第18話 疑問と少女が見た光

大空に青い宝玉をかざすと少年は青い光に包まれる。


瞬間青い光に包まれた少年、淳は自ら強烈な光を放ち、次の瞬間には巨人に姿を変えた。


いつもなら10メートルほどの大きさなのだが相手に合わせているのか20メートルに近い大きさを誇っていた。


俺はその巨人を無意識に見上げていた。


その神々しさはただ巨人と形容するのは国語力の不足を表しているようにも思えた。俺はその巨人を絶対無敵のヒーローとも思っていた。たが違っていた。一人の少年だった。


「負けんなよ。」


俺は目の前の巨人を後にして避難していくようにした。


「隆・・・・さん?」


逃げようとした俺の目の前にある女性が現れた。


「風香さん・・・・?」


何故あの時、今日の少し前の時間に出会った彼女がここにいるかわからなかった。少なくともこの場にいるのはおかしい。UBはもう目と鼻の先にいる。振り返ればいるのだ。だが考えてる暇はなかった。


「ここから早く逃げてください!」


俺は叫んだ。


「あなたは逃げないのですか?」


風香の返しに少し戸惑ってしまう俺。だが、その柔らかい声とブラウンの綺麗な髪が全ての感情を無くしてしまいそうにもなった。少し笑ってしまいそうにもなってしまった。気が緩んだ。


「俺も今逃げるところです!だから一緒に逃げましょう!」


俺は彼女の手を握った。


「そうですね。」


にっこりと笑った彼女の顔は殺伐とした今の状況を少し柔らかくしたように思えた。











「淳!淳!どこなの!」


美智子はごった返す人ごみの中自分の彼氏を探していた。


彼女は怪物を見た瞬間一目散にその場から逃げていた。淳とはその間にはぐれてしまっていたのだ。


「携帯も繋がらないし・・・・」


今の状況は人々は逃げる場所も無いのに逃げている。そんな矛盾がはらんだ状況であった。


「何・・・・?あれ・・・・?」


美智子はふいに学校側に目を向ける。


黄土色の化け物が辺りの物を壊しながら歩みを進めるのに対して青い光が対抗するようにどこからか光り始めた。何の光なのかは分からない。だが、それは優しい光だった。その光は徐々に大きな人型へと変化を遂げていく。


「人型・・・・?」


二本足に細長い形。まるで人をそのまま大きくしたようだった。


肩の突起や胸のエンブレムのようなものは気になったが今はこの巨人が何者か、というのが一番気になった。


周りの人間も振り返り始め、それを見つめる。


「もう一人の怪物・・・・」


巨人を見てそのように敵と認識して災厄がまた1つ増えた。と思った者も多数いた。


「いや、違う。あれは正義のヒーローだよ。」


そんな大人の言葉に子供が反論する。


「僕、知ってるもん。いっつもテレビで見てるヒーローだよ。」


違う子供がまた言った。


その言葉が輪になって広がっていき、巨人を敵視する人間はいなくなっていった。



巨人は黄土色の怪物に後ろから飛び蹴りをしてみせた。


怪物は苦しそうな声を上げて倒れ込む。


すかさず怪物の手を持ち、立ち上がらせ、顔面に何発もパンチを入れる。


怪物も堪らなかったのだろう。手のムチのようなものを巨人に絡みつける。


巨人の体の全身に巻き付いたムチは光を放つ。電撃的なものであろうか。


電撃に苦しみ悶える巨人。だが、それは一瞬の出来事だった。


巨人が全身に力を入れるとムチはプツプツとぶつ切りに切れた。


破片と化したそれは地上にボドボドと落ちる。


すかさず巨人は腹にパンチを2、3発くれてやり、それにキックをプラスして食らわせる。


巨人の胸の中央から剣が形成され、胸から排出される。


それに構わず向かってくる怪物。


キシャャャャ!と苦悶の声を上げて突進してくる怪物にその剣で怪物の腹を一突きした。


剣は怪物の胴体を貫いた。


声にならない声を上げる怪物。


貫いたことを確認した巨人は宙返りをして距離をとる。


巨人の胸の十字架からエネルギー波のようなビームを放つ。


レーザーのように伸びたそれは怪物の腹部に命中する。


その瞬間、怪物は光を放ちながら爆散していった。







「やった!やったぞ!」


美智子の周りにいた人々は歓喜の声を上げる。


わぁぁぁぁぁ!黄色い声が町中にこだまする。


「でもなんだかあの巨人・・・・悲しそうな・・・・」


美智子から出た言葉はそんなことだった。


背徳感。というものだったのだろうか。美智子には正確なことは分からなかった。

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