正義のミカタ。

 徹底した取材。弱きを助ける記事を発信するサイト。いつからスタートしたのか定かではないが、既に人々の間では周知のサイトになっていた。


 そのサイトを有名にした、最初の報道内容は、日本を代表する広告代理店における癒着。政治家と広告代理店が結託し、世論操作を行ない、そこには巨額の税金が投入されていたのだ。


 それを皮切りに、大手自動車メーカーのリコール隠し、製薬メーカーの治験データの改竄、居酒屋チェーンの過労死など、一般の報道機関ではありえない数々のスクープを連発し続けたのだ。


 一度、火がつくとニュースのネタはどんどんと集まり出した。サイトには、有象無象の情報が寄せられるようになる。それらを組織は徹底して調べ上げ、裏取りをしてから発信するのだ。いつしか、サイトは“正義のミカタ”と、人々から言われるようになっていた。


 ──「さて、今回のネタでも大きく株価は落ちたな」と組織の代表はつぶやき、利益確定のボタンを押す。「1億円程度のもうけだな」。


 代表が仕掛けた空売りは、情報を出す前に“売り”を仕掛け、株価が落ちたところで“買い”戻せば、利益がでる仕組みだ。


 そう。本格的で健全なニュースを生み出すには、ある程度のお金は不可欠なのだ。

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