第3話 俺、戸惑う

 こっ酷く怒られて教室に戻った時、あのクソ女が心配そうにこっちを見てた。

 俺は精一杯のよって来るなオーラを出したつもりだが、その努力は虚しくクソ女は駆け寄って来た。


「あの……、大丈夫、でしたか?」


 可愛らしい声ではあるが、この女に心配されるほどヤワじゃねぇーんだよって感じだ。


「大丈夫だ」


「そっか。よかった」


 向日葵のような輝く笑顔を俺に向ける。


 そして今日の担任の授業中。俺はやたらと当てられた。そして、良かったな、良かったなとクソ女にニヤニヤしながら言っていた。


 ーー放課後ーー


 燃ゆる赤色が空を染める、夕方。俺はクソ女と教室にいた。

 理由は1つ。昨日のことだ。

 一応としての罰で、原稿用紙3枚の反省文を書かされていた。


「ねえ」

「なんだ?」


 素っ気ない返事なのに嬉しそうな表情のクソ女。マジで意味わかんねぇ。


「私と付き合ってくれない?」

「はぁ、いきなり意味わかんねぇし」


 唐突にも程があんだろ。もっと話のもっていき方とかさ……。まあ、俺が会話途切れさせてるからそれは無理なんだけどよ。


「私ね、本気なの」


 心のこもった一声に俺はその台詞が無くても、その事は伝わった。

 チラっと表情の確認。茜色に染められた頬に曇のない真っ直ぐな瞳。

 俺に対して向けるには勿体ない程のものだ。


「い、いや……。無理だな。俺とお前となんてありえねぇ」


 正直言うと心は少し動いた。付き合ってやってもいいんじゃねぇか、って。でも、やっぱりそれはに対する甘えじゃないのか。


「でも、私……」


 ここに来てクソ女は目に涙を浮かべ、徐々に鼻声になっていく。

 泣かれるのは不味い。


「わーたよ。でも、マジで付き合えねぇ。別にアンタの事が好きとか嫌いとかじゃなくて無理なんだって」


 柄にもなくまともに返事をした。クソ女は口をポカンと開けている。


「口、開いてる。ブサイクだから閉じろ」


 俺はため息混じりにそう言い、残り1枚半となった反省文の続きを書いた。


「じゃあ今はどうあがいても無理ってことか…… 」


 クソ女の声は悲しみの色で溢れていた。

 俺は顔を上げ、そうだ、と答えた。


「じゃあ、待つ。でも、これだけは許して」


 そう呟き、クソ女は体を俺の方へと乗り出し、ノーガードとなっていた俺の唇に自分の唇を重ねた。

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