残酷な審判
処刑台に立たされ十字架に繋がれた彼女を、僕は姿を黒いローブで隠しながら見つめた。
光り輝くブロンドの髪は短く切られ、やつれてしまった彼女。
その持前の陽の光に透き通るように綺麗な髪を風に靡かせる彼女が、ふと空を見上げ、何かを呟く。
僕には遠すぎて、何を言ったのかはわからなかった。
ただ一つわかったのは、その眼にはもうすでに光はなかったということ。
『罪なる彼女に審判を』
そんな言葉によって炎が放たれた。
五つの属性が一つになった、“聖なる炎”――……
その炎は神の炎。
もし燃えることなく生き永らえることができれば、その者は無罪。
つまり“闇”ではないということ。
出来なければ――
――ただ燃やし尽くされ、死ぬだけだ。
炎が彼女を包み込み始める。
抵抗一つしない彼女は何を思っているのだろうか……。
ふとそんなことを思った――
――その時。
「あいつ、何か呟いてたぞ!!」
そんな声が響いた。
「呪いだ……!!」
「やだ、死にたくない――っ」
「助けて――!!」
民衆が混乱し始め、悲鳴をあげながら逃げ惑う。
しかし。
「うわぁぁああああああ――!!!」
叫び声とともに、一人の男が剣を投げた。
それは真っ直ぐに彼女へと向かい――
――その体を貫く。
それをきっかけに何本もの剣が、彼女へと投げられた。
彼女を滅多刺しにした。
彼女の体から血が滲み出し、その白い肌を赤く染める。
思わず僕は彼女に駆け寄ろうとするが、騎士たちにそれは止められた。
その手を必死に引き剥がそうとしながら、僕は彼女の名を呼ぶ。
すると彼女は吐血しながらも、僕をその優しげな、宝石のように綺麗な薄桃色の瞳に映した。
一瞬だけその眼に光を宿らせ、優しい笑みを浮かべる。
そして――
『――ごめんね』
そう、呟いた――。
瞬間、炎が突如として勢いをあげ彼女の姿は見えなくなる。
僕は必死に彼女の名を呼んだ。
彼女に触れようとする僕を、さっきよりも多くの騎士たちが再び止める。
それでも、必死に手を伸ばした。
でも。
無理だった。
炎が消え露わになった十字架には――
――彼女の姿はなかった。
残されたのは、彼女がいつも欠かさずつけていた首飾り。
僕が渡した首飾りだ。
それを握りしめ、僕は泣き叫ぶ。
人々は無情にも、その顔に笑みを浮かべながら去って行った。
「よかった」
そう口にして。
――彼女は殺されたんだ。
この世界の人々に。
この世界の、神々に――――。
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