第3章 西の風車とまぼろしの森
第17話 チコリー草
公園に戻ってグリシーナとおさらばした後は、予定通り「砦の食堂」へ向かった。
昼食は、
厚めに切られて、オイルで炒められた茸は、とてもいい香りを放っていて、
チコリー草は今の季節なら、街の外の草原にいくらでも生えている野草で、いまなら黄色や、たまに白い花を咲かせている時分であり、ちょうど食べごろの時期ということだった。
ぱりっとした食感で、少し苦味があるのだけれど、細かく切ってかりかりに揚げたパンがほどよく散らしてあって、さくさくした爽やかな食感を作り、そのうえに酸味のあるソースがかかっていて、全体としては、きりっとした味わいになっていた。
パスタとあわせると、お互いをいっそう引き立てあっているようだった。
食後はチコリー草の根から
濃い目の、黒っぽい色合いのお茶で、このあたりではこのお茶を、そのまんまチコリーと呼んでいる。
苦味の強い味で、わたしは、合い間合い間に、別の器に用意した冷たい水をすこし含むようにしながら飲むのが好きだ。
ボビーはお茶だけをじっくりと味わって、最後に少しだけ水を飲んだ。
ボビーははじめて飲んだということで、チコリーの香りを珍しそうにかいでいた。
わたしは、チコリー草について、ボビーに説明した。
「のこぎりみたいなぎざぎざの葉で、けっこうどこにでも生えてます。今の季節だと、黄色い花をつけてるけど、これから暑くなる前に白い綿毛に変わって、種を飛ばすんです。根っこを乾かしたあと、すりつぶして濾すとお茶になるんですよ」
「西の草原にたくさん生えているやつですか?」
ボビーはちょっと頭を傾けて言った。
「風車の塔があるあたり」
「そう、そうです。風車へ向かって、細い石の柱が続いていて、小川が流れていたでしょう」
「たしか、そうだったとおもいます」
「あそこで、わたしはチコリー草を採って来るんです。小川が近いから、根っこを洗って土を落すのに便利なんですよ。今日も午後は他に仕事が入ってないんで、採りに行くと思います」
ボビーとは、昼食の後、砦の食堂で分かれた。
街中へは案内しなくとも、もう道を覚えたという。
「方向はわかっていますから、ちょっとこのあたりを散歩しながら戻ってみます」
「はあ、さすが商人さんですね。道を覚えるのが早い」
別れ際になって、思い出したようにボビーは振り返った。
「そう、西の風車の草原ですけど」
「はい、これからチコリー草を採りに行くんですが、なにか」
「ひょっとすると、ガドルフさんと会うかも知れません。見かけたら、よろしくと伝えて下さい」
「爺さんと?」
「ええ、今日、ついでに届けた荷物があったんです」
そう言いのこすと、ボビーは手を振って、
ゆるく吹く風が、壁に
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