第2話 行き倒れ
行き倒れのおっさんを発見した。
通常、行商人はオアシスを経由して町へ行くのだが、儲けを上げたい輩がその辺を無視して町から町へ突っ走るのだ。
熟練の案内人や、探索スキルを持っている者を雇えば安全に日程を短縮できる。
コストを下げたいってのは行商人の誰しも考えるところであり、おおよそこのおっさんも何回か無事に往復できたので今回も大丈夫だろうと、案内人を雇わなかったのだろう。
よくよく見ると同族のエルフである。森が砂漠になってしまってから数百年、自分を含め変わらざるを得ない。
欲の皮が突っ張っているなぁ……
そんな思いをめぐらせている最中におっさん絶叫。
うるさいので物理で眠らせる。いや、魔法で眠らせることも出来るんだよ。
けしてめんどくさい訳じゃないよ。
……こほん
納品日時が気になるのであろう。生きているので叫べたのであり、死んでいたらそんなことも気にも出来ないのだ。
リディのペースでゆったりいくと、一泊二日の行程。
スキルとじゅうたんを駆使して最短を進めばぎりぎり日の落ちる頃合に町に着く。荷物を全てじゅうたんにのせ、炎天下を突っ走れば、だ。
足かせがあるのでそんなペースであって、いつもの魔法のじゅうたんペースであれば昼過ぎには到着できる。
おっさんの絶叫があったから急いでいるわけではない。
遭難者を発見したら"可能な限り"速やかに搬送するのが、砂漠のルールなのだ。
特に遅くなっても罰則はない。素早く着いても報奨金が出るわけでもない。
"情けは人の為ならず"
まぁ、そんなことがなくとも目の前で死なれては目覚めが悪い。
助けたからには生きてほしいのだ。その気がなければ見捨てていく。
荷物が載っていないので、引っ張ってるリディのペースも速い。
途中で水休憩を挟みつつ町を目指していくと、思いのほか早く町に着いた。
…このおっさん、リディの能力を当てにして突っ走ったんだろうなぁ。
この子の足ならば二日は速く到着できるだろうが、如何せん誘導に難があったね。
「ただいまー」
ゆるーい挨拶。
「おーう、お帰り」
ゆるーい返答。
日が沈む前に町の門に到着する。
本来であればタグを提示せねばならないが、10年来の顔なじみで、ゆるーい普人の門番である。
周りに人もいないので顔パスだ。人がいたらこうはいかない。
「珍しいな、救助者か?」
「ああ行き倒れだ、リディの足を過信したっぽい。最後の方向は正しかったんだが、途中であちこち彷徨ったんだろう。」
「ありゃ、もうちょっとだったのにな」
「ああ。てことで、ギルドに置いてくるわ。早く汗も流したいしな」
「おう、おつかれさん」
リディを引きつつじゅうたんを降りる。
おっさんんは日よけの布をかぶったまま、未だ寝ている。
早く人並みの生活をしたくて、俺はギルドへの道を急いだ。
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