スマイル。

 とある国の首相が、急に飛んだ。責任の定まっていないフリーターよりもイージーに。


 飛んだ一国の代表だった、安っぽい前首相の路線を引き継いだのが、全く笑顔を見せないことでおなじみの久田首相。


 特徴は、超強権政治。既に大枠でコントロール下にあったマスコミをさらに強固に支配すべく、論説委員まで勤めた大手新聞紙の記者をマスコミ対応のために補佐官につけたのだ。


 また、政府の諮問機関として、専門的立場から“絶対的に客観的な意見”を求められることが必然の学術会議に対し、突如介入。これまでどのような「極右的」と言われた首相でさえ行なうことはなかった人事に口出しするようになった。


 完全に権力の暴走である。


 ある骨太のジャーナリストは動画サイト(既存マスコミからは弾かれた)で「戦前の新聞と比べて欲しい。まったく同じことが今起きているのだ」と訴求。皮肉なことにそのジャーナリストの知名度は高く、見過ごすことはできなかったのだろう。翌週には死体となって発見されることになる。


 そんな政府に対して反対する声もあったが、小さいものでしかなかった。「携帯料金を下げます」と、久田首相。その他、給付金などのバラマキなどを実施したことで、小銭に目がくらんだ大衆たちは、総じて賛成に回ったのだ。


 ──数年後、そのとある国の国民は全員、首相同様に全く笑顔を見せなくなっていた。

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