神様ポイント。

 良いことをしたら、巨大IT企業からポイントが付与される。ポイントはお金と同じように、幅広く使うことができるのだ。判断するのは、巨大IT企業の粋を集めたAIだった。


 ポイントに対して、最初は怪訝な顔をしていた頭の固い大人たちも利便性と具体的な利益を受けられることから、徐々に使うようになった。


「落ちていたスマホを交番に届けたら、500ポイントゲット!」


「この前、泣いていた子どもをあやしたら、1000ポイントもらった」


 街中ではこうした話が、普通に飛び交うようになる。いつの頃からかポイントのことを“神様ポイント”と人々は呼ぶようになった。


 これまでは「誰にもわからない善行」だった行為が即物的で、卑しいものになっていくことをみんな薄っすらと感じつつも、見て見ぬ振りを続けのだ。


 最初の方こそ正常に機能してた“神様ポイント”だったが、最終的にお金を出す企業や政府といったスポンサーの意向が以降が色濃くなるようになってから、狂い出した。


「善悪や倫理の基準なんてものは、時代によってコロコロ変わる代物だよ」


 スポンサーになった権力者は、悪びれることなくそう言い放ち、自分たちの政権が犯した罪をかばう愚者たちに、ポイントを与え続けた。

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