほれ込んだプロダクションが我先に「僕と契約してアイドルになってよ」状態で殺到しているとのことです!

 しかし!! そんな状況に反して、アリスちゃんはプライベートな内容については一切発信せず、わかっていることは現役の高校生であるということと、今交際している人はいないということだけです!

 ちなみに、生まれはおとめ座のA型、身長は小さめ体重はナイショ、B・W・Hは上からヒ、ミ、ツ♡で、名前の由来は好きなアニメのヒロインからとったそうです!

 では! 紹介が長くなってしまいましたが、いよいよ本人の登場です!!

 それではまず歌っていただきましょう!!! アリスちゃんで曲名は「オトコはみんな、セック……」』




「あ、電池切れちゃった」

と、言ったところで、ようやっとMCのハイテンションなトークが終わった。


「と、とにかく、アリスがすごく有名な女の子っていうのはわかったよ……」


 まあ実際、アイドルと言われて、納得したのは事実だ。


 おそらくキャラクターをまねたのだろう髪はきれいな長い金髪で、肩から腰に掛けてふわふわとウェーブがかかっており、目は勝気そうにつり上がりながらも、黒目がちな瞳がランランと輝いている。


 鼻と口は小さくツンとしていて、全体的に顔も小さく、本当にマンガか何かに出てくる女の子みたいだ。

 服装もピンクのミニのワンピースに白いカーディガンで、全体にフリルがついており、ニーソックスは白と水色の縞模様と、これでフリフリの日傘に大きなリボンでもつけていれば、いっそ異国のお姫様という感もある。


 なるほど、確かに「二次元から飛び出したアイドル」とは、うまいこといったものだ。


 まあしかし、中身のほうはさっきから見る限りやたらと男前で、勝気で喧嘩っ早いので、ファンの人はそのまま幻想を抱いているほうがいいんだろうとは思うが。


「ていうか、今、普通にスマホつかえたよな? こういう場合圏外になってたり、貴重品は没収されてたりしてるもんだけどな」

「あ!?」

と、アリスがあわててスマホの電源を入れなおすが、当たり前のごとく電池は切れたままだった。


「しまった~。あまりにもベタな展開すぎて、基本的な確認をわすれてたぁ~」

 落ち込むあまり、床に手を付き嘆くアリス。


「そういうユウキは、ケータイ通じるの?」

「いや。というより、オレは学校に行く途中だったからケータイを持ってない」


「なにそれ!? それでもいまどきの高校生?」

「仕方ないだろ。ケータイの持ち込みが校則で禁じられている以上、生徒会役員として破るわけにはいかないんだから」


「はいはい、くそ真面目なことで。 やっぱり眼鏡キャラは頭が固くて融通の利かない、眼鏡が本体の突っ込みキャラね」

「誰の眼鏡が本体だって?」


 と、まあお互いの素性も大体わかったところで、ようやっと現状の把握を始めた。いささかのんびりしすぎた感は否めないが。


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