第32話 硝子箱の中
わたしの目の前には、石の台に乗った、
わたしが両手を広げたほどの幅があり、奥行きも同じくらいあるようで、中に
わたしは、正面の
内側から淡く発光している境界面がはっきりわかるから、こちら側との断絶がそこにあることは
それでいて今わたしの手には、金属とも、石とも違う、
体を動かしたので、やや乱れていたわたしの息が
ずっと背負ったままの
水槽の中には、何も入っていなかった。
なかった。
しかし、そんなことがあるはずがない。
水槽の中は、どのような
水槽の底は下の台座と同じ白い石材で出来ているようだった。あるいは台座の石材が透明な
見た目には、ただ石の床が広がっているように見える。
しかし、何も
そこには、かならず何かがあるはずなのだと、わたしには感知できた。
わたしの片手だけでは、おそらく、持ち上げることが出来るかどうか、というほどの大きさだった。
透明度が高く、よくよく注意深く探さなければ見つけられない、というのとはすこし違うようだった。
どうも、その透明な球体から強く感じるエーテルが関わっている事のようだ。
一度気付いてしまえば、見つけられなかったことが不思議なほど、はっきりとそこに存在していることを見分けることができた。
水槽内の光を反射し、
だが、どうしてこんなものがここにあるのかはわたしにはわからなかった。
もちろん、この建物を作った種族が
無数のエーテル
あるいはこれは古代人たちの
わたしは、数百年ぶりか、ひょっとしたら数千年ぶりの待ち続けられた見学者なのかも知れなかった。
「オルタっなにしてんの!」
グリシーナの声が飛んできてわたしは
びくっと身をすくませて振り返ると、がらくたの山の向うで、グリシーナがぷんすかしながらこっちの方を
「にゃあっ!」
わたしがあげた悲鳴を鼻息で軽くあしらうと、
「命を大事にしないやつなんて大嫌いだ!」
そう言い残して、グリシーナは階段を
ん、階段?
「なにやっとんじゃお前」
後ろからガドルフ爺さんがあきれたような声をかけてきた。ボビーはなんだかあいまいな笑みを浮かべてその脇に並んでいる。
「にゃー、ちょっと気になるものがあって」
「まあいい、こっちの用はもう終わったから、さっさと帰るぞ」
「へ、もう終わったの?」
「ああ、わりと状態のいい物が、すぐにいくつも見つかったからな。先に行くぞ」
そう言って、二人も階段を
わたしが階段に足をかける頃には、地下の
階段を
ガラクタの山の向うで、水槽全体を見ることは出来なかったが、滝の光がなくなり、薄暗くなった壁のほうで、
「まさかな」
まったく意味はなかったけれど、なんとなくそう言いたくなったのでそれだけ言い残すと、わたしは三人の後を追った。
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