存在への憎悪。

「アハハハ。ま~た、スキャンダルじゃん。適当なこと書いとけば、人が集まるなんてバカばっかり~」と、彼女は卑下た笑みを浮かべて、アフィリエイトコンテンツを書いていた。卑下た笑みは、素の表情にも影響し、下品さとして定着していく。


 アフェリエイトコンテンツとは、「広告収入を得るため」のもの。よく「ネット記事」などとも言われるが、“記事”とは「人に真実を伝えたい」という有益性をもたらすために書かれるものであって、「内容なんて、なんでもいいからとりあえず人をバカにみたいに集めたい」というものとは根本的に異なる。アフェリエイトコンテンツととは、言わば記事モドキにしか過ぎない。


 しかし、悪貨は良貨を駆逐する。「正しい情報を知ってもらいたい。そのためには広告費が必要だ」というスタンスの作者と、「広告で利益を得たいので、内容なんてなんでもいいからとにかくバズるコンテンツが欲しい」というアフェリエイターでは根本的にスタンスが違う。しかし、「良質な記事」よりも、「何でもいいからそれっぽいコンテンツ」を大衆が追い求めた結果、いつしか完全に「アフェリエイトコンテンツ」の方が、検索した際、上位に出てくるようになっているのが現状だ。


 その日も彼女は、芸能人のゴシップを見つけ、デタラメな尾ひれはひれをつけ「バズる」コンテンツを増産していた。名前も全て匿名である。何の責任も無く、適当なことを垂れ流すことができるのだ。


 しかし、彼女はその芸能人のファンを舐めていた。たとえば、いかに匿名で垂れ流すとはいっても、アフェリエイトの小銭が振り込まれる銀行口座などは本名だ。ファンたちは細切れの情報を共有しながら、彼女を特定した。


 ──彼女が自らのミスを知った時にはもう遅く、殺されていた。しかし、その死は誰も気にとめることも無く、犯人も捕まることは無かった。彼女の垂れ流した軽薄なアフェリエイトコンテンツと同じく、彼女の魂そのものも安っぽく、適当な存在になってしまっていたのだ。

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