第39話 真実を話すとき
淳はゆっくりと目を開ける。目の前に広がる風景は辺りが真っ白であった。
彼はこの光景を知っていた。
「そこにいるんだろう?巨人。」
彼は立ち上がり巨人を呼ぶ。
「ここは君が作り出した幻想の空間。君がここに呼び出すときは大体大事な時だもんね。」
白い空間から青い人型をしたシルエットが何処からともなく浮かび上がる。
「目覚めたか。淳。」
青い巨人だった。
「君とこの空間で会うのは3回目かな。」
そうだね。と淳は巨人の言葉に軽く返事をする。
「私は君に大事な事を伝えなければならない。」
巨人の言葉は落ち着いていた。だが何故か冷たさを感じさせた。いつだって落ち着いた口調ではあったが今回は少し違うように思えた。
「君が大事な事以外喋る事無いだろう?」
「確かにそうだな。ならば言わせてもらうか。」
2人の会話は妙な軽快さがあった。仮にも変身すれば一心同体。心は通じあっていたのだろうか。
「次、私と共に変身して戦えば君は死ぬ。」
え?
巨人の言い放った言葉を淳は理解出来なかった。
「何言ってるんだ!何を馬鹿な・・・・!」
淳はつい大声を出してしまう。驚きの声ではあるが彼のキャラに似合わない言動でもあった。
「残念だがこれは事実だ。君はこれまでの戦いで体を使いすぎたのだよ。」
巨人は言葉を続ける。
「私と君が同化するとき、君の生体エネルギーを使って同化するのは知っているだろう?」
「それは君がちゃんと安定した精神を保てていれば同化しても支障はないが、君はここ数ヶ月、UBと戦う度に心が不安定になっていった。」
「そして先ほどの戦いで黒いUBにやられてしまった。それがより君へのダメージを加速させたのだ。」
淳は頭を抱えて震え始める。
「元々体が強くなかった君は偶然にも私と1つになってしまったことで力を手に入れることに成功したが、君自身の精神は前よりも弱くなっていった。」
巨人は事実だけを淡々と話す。
「そんな・・・・。嘘だ・・・・。こんなことなら戦わなければよかった!」
淳は悔しそうな声を出す。声は震えていた。
「だが、私と1つになる前、君はUBに襲われていただろう。あの時君は私と同化しなくてはあのまま死んでいただろう。」
「あの時にこんなことになる事を知っていたら僕はお前なんかと組むものか!」
淳は声を大きくして叫ぶ。それもそうだ。自分に死が迫っているのだから当たり前だろう。
「だが君はあの時私と共になっていなければ今頃人間の言う天国というところへ行っていただろう。」
二度同じような事を言う巨人はそれほど淳の命に対し、心配をしている証でもあった。
ハァ・・・・ハァ・・・・。淳は先程から少しだけおかしかった。死というものを宣告されたからか息があがるようになっていた。
「そうだ。3年前に森で僕が遊んでいたら化け物が現れて、お前が現れて、親が死んで・・・・。」
そして巨人と1つになり、その場を凌いだ。
淳が覚えているのはここまでだった。その後signalに引き取られた。
「僕の命が尽きる前に聞きたい!UBってなんなんだ!お前も!どこから現れて、何の目的でここにいる!」
淳は肩で息をしながら、できる限り大きな声を出す。巨人に届くように。
「君は何故自分が存在しているかわかっているか?」
巨人からの返答はよく分からないものだった。
「何を言ってるんだ・・・・?」
「人が存在するように虫も犬も猫も存在する。そしてUBも。」
「私から言えることはここまでだ。君の命と引き換えにUBを倒すかは君が考えることだ。」
最後に言いたい事だけ言って巨人はその姿を消した。
「僕は・・・・死ぬ・・・・?」
白い世界から開放され、現実世界へと戻る。
淳の手は汗やらなにやらでびっしょりと濡れているのを感じた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます