第4話 俺、弁当欲しい
次の日からこのクソ女のことが気になってしょうがなかった。
いやだって、ファーストキスだったんだぜ?
「おはよっ」
きらめく笑顔を振り撒き、挨拶してくるクソ女。なんでそんなに普通なんだよ。
「ぉ、おはよ」
なんて言ったんだよ、って言われてもおかしくないほど小さな声だ。
それでもクソ女は満面の笑みを浮かべた。
「ねぇ、一緒に食べない?」
昼休み、クソ女は言うか言わないかで前の席の椅子を俺の机の方に向け座る。
そして可愛らしいピンクの布で包んだ弁当を取り出す。
「これね、私が作ったの」
「へ、へぇー」
「なんで棒読みなの!?」
そう言って開いた弁当はそれはそれは素晴らしい出来だった。
タコさんウインナーにふんわりとした卵焼きに小さなおにぎり2つ。それにこれは……、ポテトサラダか?
言い出したらキリがない。これは誰もが憧れる本当に普通の弁当!!
「どうしたの?」
あまりにも俺が弁当をガン見していたせいかそう訊いてきた。
「べ、別に?」
誰がどう見ても不自然だが、慌てて目をそらす。
くっそ、美味そうに食いやがって。
「これ……食べる?」
また見てたのかよ、俺!
無意識とかやべぇだろ。てか、気になりすぎてセブン〇レブンのメロンパンに手がつかねぇ。
しかもこいつ俺の好み知ってんのかよ。
「は、はぁ!?べ、別にい、いらねぇ、し」
よりにもよって卵焼きとは。強がっては見たものの、うまそうだ。
「もう、そんなこと言ってー。ほら、アーンして」
「だ、だからしねぇーよ!」
よ、といった瞬間、開いた口のの中に卵焼きを放り込まれた。
う、うめぇ……。
「ど、どうかな?」
「……う、うまいよ」
あー、マズイって言いたいのに!!こんな美味かったら言えねえーよ!
「良かった。明日も作ってきて上げるね」
「明日土曜なんだけど」
喜びに満ちた卵焼き女は俺のツッコミに聞く耳も持たずに鼻歌を歌っていた。
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