第45話 対面
気を取り直して路地を進み、チェリと一緒にギルドの建物の中へと入った。
チェリをガドルフ爺さんに会わせようと思ったからだ。
これから、チェリがどういう道に進むのかはまだわからないけれど、わたしと同じようにノルクナイに移って仕事を始めることになるとしたら、早めに爺さんにと知り合いになっていたほうが良いような気がしたのだ。
仕事してる兄弟子を印象付けたいとか、あわよくば、仕事出来る兄弟子と思わせたいとか、さっすがオルタ
ギルドの事務所の中に入ると、爺さんは見当たらず、年をくってくたびれたような道化が、ひとり椅子に腰掛けているだけだった。
ごていねいに帽子からはみ出ている髪の毛まで白く染まっている。
「あれって」
「よし、チェリ。爺さんはいないみたいだ。帰ろう」
チェリが道化を指差そうと手を上げようとしたのをすばやく途中でつかみ、その手を取って回れ右をする。
ここには、相手をするのがめんどくさそうな年寄り道化がいただけだ。
こんなやつと仕事の話など出来るわけがない。
わたしと妹弟子には何の関わりもありません。
「またんか」
道化が椅子から立ち上がって、わたしの両肩をがっちりつかんだ。
「何ですか、わたしに道化の知り合いなんていませんから、急ぎますんで離してくれませんか。あと妹弟子を妙な目で見ないで下さい。気持ち悪い」
「いや、結果として、言ってることはまあ、正しいのかもしれんが、出発点と道順がおかしなことになっとるじゃろ、オルタの場合。あと別にお前の連れのことは妙な目で見てないし、そもそも後ろにいるわしの事は見えんじゃろ」
やっぱりガドルフ爺さんだった道化を振り返ると、わたしは爺さんの手を跳ねのけた。
「そんな浮かれた格好で何してんの。仕事はどうしたのさ」
「お祭りの間はたいした仕事もないさ。同じような格好で堂々と文句をつけられてもな。お前の連れが尊敬のまなざしでお前をみているぞ」
「えっ」
とチェリを振り返ると、わたし達のやり取りには興味をないそぶりで、じっと爺さんの机の上を見つめている。
ですよね、期待していませんでしたから、わたしは冷静に妹弟子の視線の先を追う。
爺さんの机の上には、どこか見覚えのある白い箱が載っていた。
「爺さん、あれって風車のところで見た」
「まあ、同じたぐいのものじゃな」
爺さんはサッと視線を落とすと、つまらなさそうに言った。
「それはそうと、お前たち、この衣装のこと知っていたのか?」
「いや、……まあ」
「そう、これはかつて水晶の王が北の地へ旅立つときに……」
「あの、それ商人から聞いたのなら、師匠が勝手に言い張っただけの与太話ですよ」
「ん? 何言ってる。古い文献にも載ってる立派な言い伝えじゃよ。近頃のものは知らんようじゃが」
「えっ? そうなの」
すみません師匠。完全に
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