第一章
少年と黒き闇の竜
真夜中。
闇が全てを包み込むとき。
少年は一人、街を彷徨い歩いていた。
行く当てもなく、ただ気の向くままに。
昨日彼が殺した男は、魔女と呼ばれた彼女に剣を真っ先に投げた男だった。
「次は、誰を殺そうかな……」
少年は小さくそう呟く。
彼女に剣を投げた者たちの顔を思い浮かべる。彼らの顔は一人残らず、少年の頭の中にあった。
絶対に忘れない――忘れられない。
――ふと、少年は立ち止まる。
違和感を感じたのだ。
(ここは、何処だ……?)
そこは、ついさっきまで少年がいた場所とは明らかに違う。
空を見上げてみれば、そこには血の色に染まった月が光っていた。
そして次の瞬間、その月さえ姿を消す――――。
一瞬にして辺りは闇一色となった。
浮遊感さえ覚え始め、自分がちゃんと立っているのかさえもはっきりしない今、当然上下左右がわかるはずもなく、ただ立ち竦むことしかできない。
少年は息を止める。
……気配を感じたのだ。
――酷く恐ろしい“死”の気配を。
「誰」
少年は冷静を保ちつつ、そう言って周りを見渡す。
『ほう……俺の気配を察するか。面白いな、貴様』
直接頭に響き渡るようにして聞こえる、地響きのような声。
その声には威厳があり、こちらが息をするのさえ
やがて闇の中に浮かぶようにして相手が姿を露わにする。
声の主――
それは――
――――
「なん、で……」
その
しかしその眼は金色に光り、真っ直ぐに少年を見据えている。
『意味がわからない、という顔をしているな』
「そりゃ、ね……。不思議でしょうがないよ。僕には
少年がそう言うと、
『貴様は馬鹿だな』
「……何が言いたいわけ?」
眉間に皺を寄せ少年は
『この世界に生まれたのにも関わらず、
「だから何」
『この世界には、生まれたと同時に
「…………」
『――契約をしてないんだよ、まだな』
少年は思わず固まった。
目の前の
“まだ”契約をしていない――……
それはまるで――――。
「……契約する相手がいるみたいじゃないか」
少年の呟いた言葉に
「じゃあ聞くけど、その相手ってのは誰なの」
すると
少年にとって、予想だにしない答えだ。
『すぐ近くにいるだろう?』
「は……?」
『俺様、邪神こと【
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