第二章 -堕天- ⑥
リーシャの金色の瞳が、爛々と輝く。
同じく金色に輝く髪の毛が、ゆらゆらと逆立っていた。
彼女の頭に伸びる大きな角が、まさに悪魔を想起させた。
「まあ、正直に言ってしまえば、初めからこうするつもりではいたんだ。あたしは口よりも体を動かす方が好きだからね」
先ほどと変わらない友好的な笑顔に、今は邪気を感じる。
「どっちにしろアンタがあたしに勝てる道理なんてないんだから結末は変わらないけどさ。それでも思いっきりやり合えば、少しは諦めもつくだろうさ」
「……私は、諦めない」
「口ではいくらでも言える。が、実力だけが全ての世界で生きているんだよ、ルーシー。アンタも、あたしもね」
「わかってるさ。だから今日こそはお前に勝つんだ」
「だから口ではいくらでも言えるんだって。本当に勝ちたいんだったら、不意打ちでもなんでも仕掛けてこなくちゃ。弱いやつが真正面から挑むなんて正々堂々でもなんでもない。理想主義のお花畑だ」
まあいい、と肩をすくめるリーシャ。
「どうせあたしが勝つ勝負だ。ハンデはいるかい?」
「いらない」
「強がるなよ、弱いんだから。なんだかよくわかんねえけど、目的があるんだろ? だったら取れる手段はなんでも取っとけよ」
挑発めいているけれど、アドバイスともとれるリーシャの言葉。
それだけ余裕を感じれるほどの実力差が、この二人の間にはあるのだろう。
「よし、じゃあこうしよう」
リーシャはへらっと笑った。
「ルールはなんでもあり。アンタが十回ダウンするまでの間に、あたしに一発でも有効打を当てられたなら、アンタの勝ち。あたしにまともに攻撃も加えられないまま十回ダウンしたらあたしの勝ちってことで」
「なっ――――!?」
思わず声を上げてしまった。
二人の会話から、リーシャの方が強いということは想像に難くなかったけれど、リーシャの出した条件はあまりにも常軌を逸していた。
あまりにルーシーに有利すぎる条件。
彼女の側につくと決めた僕でさえ、なにかしらトラップの存在を疑わざるを得ないほどに。
ミステリ小説で、犯行時刻にアリバイがなく、返り血の付いたシャツと血にまみれた包丁が部屋から見つかった人物が犯人ではないと直感してしまうのと似通った感覚だ。
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