第29話 はかない輝き
確かな足取りで、砂地の上を進んでゆく足跡を追って、わたしたちは森の中に進んでいった。
森の中に入っても、入口の近辺と明るさはかわらず、ずっと黄昏時のような薄暗さが続いていた。
ときおり、密生しているエーテル
星の光のように遠く、はかない輝きは、絶えることなく、森のあちこちで瞬いていた。
途中、いくつかの分かれ道に出くわしたが、それが本当に見た目どおりの分かれ道なのか、あるいは、分かれ道に見せかけたまぼろしなのかはわたしにはわからなかった。
どこへ続く道の上にも、白い砂が
足跡は、一定の間隔を少しも狂わすことなく、目的地を目指し、迷い無く進んでいるようだった。
まぼろしだとしても、そこに意思をもった、なにものかの気配をいやでも感じさせるものだった。
遠く、はかない輝きは、絶えることなく、森のあちこちで星の光のように瞬いていた。
何度分かれ道を過ぎたか、数えるのに飽きはじめた頃、わたし達は森の中の小さな広場にたどり着いたことに気付いた。
上のほうは、張り出したエーテル柱の枝々にさえぎられ、ほとんどまわりの明るさが変わりがなかったため、突き当たるまで、そこに広場があることに気付かなかったのだ。
あたりはやはり薄暗く、地面には、白い砂が一面に敷かれていたが、端の方には、白い石でできた箱のようなものがいくつか並んで置いてあった。
箱の底は浅く、中には砂や、鉱物か石のようなものが種類によって分けて置かれてあるように見えた。
広場の中央には、石で出来た茸のようなかたちをした石像が建っていた。
小さな家と言っていいほどの大きさで、あたりを見張っているかのようにまっすぐ立っていた。
足跡は、その小屋の前まで進むと、そこで歩みを止めた。
石で出来た小屋も、地面も白く、薄暗がりの中で、水の中に沈んだように距離感を失ってぼんやり浮かんでいた。
はかない輝きは、絶えることなく、森のあちこちで遠く星の光のように瞬いていた。
「あのキノコみたいなの、何なの?」
「遺跡じゃ。ノルクナイよりももっと古い時代のものらしい」
不審げな口調で尋ねたグリシーナに、爺さんが低い声で答えた。
「家のようにも見えますが、窓も、入口らしきものも見えませんね?」
「足跡の止まったところから進んでいけば、中に入れる。あれもやっぱり幻じゃよ」
ボビーがもらした疑問に、爺さんはかわらず低い声で答え、すぐに付け加えた。
「聞くことないならオルタはにゃあとか言わないでいい。このまま遺跡の中に入るぞ」
わたしは、「に」というかたちで半開きにしかけていた口を、何も言わず閉じると、尻尾を空中にゆらゆらさせながら、爺さんたちが小屋の中に消えてゆくのをやはり半開きにした目で眺めた。
やがて最後列のボビーが石の壁の中へ溶け込むように消えていくのに気付いて、あわてて後を追った。
足跡の止まっているところで、わたしは一瞬立ち止まり、来た道を振り返った。
道は、広場から続いて曲がりくねって薄闇のなかに白く続き、そう遠くないところで暗がりのなかに沈んで見えた。
はかない輝きは、遠く、絶えることなく、森のあちこちで星の光のように瞬いていた。
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