第40話 仮面
建物の中に入ってみると、チェリが
わが妹弟子は、ボビーの横にぴったりならんで、店の人をじっと見上げている。
尻尾だけが不安と期待の間でゆっくり左右に揺らめいていた。
そんなにあの衣装着てみたいんかい。
いや、
それほどの時間もかからず、チェリが尻尾をぶんぶん大きく振りはじめるのが見えた。
決まったらしい。
事務室の奥にある、扉の前にチェリを案内した後、ボビーはわたしの所までやってきた。
「わたしは外で待ってますので、オルタさんはこっちの部屋の隅っこで適当に着替えてください」
「わかりました。あんなやる気満々のチェリは初めて見ましたよ」
「かわいいお弟子さんですね、ときに、オルタさん」
ボビーがわたしの肩に手をおいた。チェリに引っぱられていたほうの手だ。
なんか弱々しくぷるぷる
「どんなことがあっても、あの子と殴り合いのケンカしちゃだめですよ」
「ワカッテマス」
わたしも衣装を
さして上等でもないただの白い生地で、誰でも
同じようなぶかぶかの上着を頭からすっぽり
これをたくしあげて、やはり同じ生地で出来ている帯を使って、適当に腰のあたりを締めれば、あとに残っているのは白い帽子と黒い仮面だけ。
このての衣装の
獣人も被れるように、帽子に耳を外に出す切れ込みが入っているのを確認しながら、わたしは何かを思い出したように感じたのだけれど、具体的な事は何も思い浮かばなかった。
ただ、わたしの場合、何か教わっていたとしたら、師匠以外からは考えられないのだ。
だけど、事実として、わたしが師匠から道化の衣装の着方を教わっている情景なり体験の記憶というものをいま具体的に思い出せないでいる。
たぶん、それはもう二度とは元に戻らないものごとのひとつなのだ。
そこに
あるいはまた石を積んだ者とは違う誰かの手で石たちは持ち去られ、必要とされるどこかの場所で、何かの目的のためにまた積み上げられていくのだろう。
そういえば、師匠に
目元を隠す仮面を付けながら、わたしは思い出した。
あれは、たしか悲しい話だった。
話の筋はまったく思い出せないけれどにゃあ。
まあ、仮面を付けているから、わたしが誰なのかも、泣いているのか笑っているのかも、わかりゃしないよな。
きっと笑っているようにも泣いているようにも見えるのだろう。
それがプルチネルラというものさ。
では、チェリを
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