第20話 傷跡と恋心

俺は街に出向いた。


今回の事件はこの街にあまりにも大きな傷跡を残した。


不自然に倒壊したビル郡。大きな足跡、南側が雨ざらしとなった中学校。


他にも例を挙げるとキリは無いが、とにかく被害が凄まじい。


その光景を写真に収めるがやはり心にぐさっと来るものがある。これを新聞に掲載するのが俺の仕事だがやはり心が痛む。


俺が今いる場所はUBが出現した場所にほど近い少しした広場だった。


「隆さん!」


声が聞こえて振り向くと淳がいた。走ってこちらまでかけよってくる。


「お前、学校は?」


当然の疑問だ。中学校は半壊したとはいえ今日は平日である。他に教室使えるだろう。


「まぁこのような状況ですんでやはり出来ない授業も多いんですよね。というよりもここ3日くらいはもっぱら色んな障害物の撤去ですよ。学生だって元気だった奴は手伝いに駆り出されてます。」


淳は地べたに座り込む。下に生えてある雑草がぐしゃっとへたりこむ。


「僕、決めました。戦います。UBと。奴らが滅びるまで。」


淳の急な宣言だった。


「連日の報道で僕のことをヒーローって言うんですよ。人類の危機から救った英雄だって!」


嬉しそうに語る淳。目をキラキラさせて。まるで運動会の徒競走で1位をとった子供のように。


俺はそれが嬉しかった。


「だから言ったろ?俺の言ってることは間違いじゃなかったって。」


俺の言葉も少しどやっとした自信が湧いてくる。


「はい!その通りでした!」


なおもキラキラさせる淳の瞳。


連日の報道が淳を救ってるならある意味俺たち、報道屋として使命を全うしてるように思える。


「まあお前が幸せそうならそれで構わんさ。俺は俺の仕事をするだけさ。」


俺はそう言うとまた手持ちのデジカメで辺りを少し撮影する。


「なんなら僕を取材してもいいんですよ?」


「バカ言うんじゃない!」


こうやって冗談を言い合えるこの空間がとても当たり前だが、幸せであるように思えた。


「あら?隆さん?」


肩をトントンと叩かれ、振り向くと


「風香さん!」


ロングの髪をなびかせ、日傘をさしながら歩く麗しき女性の姿、風香の姿があった。


「あなたは・・・・?」


淳は少し戸惑う。


「ああ。この人は風香さん。前に会って以来少し仲良くさせてもらっていてな。」


そうですか。と淳は納得して自己紹介をした。


「僕は結城淳って言います。どうぞ宜しく。ところで二人はお付き合いをされてるんですか?」


自己紹介の最後に淳はとんでもない爆弾を置いていった。思春期特有のバカな質問だった。


「バッ、バカ!んなわけ・・・・」


俺が否定しようとすると


「子供であるあなたが知る了見ではないわ。大人になったら教えてあげるわ。大人になったら聞きに来なさい。」


と風香はにっこり笑って返してしまった。


「は・・・・はぁ・・・・」


風香のアンサーに淳は少し照れて、いや、恥ずかしそうにしてしまった。


「思春期の男子は思わせぶりなこと言うと勘違いしますよ!」


俺が呆れたように言うと


「あら?いいじゃない。それも若いってことよ?ね?淳くん?」


風香はそう返して淳の頭を撫でてまた微笑んでみせる。


「あっくんー!そろそろ戻るわよー!」


遠くから声が聞こえてくる。


「美智子ちゃんか?」


俺が確認するより早く、遠目に見える女の子が淳の彼女である美智子と判断した。


そこそこ早い速度で走ってくる美智子。こちらにたどり着くのに10秒もかからなかった。


「戻るわよ!」


美智子は淳の腕をクイッと掴み、戻そうとすると


「あれ?隆さん?なんでいるの?あとそこの横の人は?」


俺や風香の存在に気づいた。


「その女性は風香さん。隆さんの彼女さんなんだって。」


間違った説明をするがもう特に気にしないことにしよう。


「へえー、釣り合わないわね。」


美智子の少しした毒舌が俺を襲った。


「うるせえよ!」


美智子の言葉についに俺も口を出してしまった。


「ま、いいわ。お幸せに。」


そのまま美智子は淳を連れ去ってしまった。


「あなたには面白い人物が集まりますのね。」


またクスッと笑う風香。


「大体あなたのせいだと思うんですが。」


ため息をついてしまう俺。だがこんな会話が出来ることこそ何よりの幸せって奴なのだろう。


「ですが私はあなたはなかなかにカッコ良くていい人というイメージはありますわ。」


風香のそんな言葉に俺はその言葉にドキッときてしまった。風香はもとより自然にこういうようなセリフを言ってしまうところはあったのかもしれない。


もちろん俺の方は風香の事を女性と見ていないと言えば嘘になる。


これほどの美貌をもつ女性だ。もし付き合えたとしてデートでもすれば金メダルでも持ち歩いているようなものだと思う。


「俺はあなたのことは好きです・・・・よ?」


やはりこういうのは恥ずかしく思える。俺の言葉も照れが入っていて中高生の告白みたいになっているところはあった。


「あらそれは良かったわ。なら付き合いましょうか。お互いデメリットも無いですしね。」


え?


俺はその言葉を理解するのに少し時間がかかった。


なぜだかよくはまだ理解してい無かったがとにかく交際関係をもつ事ができたようだ。


俺はまだ心の整理が出来ていなかった。


微笑む彼女は荒廃した街に咲く一輪の花のように思えた。

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