第17話 英雄の決断 後編

「UBが大田中学校周辺にて出現!」


signalのオペレーターがそのようにしてsignal館内に放送が流れると総員に戦慄が走った。


「所長!これはやっちまったな・・・・」


実は手に持っていた缶のコーヒーを握りつぶす。そばにいた拓哉は口を重そうに開ける。


「俺たちにとって最も恐れていた事態・・・・。」


会議室にいた実と拓也は顔を真っ青にした。手に持っていた紙コップのジュースを落とし、中身が地面にぶちまけられる。


そして会議室にあるモニターに今起こってる状況が映し出される。


黄土色の巨体のUBが電信柱を破壊し、手についていたムチのようなものが周りの建物に風穴を開ける。


「またあの時みたいになるのか・・・・」


実のそんな言葉に拓哉は過去に起こったある惨劇が頭によぎる。


「違う!俺たちは、俺たちのような人間を作らない為に戦ってきたんだ!あんな惨劇を繰り返さない為に!」


拓也はそう言い机をバン!と叩き反論する。


「淳・・・・あいつしかUBに戦える人間はいないんだ・・・・!早くアイツに戦わせろ!今はそれしかない!」


signalの会議室は激情により揺れる。二人の男の追憶と共に。








「何故だ!なんで変身してUBを倒さないんだ!」


俺は淳の肩を揺らすが、淳はなんの反応もしない。


「やめてくださいよ・・・・。そんな戦うのが義務みたいな言い方・・・・」


淳のそんなやる気のない言葉になんだと!と激情してしまい、俺は淳の胸ぐらを掴む。


「僕は誰よりも怖い、苦しい思いをして戦ってるんだ!巨人になって!」


淳はやっと声を振り絞り、出す。


「それに僕は子供に!巨人を許さない!なんて言われたんだ!僕が戦っても意味なんかないじゃないか!」


震えた声は大声になった。


俺は胸ぐらを掴んだ手を離す。いや、俺にはそんな胸ぐらを掴んで説教をするほどの資格は無いと思えたのだ。


「それに!あの剣道部の奴らは僕を虐めていたんだ!いい気味だ!あいつらに襲われてから初めて僕に『助けてくれ!』なんて言い始めたんだ!今まで僕が何回助けてくれ!と頼んでも何も聞かなかったくせに!」


ふざけるな!俺は淳の頬を思い切りひっぱたいた。資格が無いなんて一瞬でも思った俺がバカだった。


そのひっぱたかれた衝撃で倒れ込む淳。


「確かにお前はイジメられたかもしれない。それは辛くて悲しくて惨めな思いをしたかもしれない。でもなぁ・・・・俺たちは、俺たち人間はそういう風に人間の命をえり好んで捨てたりしちゃいけないんだ!」


さらに俺は続ける。何故か涙が出てくる。感極まってしまったのだろうが。


「そりゃ俺だってお前の立場だったらいじめた奴らを助けたくないと思うかもしれない。あの子供の事を思い出してまた傷つけて恨まれるかもしれない。でもなぁ・・・」


俺は涙ぐみ、話を続ける。


「俺はお前に助けてもらってありがたいって思ってる!」


「俺だけじゃないはずだ!signalのみんなだって!」


「理由はどうだっていい!少なくとも今このUBが暴れ回し続けている!それにお前の彼女の美智子ちゃんだって死んじまうかもしれないんだぞ!」


この言葉で淳の目が覚める。


「それでもお前が戦わないっていうなら・・・・俺が・・・・」


俺は淳の首につけてある巨人に変身できる青い宝玉のネックレスを掴む。


「やめて下さい!」


淳はそれを振り払い、立ち上がる。


「僕は剣道部の奴らを助けるわけじゃない。彼女とあなたを助けるために戦います!」


淳は青い宝玉を天空にかざす。


瞬間、淳は青い光に包まれる。


それでいい・・・・それでいいんだ・・・・!


俺は変身するその姿を見届けながらその場へと離れていこうとしていた。

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