第109話 むかご
私は生命保険の営業をしているのだけど、お客様のところに行った際に
「ピューレラさんは『むかご』って知ってますか?」
と雑談の中で尋ねられた。
お客様は80代のご主人様と70代の奥様のご夫婦。
尋ねてくださったのはご主人様の方だった。
私は『むかご』というものを初めて聞いたので、それが何か教えて頂くと、山芋の先の脇芽の部分になっている丸い実だという。
私の住んでいる地域は埼玉県の南部なので周りに山もなく、自然の山芋もむかごもみる機会は無い。
「昔住んでいたところの近くの山などでは良く採れたんだけど、こっちにきてからはご無沙汰だったんだ。そうしたら先日、〇〇魚類のスーパーで売っていたんだよ」
とご主人様は仰った。それを伺って私も興味津々、もう買いに行こうと頭の中で思っていた。更に……
「炊き込みご飯にしたらホクホクと美味しいのよ」
と奥様。
「かき揚げも旨いよな」
とご主人様。もうそこまで聞くと
「◯◯魚類に売っているなら、私もぜひ食べてみたいです!」
「あそこだけじゃなくて、他にも今の時期ならあるかもしれないから見てみると良いよ」
そう仰ったご主人様の言葉に私はかなり前のめりになっていた。
お客様とそういう話が出来たというだけでも嬉しいのに、それから私はスーパーに行くたびに、そのお客様と『むかご』の事を思い出して探すという楽しみが出来た。
そして実際、『むかご』は◯◯魚類では無いけれど少し離れたスーパーで見つける事が出来た。
「これが『むかご』かぁ」
と感慨深く実物をながめ、その晩にかき揚げを作って食べてみた。
奥様が炊き込みご飯で表現されていた「ホクホク」が、かき揚げでも感じられ美味しく頂いた。
次回、そのご夫婦にお会いするときには、『むかご』を教えてくださったお礼と美味しかった感想をぜひに伝えねばと今から楽しみだ。
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