種を蒔く者

いつの世も現代人に出来る事は変わらない。


先人達の蒔いた種や育ててきた苗に水をやる事。

そしてもう一つ、子孫に未来を託して種を蒔く事。


出来る事はその二つ。


そして水をやる事は限られた者にしか出来ない。

社会の中で歯車として機能する能力のある者。


きちんと成果をあげる事が出来る者に任される仕事。

もし成果をあげる事が出来なければ社会に返ってくる。


一方、種を蒔く事は誰にでも出来る。

ただ、それが花や実となるかは分からない。


誰の種なら花や実となるのか。

それも分からない。


自分でそれを確認する事が出来ればいいが、

人間は、そんなに長生きが出来る訳でもない。


一つの種が花や実となるまで、

幾つもの世代が必要なのだ。


そして、その間、水をやる者の協力を得て、

大事に大事に苗を育てていく。


しかし時に、そうやって大事に育てた苗が、

綺麗な花や美味しい実にならない事がある。


本来、そういうものは苗の段階で、

水をやるのを止めて、枯らすべき。


しかし、水をやる者も神ではない。

時には判断を誤る事もある。


そうして咲いた花や成った実が、

社会に混乱を招いたりもする。


でも、それも結局はお互い様。


種を蒔く者が蒔く種は

美しい花や美味しい実になるとは限らない。


水をやる者が育てた苗が

美しい花や美味しい実になるかは分からない。


そんな中で水をやる事が出来ない僕は、

ただただ、ひたすらに種を蒔く。


未来において、僕の蒔いた種が、

美しい花や美味しい実になってくれる事を願って。


The Seeds Planter...

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