第一章 -邂逅- ②
図々しいやつだけれど、長い間友達でいるということは、僕は結局こいつのこういうところも嫌いではないらしい。
「ところでさ」
ヒロが、食器を片付けようとしていた僕に話題を振ってきた。
「俺はさ、割とマジで女子部員獲得を目指すべきだと思うんだけど、タカはどう思う?」
「まだそのネタを引っ張ってくるとはって、思った」
「なんだよ、元々お前が言い出したことじゃんか」
拗ねたような声色で、実際拗ねていた。まるで子供みたいだ。
「………………」
僕は、一度手にした丼をテーブルに戻して床に腰かけた。
「よっし。じゃあ今日は夜通し作戦会議だな」
「やるからにはとことん!」
男子高校生特有の、馬鹿なノリだった。
季節も十月にもなると、夜が更けるにつれて肌寒さを感じるようになってきた。にも関わらず、僕らはそんなことは知ったことかと語り始めた。
若さと勢いにモノを言わせて、僕らは語り続けた。結局片付けないままの丼の米粒が乾燥していることにも、外はいつの間にか雨が降っていることにすらも気付かずに。
本当に夜通し語り続けるのではないかと思えるほど、楽しい時間は早く過ぎていき──
絶望という名の足音は、いつの間にかすぐそこにまで来ていたようだった。
「!」
突如鳴り響いた、およそ時間的にふさわしくない甲高い電子音に、馬鹿話を中断させられた。
リビングのテレビの横にある電話機が、報せを告げるために鳴っていた。
いぶかしんでヒロと顔を見合わせたけれど、次の瞬間には、僕は、それは両親からの電話だと思い至った。
携帯電話にかけてこないことにわずかな違和感があったけれど、僕は確信を持って電話を取った。
受話器の向こうから聞こえてきた声は──
すとん、と膝が床に落ちた。脚が消えてなくなったかと思うくらいに、僕は僕を支えている何かを失っていた。
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